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秋華楼  作者: 空色あい
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三話 禿と狐

私は秋桜楼の裏口から番頭さんに見付からないようにこっそりと自分の部屋へと戻ってきていた。私の部屋は胡蝶姉さんが過ごしている最上階の一室の片隅にある倉庫だ。胡蝶姉さんは普通に部屋で過ごせばいいのにと頬を膨らませて怒っていたが胡蝶姉さんの部屋は広すぎ落ちつかないのだ、それに私の部屋となっている倉庫もハッキリ言ってそれなりに広く窓も有る実は私の現実世界の自室と広さが変わらないだから逆に過ごしやすく落ち着く。

自室に戻り、胡蝶姉さんが用意してくれた華やかな着物に手を通し、つけ毛を髪の毛に付けて、胡蝶姉さんに教えてもらったように結いあげていく、彼女にやってもらうほど綺麗にはできないが不器用な上に長年ショートヘアーで過ごしてきた私が髪の毛をここまでまとめられるようになっただけでも嬉しいのだが、現実世界へ戻る為の情報収集はいつも通り収穫はなかった。


・・・・・はぁ・・・・困った・・・


ため息を吐きながら自分の顔に化粧を施しいると、部屋の窓から聞こえてくる鐘の音、回数は4回。

胡蝶姉さんの準備のお手伝いをする時間だ、気慣れない着物の裾を払い立ち上がる。

さて今日はどんなお客さんが居らっしゃるのか、あの美しい妖怪東様は来るのかな、あの研ぎ澄まされたガラス細工の様に美しい顔をもう一度くらいは見たいが晩酌するのはかなりの体力を使うから、遠くから眺めて居たい感じだ、そんなことを考えながら胡蝶姉さんの準備に必要なものを集めていく。






胡蝶姉さんの準備が整った頃にはもう外はうす暗くなりポッポッと灯篭に黄土色の光がともっていく。


「できましたよ 胡蝶姉さん」


私が声を掛ける胡蝶姉さんは頷くと同時に鐘は再び鳴り響いた。

回数は6回


「さて、弥代 この時間からはあんたは月華だね」


いつも通り豪快に微笑んでいた胡蝶姉さんは胡蝶花魁となり清楚に可憐に微笑む

この変わり身には少し驚きもするがメリハリがあってこちらとしては仕事モードに入りやすい。

私も口をしっかりと閉じ頷く。


「胡蝶に月華 数日ぶりだな」


胡蝶姉さんの部屋に入ってきた人物に私は驚きを隠せなかった。

そこに居るのはもう一度くらいは顔を見たいと思っていた東様だった


いやいやいや こんなに速く再開!??


心の中で突っ込みを入れる、相変わらず作り物の様な綺麗な顔をしている

そんな事を思いながらそそくさと御酌の準備を始める


「東様 先日居らっしゃったばっかりなのに また来て頂けるなんてどういった風の吹きまわしですか いつもなら一度くると1月ほど居らっしゃらないのに」


胡蝶姉さんもびっくりしているらしい


「月華のクルクルと変わる表情が見たいと思ったのだ」


御酌をしようと隣に腰を下ろしたとたん言われた言葉に私はポカンとする


彼の中で私は珍獣か何かなのか!??


「大きな口をあけて 本当に面白いな 月華は秋華楼には珍しい女だな」


物珍しそうにこちらを見つめてくる彼に私は目を泳がしていた


「まぁまぁ 東様は相当月華をお気に召されたようですね」


胡蝶姉さんが口元を隠しながらくすりと笑う。


「ふふふ もしかしたら月華の初めてのお客さんになるかしら」

「それは良いな 月華 私をお前の客にしてくれないか」


顔を近づけて、頬笑みを向けてくる東様に私は全力で顔を横に振った


こんな美系の相手とかしてたら私死ぬから!!


「東様 月華に嫌われたようですよ」


胡蝶姉さんがまたクスクスと笑いながら答えると東様も面白そうに笑う


「私を嫌うか 面白い禿も居たものだ そう言われてしまうとどうにかして月華の客にしてもらいたくなるな」






胡蝶姉さんの宴も終わり東様を秋華楼の外へと送り出しに来ていた。

私は深く頭を下げニコリと微笑む

言葉を使えない今は笑顔で乗り切るしかないと胡蝶姉さんが教えてくれたので全力で微笑んでおいた。


「月華 良い笑顔だが お前の本当の笑顔を私は見てみたい」


東様が私の顔を覗き込む。

突然目の前に近づく美しすぎる顔に私は驚きのあまりズサリと飛びのいた。


近い!!近いから!!!!


心の中で大きな声で叫んでいると彼の表情が固まった。


しっしまった・・・・まさか嫌な思いさせた!??上客にヘマした!?!??

番頭さんに殺される!??


心の中で葛藤を繰り広げていると、彼の肩が少しだけ揺れている。


何かあった!??えっ!??病気!??


頭の中でまたいろいろ考えているが次の瞬間、彼が口元を覆いクスクスと笑う


「逃げられるとは思いもしなかったぞ 月華」


どうやら彼のつぼにはまったらしい、妖怪さんのつぼって変!?


そんなことを思いながら彼をまじまじと見つめていると彼が私の頬にそっと手を添える。


「やはり 月華の客になりたいものだ そうすれば 月華が一晩中相手をしてくれるのだろう」


突然の行動に彼から再び飛びのき後退してブンブンと顔を振った

そんな私にジリジリと寄ったかと思うと髪をひと房とると口づけを落とす。


「逃げられるほどに手に入れたくなるものだな 月華」


彼が妖艶に微笑む。

その姿に私は全力で固まっていた、生まれて25年まさかこんな美系のお兄さんというか妖怪に口説かれる日がくるとは思いもしなかったわけで、私は再び固まっていると彼が頬を指でそっと触れたかと思うと再び頬笑み「また来る 月華」と耳元で囁き秋華楼がら出て行った。


私がそれから数分固まっていたの言うまでもない

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