第5話 過酷な役目
お読み頂きましてありがとうございます。
またまた、変な設定が・・・。
「セナ。さて、どうする?」
魔性の王が問いかけてくる。
「王よ。私には、それだけのことをして頂いても返す術がありません。」
「そんなに思い悩むこともあるまい。あの場では、とても言えなかったが、そなたには、つらい役目も与えねばならない。」
この最強の魔性の王が言えぬようなことがあると言うのか。
「役目ですか。」
「うむ。だが、秘匿中の秘匿であるため、強固な主従関係を結んでからでなくては、言えぬのだ。」
私にできることならば、して差し上げたいが、内容を聞かぬうちに承諾してもいい問題なのだろうか。
「それに、お主の持つ力のコントロールにも役に立てると思うぞ。」
「っ。」
思わず息を飲む。この異世界を破壊してしまうかもしれない私の力が知られている。
「やはりの。」
どうやら、カマを掛けられたらしい。
「お主の国からの力の波動は、俺の力でもギリギリ押さえられるだけの力だった。様子の伺っていたところ、力の元となった生き物の意識がなくなったタイミングでこちらから力をぶつけてみたところ、力が相殺されたようなのだ。」
うまく力が止まったのは、裏でこの王が対処してくれていたからだったらしい。意識を失うだけなら、あの女神が何かを言ってくれたに違いないのだ。
「ご迷惑をお掛けし申し訳ございません。」
「俺も小さいときにこの力で1つの森を消失してしまったことがある。そういった経験を積んできて始めてコントロールできるようになったのだ。俺の傍に居れば、うまく相殺できさえすれば、いずれ、コントロールできるようになるさ。」
「そうですね。もし、そうでなければ、私を滅して頂けるのでしょうか?」
「っ。」
次は、王が息を飲む番だった。この力を知ったうえで、傍に置きたいというのだ。なんらかの手段がなければ、この国の人々が犠牲になってしまうかも知れないのだ。
この心優しき王がそれで心を痛めないとは思えないのだ。
「そうだ。俺は、そなたを空間に閉じ込める術をもっておる。なにもない空間ただようというより苦痛を負わせることになってしまうが・・・。ちっ、参ったな。そこまで読まれておったのか。」
「ええ、弱いものに優しき王なれば、この国の人々を犠牲には、できないでしょう。わかりました、お受けします。」
「役目を聞かなくてもよいのか?かなり、過酷な役目を押し付けることになるのだが・・・。」
「ええ。」
私は、このときどんな過酷なことでも、耐えられると思っていたのだ。そのことを後で激しく後悔することになるとは、思わずに・・・。
「本当は、必要ないのだが、うちの宰相がうるさいので、しばらく付けてくれないか。」
そこには、首輪が出てきた。隷属の首輪と言われるもので、主には、一切の力を振るえなくなっている。何をされても、文句は言えない。いや、文句を言うくらいは、許されるのか。
私は、素直にその首輪を付ける。実は、『知識』の中に外す方法があることは、解かっている。まあ、使わないだろうが。
王は、呪文を唱えると首輪が一瞬輝く。これで終わりだ。
「これで主従関係は、結ばれたようですね。では、役目をお聞かせ頂けますでしょうか。王よ。」
「ツェンランと呼んでくれないか?」
「ツェンランさまですか、私は、マルチと。」
「さまは要らぬ。マルチ。」
「そういうわけには、いきませぬ。尊敬申し上げる方を呼び捨てなどと。」
「頑なだの。まあいい。そのうち、呼ばせてみせる。」
「ツェンランさま、それでお役目と言うのは・・・。」
「どうしても、今、聞きたいのか?もう少しあとでも、良いのではないか。」
そんなに言いづらいことなのだろうか。
「はい。」
だが、私は、はっきりと答える。
「そうか。本当は、始めから嫌われたくないがのう。じゃが、しかたがあるまい。」
そんな嫌われるような内容なのか。だが、もう自分の心は決っているのだ。
「魔性にはの。人間と違い繁殖期というものが存在するのだ。」
「それで、お役目は?」
そこまで聞いて、少し嫌な予感がする。
「繁殖期には、力が使えんのだ。だから、護衛と。」
力が使えない時期があると言うのか。それは、秘匿中の秘匿だ。もし、知られたら下克上される可能性さえある。
「護衛と?」
「いや、護衛を頼みたいのだ。」
「ツェンランさま、はっきり仰ってください!」
「あの・・その・・・繁殖期の相手をだな・・・そういうわけだ。」
なにがそういうわけだ。どいつもこいつも、このオッサンになんで、そんなことを言うのだろう。アーティスだけでも持て余しているのに。
「このオッサン相手で、ですか?」
「オッサンというなら、オバサンじゃないのか?」
オッサンも酷いが、オバサンはもっと酷い。まさか、気づかれているのか。
「気づかないと思っておったのか?その方、女性であろう。」
「・・・・・。」
そうなのだ。DNAでいうと間違いなく女性という分類に属する。これまでの人生の内、半生は、男という戸籍、立場を勝ち取る戦いであり、戦いに勝ち続けてきた。
アーティスにも、見破られているのか。
いや、そうではないだろう。
そうならば、もっと積極的にそう言った行為を仕掛けてきたはずだ。アーティスは、どちらでも構わないという割には、そういった行動に移してはいなかったのだ。
まあ、いずれバレると思ってきたのだが、なんせこれまで2週間に1回打ってきた男性ホルモンが投与できなくなってきている。声もわずかだが、高くなってきたようだし、徐々に身体が丸みを帯びるようになってきているのだ。
まあ、この世界では、どうでもいいような気がする。それよりも、私の倫理観上、このような少年と私の睦事など、犯罪と言っても過言ではないような気がする。たとえ、相手が1000歳を越える相手だと言っても。
「こんな、年増がいいのですか?」
「ああ、そうだ。一生、その年齢で居てくれるなんて、最高じゃないか。」
目の前の王のイメージがガラガラと崩れ落ちるのを呆然と見守っていた。まさか、この大陸の東を統べる王が年増好きだとは・・・。
そして、その王の相手である私が、このような身体の人間でいいのか?
もう、受けると言ってしまったのだ。
「まあ、繁殖期は数十年に1回だがな。」
数十年に1回の苦痛を我慢しさえすればいいのだ。なんとかなるだろう。いや、なんとかしてみせる。
主人公の隠された半生が・・・。まあ、頑なに着替えを手伝われるのを断っていたのは、こういうわけがあったのです。
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とりあえず、次話で当初考えたすべての設定が出切る予定です。




