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校長勇者  作者: 一条由吏
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第8話 元恋人と愛人

お読み頂きましてありがとうございます。

 王都まで戻ってきたのだが、生徒たちとアーティスの険悪な雰囲気は、そのままの状態だった。


 冒険者ギルドで『箱』から出した敵の装備品を一式10万G、合計1200万Gで買い取って貰った。アーティスの見立て通り、鎧の十字の部分にミスリルが、剣の柄にオリハルコンが使われているというのだ。


「では、60万Gと420万Gだ。」


 大島も私も60セット装備品を集めたのだが、大島は近衛騎士見習いとしてアーティスに同行したため1割、私は冒険者扱いだったため、3割税金を引かれて7割を取り分とした。


「ケチですよ。」


「ケチですね。」


 これが、この国の規定なのだそうだが杓子定規に適用したため、生徒たちのアーティスの印象がさらに悪くなってしまったのだ。


「180万G渡しておくぞ。」


 私も特にアーティスを庇うわけでは、無かったが同じように苦労してこれだけ違いが出るのは、教育上よろしくないため、無理矢理、大島に押し付けた。


「でも・・・。いいんですか?」


「半分ずつじゃ少ないだろうが、お互いツェンランさまの国で入用になるかもしれんからな。」


 私はツェンランさまから側仕えとして、少なくない給与も頂けることになっているし、住居も城の一部に住まわせてもらえるから、全て渡しても問題無いのだが、それで逆にヤル気が無くなっても困るので半分ずつだ。


「では、遠慮なく頂いておきます。」


 彼女たち3人の中で、唯一、お金を稼ぐことのできている大島は、他の2人に小遣いを渡しているようだったから、臨時収入が嬉しいそうだ。


「もう、いっそのこと皆でツェンランさまの国に永住しましょうよ。」


「それもいいかもね。良子さんもいかが?」


 宿での出来事で彼女たちがもう校長先生とは、呼べないと言い出したため、名前呼びにすることになったらしい。しかも、大島が私の捨てた名前を知っていたのだ。


 まあ、もう彼女たちも私から巣立ったのだから、いつまでも校長先生と呼ばれるのもおかしいかもしれない。元の世界であんなに嫌だった名前だが、不思議と苦痛でもなんでもない。


 きっと、良子も良男も単なる記号でしかないのだろうし、使うのが彼女たち生徒だというのも大きいのかもしれない。


「そもそも、君たちは、この異世界で一生を過ごすつもりなのか?」


 私の『知識』によるとこの世界で召喚の間と呼ばれるところは、数多くありそのどこも、なぜか日本と繋がっていることが解かっている。


 しかし、繋がっている先の日本が自分たちが生きていた日本と同じと限らないようでパラレル世界である可能性や時代も微妙に違っているらしいのだ。


 だから、何がなんでもこの国の召喚の間を修復する必要があるのだ。それには、特殊な鉱石が必要で最高峰の魔道具職人が数年の歳月を掛けて魔法陣を描く必要がある。


 魔法陣の図案も送還魔法の呪文も私の『知識』にあるのだが、肝心の魔道具職人がこの大陸に存在しないため、アーティスが手配してくれている最中なのだ。


 この国から離れるということは、日本に戻るのを諦めるということになってしまうのだ。アーティスが私を元の世界に帰してくれると思えない。彼女たちが居なくなれば、召喚の間の修復も行わないに違いないのだ。


「私は、お姉さまとだったら何処でも生きていけますよ。」


 まあ、夏目は、そう言うと思ったよ。


「私は、半生をこの世界で過ごして、その後執筆できる場さえあればどこでもいいですね。」


 遠山にとっては、かなり魅力的な世界なんだな、ここは。


「私は、良子さんをここに置いとけないわ。」


「それは、どういう意味だ?」


「情が深すぎるんです。もし、私たちが帰ったら、情に流されてアーティスさんと関係を持ってしまうわ。」


「そんなことは・・・。」


「ないと言えますか?それで良子さんが幸せならいいんですけど、アイデンティティの崩壊になりかねませんわ。」


 鋭いなこの子。すでにプラトニックな関係なら、受け入れかけているが肉体関係となると・・・。それでもし、幸せを感じてしまったら自分が自分であることができるか・・・。


 ツェンランさまとの関係のように割切った関係なら、なんとでもできるつもりだが、そこに情愛があるとなると・・・。


・・・・・・・


「行ってしまうというのか?」


「このままでは、そうなるね。」


 私が女性だと知れると執事によるドレス攻勢が苛烈を極めていたのだ。裏には、アーティスの思惑も透けてみえる。


「私を男扱いできないのなら、逃げ出すしかないだろう。別にアーティスが私にセナ姫を重ねてみるのは、かまわない。しかし私は、マルチという別の人間なんだ。決して、貴様のモノにはならない。諦めろ。」


「そんなことで、諦められるなら800年も固執したりしないさ。」


「ならば、好きにするがいいさ。私は、行く。」


・・・・・・・


「そうか。いずれそうなるとは、思っていたが意外と早かったな。」


 ツェンランさまに、事の次第を報告するとそう返って来た。


「それでですが・・・。」


「わかっておる。彼女たちの住まいだな。末席となるため北端だ。もちろん、講師陣も揃えておるぞ。お主は、自分の仕事を全うするがよい。」


「なにから、なにまでありがとうございます。」


「ただ、人間の魔術師の講師については、今、当たっている最中だから、少し待たせることになろう。」


「それは、しかたがないですね。」


 この城には、人族は数少ないのだ。魔性は、もちろんのこと妖精族などの人外が多い。そのため、人族の魔術に精通していないらしい。しかも、アーティスくらいのレベルの魔術師がそうやたら居ないのだ。


・・・・・・・


「さあ、バコバコやろう!」


 その夜、ツェンランさまの寝室に呼ばれた。


「えっと・・・もう繁殖期なのですか?。」


 この展開は、考えていなかった。


「繁殖期になってから、イキナリするのか?それは、無謀だろう。俺を壊そうと言うのか?」


 王が壊れる?壊れるのは、こちらのほうだろう。


「そうそう。これを用意したがこれで問題ないかの?」


 そこに出てきたのは、ペ○スバンドだった。


「えっ、私に男役をやらさせて頂けるんですか?」


「そなた、身体は女性だが心は男なのだろう。私は、半陰陽なのだ。両性具有と言ったほうがわかりやすいかの。」


本年はお世話になりました。来年はもっとお世話になりますのでよろしくお願いします。

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