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校長勇者  作者: 一条由吏
8/12

第7話 寄り道

お読み頂きましてありがとうございます。

 ツェンランさまは、それだけを言うと消えてしまった。


「なあ、この装備を持って帰ってくれないか?」


 アーティスは、現金なんもので、昨日は国の威信がとか、言っていたのに、ケロっとした顔で国家予算規模のこの装備を持って帰ってほしいという。


 まあ、このあたりの山賊が手にしたら、厄介なのだろう。


「大島、頑張ってくれ。こいつらは、死んでいるから、触れるだけで『箱』に入るからな。遠山と夏目に手伝ってもらえれば、早いのだけど・・・。」


 大島は、そのすざまじい死体を前に吐きそうになりながらも、必死で堪えて『箱』に入れている。


「真紀子にこんなことをやらせるなんて・・・。」


「遠山はどうだ?」


「無理でしょう。きっと、気絶してしまうわ。」


 おそらく、遠山は、そうだろうが、夏目は、大島にお願いされたら、嬉々としてやりそうなんだがな。


「仕方が無いか。」


 1時間ほど作業したら、ようやくすべての死体が片付いた。


・・・・・・・


「もう嫌。先生。この辺に温泉とかないの?あんなにいっぱい血に触ったから、いつまでも、頭の中にこびり付いて離れないわ。」


 珍しく大島が弱音を吐いている。身体は、洗浄魔法で洗い流したが、心のほうは、そうは行かなかったらしい。


「ここから、西に1KMほど行ったところにあるな。アーティス、この辺りは友好国なのか?」


「ああ、大丈夫だ。では、行こうか。」


 アーティスは、あっさりとそちらに向かうことを了承してくれた。


・・・・・・・


 辺鄙な村だったが、そこは温泉がある村ということで宿だけは、立派だった。もちろん、すべて、アーティス持ちであるが、嬉々として宿を取っているところを見ると、頭の中であの装備の金勘定が弾き出されているのだろう。


 宿に馬車を横付けし、荷物を部屋に置きに行くと休みもせずに温泉に行きたいという。彼女たち3人だけでなく、アーティスもなのだ。少し疲れたから、後で行くというとがっかりしていたが、しかたがないだろう。


 部屋風呂もないのだ。まさか、男風呂に入るわけにもいかない。彼女たち3人が出たのを見計らって入るしかないのだ。


 しばらく、部屋でゆっくりしているとほんの15分くらいで、アーティスが戻って来た。まるでカラスの行水だ。だが、暖まりはしたのだろう。床に寝転がるとそのまま、10分もしないうちに寝てしまった。


 それから、さらに30分ほどして私は、風呂に向かった。途中、みやげ物屋に彼女たち3人の姿を確認して、安心し、階下の女風呂に下りていく。服を脱ぎ、手ぬぐいを持ち、風呂場に入っていくとそこには、誰もいなかった。そのことに安心する。


 女に見えても、心は男なのだ。そこに女性の裸があれば、ジロジロみてしまうだろうし、相手もそれが嫌だろうと思うのだ。


 さっさと身体を洗い、お風呂に浸かると天国だった。確かに温泉は、心も洗われる。ふと、外を見ると露天風呂があることに気づき、行ってみることにした。


 そこは、大きな岩に囲まれた空間で上には、空があるばかりでさらに心が洗われるようだ。


 内風呂のほうを見ながら、うつらうつらしていると・・・。


「きゃー!」


 そこには、なぜか、夏目と遠山の姿があった。思わず立ち上がり、生まれたままの姿で彼女たちに駆け寄る。


「どうした。」


 さらに後ろから、大島の姿も・・・。


「校長先生っ。お・ん・・な・・・っ。」


 おいおい、遠山、だんだん、語彙が怪しくなっていくなぁ。本当に小説書いていたのか?


「センセイ!先生って女だったの?」


 遠山と夏目が騒いでいるのを尻目に、冷静に大島が近づいてくると大島の手が股間に伸びてきた。


「本当のことでしたの。あれは。私の願望じゃなかったんだわ。」


 私が男の戸籍を取ったことは、結構有名だったから、もしかしてとは、思っていたが大島は、半信半疑ながら聞いていたらしい。しかし、願望?


「お姉さまっ!」


「すまないがこの手を外してくれないか?いや、弄るなというに・・・。」


 彼女が手を動かし出したので慌てて、少し強引に引き剥がした。


 どうやら、私にとって、彼女も危険人物の1人のようだ。


 そこへ、さらに悲鳴が沸き起こる。空中に1人の男が裸で浮いているのだ。


「なにがあった!ああっ・・・。」


「アーティスっ!!」


・・・・・・・


 アーティスが土下座をしている。それも、室内ではなくて部屋の入り口付近の地べたでだ。


 とりあえず、アーティスは、あそこに朝まで放っておくことになり、私は・・・。


「黙っててすまない。」


「先生は、おな○なの?」


 夏目が聞きにくいことをズバリと言ってくる。


「せめて性同一性障害といってくれないか?」


 実は、この言葉も嫌いなのであるが、世間的には、まだ理解されるほうなので使っている。人を勝手に障害者にするなと言いたいのだが・・・。


「へえ、言ってくれればよかったのに。」


 遠山には、絶対に言いたく無い。取材名目で絶対根掘り葉掘り聞かれた上で、ネタにしたに違いない。校長の私のところには、そう言った苦情を寄せられたこともあるのである。


「大島は、知っていたのか?」


「又聞きだったのであまり信じておりませんでしたわ。PTAで問題になっていたといったものでしたもの。」


 まあ、PTAというものは、そういうものだから仕方が無い。実際にPTAの会長が学校を辞めてくれというようなことを言ってきたこともある。即座に訴えると言ったら、やめてくれと懇願されたが・・・。


「先生は、そのようでしたのに、なぜプティ制度にメスを入れようとされましたの?」


「純粋に騒ぎの大元になっている場合が多かったからだな。それに私とは、違うだろう?」


「まあ、そういう人間もいますけど、大部分が女性が女性として女性を愛しておりますわ。」


「そうだろう。私は、男性として女性を愛したいのだ。もう叶わない願いなのだがな。」


「どうしてですの。心が男性な先生が私を愛してくださる。それでいいでは、ございませんか。肉体関係など二の次いいのでは。」


「言ってもわからないだろうな。まあ、言っている自分でもわからなくなるときが時々あるのだからな。しかたがないが。」


「これから、どうしますの?」


 私は、土下座しているアーティスに近寄り、聞いてみた。


「私は、どうすればいいかな。アーティスは、私を理解できないだろう?」


 こういったことに対して偏見の少ない日本でさえ、よくわからない存在なのだ。こちらの世界では、全く理解できないに違いない。


「それは、どういう・・・。」


「じゃあ、単刀直入に言うよ。アーティスは、私とセックスしたいだろう?」


「ああ。」


「だけど、私が男だったとしたら、アーティスが女役をやれた?」


「無理だな。」


「私は、肉体は女だけど、アーティスに女役をやってほしいのだ。」


「どういうことだ?」


「うーん、やっぱり、理解できないみたいだな。」


「先生は、卑怯よ。あの魔性とは、するのでしょう?」


「えっ。」


「あの男が現れたときに言っていたじゃない。」


 そういえば・・・。あんな、短い会話で解かるのか。


「そうだな。卑怯だな。たとえ、数十年に1回といえど、我慢すれば出来るのだからな。」


 前世の恋人であるアーティスに対しても、大切な生徒に対しても、その我慢ができないと言っているのと同じなのか。


「どうすれば、いいんだろうな。」


「結論は、出ているわ。あの魔性の城で。」


「そうか、お前たちが死ぬまで一緒だったな。アーティスは、頑張れ。私がアーティスに抱かれてもいいと思うまで・・・。まあ、今、信用度は、マイナスだがな。」


 なにせ女風呂を覗くという、世の中で一番してはいけない行為をしたのだから。

あんなにカッコよかったアーティスの信用が地に落ちました。もうこれからは、上げていくだけです。がんばれ、アーティス。


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