第6話 前世の因縁
お読み頂きましてありがとうございます。
これで全ての設定が出揃った・・・多分ね。
「そ、その首輪は・・・。」
私が謁見の間から皆が待機しているところへ戻されると目ざとく首輪を見つけたアーティスの指がブルブルと震えている。
「似合うか?」
首輪は、日本でもファッションとして定着している。そしてこの首輪は、高級感あふれる黒革で出来ておりファッションセンスとしては、かなりいい部類なのだ。
「先生似合うよ。どうしたのそれ?」
「ああ、隷属の首輪と言って、主従関係を安易に結べるグッズなのだ。主に対しては、一切の力を振るえないらしい。私は、ツェンランさまと主従関係を結んだのだ。」
「ええっ、私もほしいよ。」
夏目、君ならそう言うと思ったよ。
「真紀子、私たちには、そんな道具なんていらないわ。」
「そ、そうよ。いらないわよ。」
「なんだ。なんか言いたそうだな。遠山。」
その無言で目をキラキラさせて、見つめるのは、やめてくれないだろうか。どんなことを想像しているかは、容易に想像はつくが・・・。
「どっちが、う「わーーー」」
お前は、なんてことを言おうとしたのだ。それは、禁句だぞ。
「お前に聞いた。私が悪かった。勘弁してくれ。」
「それで、何を震えてるんだい。アーティス。」
「もういいっ。」
アーティスは、肩をガックリとさせてそう言った。あまりのドタバタコメディーに疲れたと言った感じかな。うまく、追及を逃れられてラッキーだ。
・・・・・・・
城に滞在するように勧められたが、アーティスが嫌だと言いはったので、城下の宿に一泊して、ゆっくりと見物してから帰ることになった。
門番の紹介してくれた宿は、なかなかの高級宿らしく夕食朝食付きで1泊200Gするらしい。アーティスは、王ということでさらにランクが上の部屋を確保したので本当は、どれくらいするのかは、知らない。
交渉は、アーティスに任せていたのだが酷く時間が掛かっているようだったので、傍に行ってみた。
「やはりっ!新しく王の側仕えになられた方ですね。これは、御代を頂戴するわけには、行きませぬ。こんな名誉なことは、ないですから。当店の最高級の部屋を用意させて頂きます。」
どうやら、この黒革の首輪が目印になっているらしい。私が側仕えになったことで支払う支払わないで押し問答になっていたのだ。
「アーティス、ここは、引いてやりなさい。こちらの我を押し通せば、この店の信用問題に発展し兼ねないようですよ。」
「ですが、このままでは、我が国の威信が・・・。」
「くだらないな。いつのまに、そんな人間に成り下がったのですか、アーティス。私に、そんなに軽蔑されたいのですか。それなら、止めません。存分にやればいいでしょう。」
「そ、それは。」
「私が、ここを利用するだけで、彼らには彼らなりの利があるのでしょう。それでいいじゃないですか。」
「ありがとうございます。では、ご案内いたします。」
即座に店主が反応して、話を進める。よい商売人だ。
アーティスは、不承不精頷いてくれたようだ。王になるのも、大変だ。
謁見では、いろいろと暴かれたせいで酷く疲れたが、生徒たちだけでは、まだ、こころもとないので城下見物の際には、私が付いていくと言うと、やはりといおうか、アーティスも付いてくるという。
「疲れただろう。アーティスは、宿で大人しくしていてくれないか?彼女たちを守りながら、王の護衛をするのは、非常にめんどう・・・なん・・・。わかった。わかった、そんな顔をするな。好きにすればいい。」
おもいきり情け無い顔をし出したので、私は、諦めて許可を出した。まあ、アーティスも強いのだから、自分の身くらいは、自分で守ってもらおう。
おみやげも一杯買い。美味しいものを食べ、ゆっくりと寝た。翌朝、皆、すっきりした顔をしているようだ。
・・・・・・・
城下を出て、荒野を少し行ったところで、そいつらが出てきた。
馬車の前方と後方を、揃いの十字架のマークの鎧を着た兵士たちに固められてしまったのだ。
「なにものだ!」
戦力にならない夏目と遠山は、馬車の中にいてもらう。本当は、大島も中に居てほしかったのだが、近衛騎士であるということで、飛び出していってしまっている。
「女には、用はない。そこのセナ姫に用があるのだ。」
「何を。」
私は、いきり立つ大島を押し留め、その男に対面した。
「私が、セナことマルチだ。いったい、なんの用だ。」
その男が、私の前で跪く。
「姫、お迎えに上がりました。白銀の王がお待ちです。」
白銀の王・・・この大陸とは、別のセナ姫が居た大陸に君臨している支配者で、神の末裔と言われるほど強大な力と永遠の命をもっていると言われている・・・。
セナ姫が居た国と戦争をした以外は、無血で支配したツワモノらしい。
そこで、セナの記憶が呼び覚まされる。そもそもの戦争の原因は、この白銀の王がセナを所望したことが発端でそれを拒否した父王が周囲の友好国を巻き込んで戦争をして、最終的に私の死により、終戦となったらしい。
その白銀の王が、また使いを寄越したということらしい。このままでは、また、戦渦に巻き込んでしまう。こんどこそ、素直に付いていくしかないのか?
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。絶対に嫌だ。私1人で逃げ切ればいいのだ。
「その王に伝えてくれよ。私は、男だと。」
「王は、そんなことは、どちらでも構わないと仰られております。」
そっちが構わなくても、コッチが構うわっ。
「私は、男に押し倒されたくはないんだ。変態の餌食になるつもりは、無い。帰ってそう伝えろ。」
「酷いな。俺にも、そう思っていたんだ。そんなセリフを聞きたくはなかったよ。」
「ツェンランさま!」
突然、目の前に魔性の王が現れたのだ。そういえば、この街道は、直轄地だと言っていたことを思い出した。まだ、結界の中なのだろう。
「俺の国で俺のモノに手を出そうなんざ。随分と勇気がある行為をしてくれるではないか。褒めてつかわそう。」
「くっ。なにを言う、この外道が!魔性が怖くて、神の使者をしていられるものか。」
ぎゃあぁぁぁ・・・。
周囲の兵士たちが喋っている男を残して一瞬にして、崩れ去った。なにかの力に押しつぶされたかのような状態だ。
「俺を怒らせて何が得なのかな。まあいい。死ね!」
その喋っていた男も一瞬にして燃え上がり、黒い炭に成り果てた。
「ツェンランさま、ありがとうございました。」
「まあ、きみなら、同じようなことを簡単にできるだろうが。暴走されても困るのでな。」
「くっ。」
なんの出番の無かったアーティスと大島が緊張感から開放されたからか。崩れ落ちた。
「そうだ。そうだ。言い忘れてたことが、あったんだ。その首輪をしていれば、結界内に『転移』しても大丈夫だから・・・。これだけ。じゃあ、5日後に用意をして待っているから、ちゃんと来てね。」
複雑怪奇な設定です。無事に白銀の王は、姫を攫うことができるのか、乞うご期待。・・・ん、なんかちがう?
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