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プロローグ

こっそりと第三部開始です。

いつものごとく拙い文章ですがよろしくお願いいたします。


#2015/11/12 年数の調整をしました。


--プロローグ


「ふぅ。今日も一日お疲れさん…っと」


 ブラックと言われる会社での仕事が終わり、馴染みの牛丼屋で夕食を買って家に帰る。

 無駄に広い2LDKのマンションで一人テーブルに座りパソコンに電源を入れると、買ってきた牛丼とビールを煽る。


「さて、今日も探しますか」


 ここ数年の日課。

 異世界行きのチケット配布サイト探し。


 何を言ってるんだこいつは。と頭がおかしい人と思われるかもしれない。

 でもな。

 俺は一度行ってきたんだよ。異世界に。


 ブラックだった仕事を喧嘩でやめていろいろあった結果、3ヶ月は遊んで暮らせるくらいの金を手に入れた俺はPCに張り付いてオンラインゲームやインターネットにはまることで、ダメになりかけていた心と身体を休めていた。

 そんな中、たまたま、ほんとにたまたまに見つけたサイト。それが異世界行きのチケットの登録サイトだった。

 酔った勢いで登録して次の日には玄関に届いていた封筒。

 その中には銀色のプレートの形状をしたチケットが入っていた。

 そのチケットに名前を書いて血印をつけ、転移(トリップ)と唱えることで異世界にいけるというもの。


 そう、俺はそれを使って異世界に行っていた。


 最初は気分転換のつもりだった。

 期限を五年にし、ダラダラと異世界を観光しようと思った。


 そこで出会った仲間、友人。そして見つけてしまった俺の居場所。


 冒険者となり、世界中を歩き、今まで見たこともないような風景を探した。

 魔物や魔獣、果てはドラゴンと言われるものまでに挑んでみたりもした。

 迷宮に潜ったり遺跡の発掘をしたりもしたな。


 こっちの世界で仕事をすることしかしていない死んだ俺とは違う、生き生きと出来た向こうの世界。

 できることなら、もう一度あの世界に行きたい。

 現実逃避と罵られようと、向こうの世界で俺は生きたい。


「今日も…ダメかね」


 夕飯も食べ終わり、ビールも三本目が飲み終わったあたりで、時間を見るとすでに3時近くなっている。

 二枚目のモニターで全画面表示しながら流している動画サイトの音楽はすでに何曲もが終わり、次々と違う曲を鳴らしている。


「なんで俺は前回のあれをブックマークしておかなかったんだ。どうやってたどり着いたのかも覚えてないとかもうな…」


 前回異世界から戻ってきてからもう五年になる。

 さすがにそろそろ潮時かな。

 画面から目を離し、背もたれに身体を預け、指で疲れ目を揉み解す。


 あの時は二十歳。二十五歳まで向こうにいて、そして今は三十歳。

 向こうにいけてもこれ以上の年齢だと何も出来ずに終わりそうだ。


 日ごろから筋トレは欠かさないようにしているためか、引き締まった身体はまだ動く。

 向こうでの感覚を忘れないように木刀を二本使った二刀流の型や素振りも忘れない。

 実戦的な道場にも二年ほど通った。


 だからもう少し。

 だけど、肉体的なリミットとしてもう今が最後のチャンス。

 これから俺の身体は衰え始めるだろう。

 こんな風に夢を追いかけるのももう終わりにしなきゃならないな。


 動画サイトの音楽は今まで流れていたロック調の曲から、民族音楽のようなものに変わっている。

 ケルト民謡か。こういう音楽いいよな。

 曲のタイトルは『冒険に出たくなる音楽集』らしい。

 まさに今の俺の気持ちを見透かされているようだ。


 椅子に身体を預け、目を閉じたまま、その曲にしばらくの間聞きほれる。

 頭の中では曲調にあわせた向こうでの場面を思い出し、懐かしむ。


 動画が終わり、自動再生リストに入ってた曲がなくなり部屋に静寂が訪れる。


「そろそろPC落として少し寝ておくか……」


 パソコンの電源を落とそうと画面に目をやると、ブラウザの中にさっきまで開いていたページと違うものが表示されていた。


「まてまて。落ち着け。願望が見せた夢じゃないよな?これ」


 一気に酔いが醒め、頭がフル回転を始める。

 ページは前回の記憶に残っているものとは少々デザインが違うが、何回見直しても『異世界行きチケット登録サイト』だった。

 通常アドレスが入っている所は空白。下手にリロードなんかしたら消えてしまうかもしれない。


 注意深く、サイトの中をスクロールしてみる。

 名前、年齢、性別といった、前回と同じ内容を書くフォームと、申請する。といったボタン。そしてその下にはこのサイトの説明文などが書かれている規約部分があるサイト。


「これは夢でもやるべきだろうな、きっと」


 入力事項を慎重に入力し、最後の申請ボタンを押す。


 前回はここで画面が切り替わり、検索サイトのトップページになったはず。

 だが今回は違った。


 再度入力画面に戻り、画面には赤字でメッセージが表示されている。


『入力事項に記入漏れがあります。再度入力画面をご確認ください』


 おかしいな。

 名前、年齢、性別はちゃんと入ってる。

 …他にもなにかあるのか?


 マウスのホイールを動かし規約部分を流し見する。

 すると最後に入力項目ではないが、チェックボックスで項目を選ぶ箇所があった。

 そこには、三つの選択肢。


―――――


○NewGame

○続きをする


―――――


 ……は?


 ニューゲームってことは転移じゃなくて転生じゃないのか?

 選択肢としては前回の続き一択なんだけどな。


 無難に続き…だな。

 せめてあと5年若返ればいいんだけど。


 チェックをつけた後に、もう一度慎重に内容を確認し、申請ボタンを押す。

 画面が切り替わり真っ白のページになった。

 ここは前回と一緒だな。


「これで明日にはチケットが……届くはず。」


 届いたらやることがいっぱいあるな。


「まずは会社に辞表を出すだろ。また大喧嘩してやめてくるのもいいな。後はマンションも売りに出さないとな。即日売却は難しいか。金は持っていってもしょうがないから親に半分渡すとして、残りは孤児院にでも寄付するとして。」


 もうこちらに戻ってくるつもりはない。

 だからこっちでのものは全部手放す。

 未練のないように。


 むしろ今現在向こうに未練があるのにこっちに未練なぞあるものか。





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