第3話 王たちの欲望
お読み頂きましてありがとうございます。
若干短いですね。
「ほら、私は大丈夫ですわ。」
目の前に立っていたのは、大島だ。ドレスは、引き裂かれているものの、下着は無事なようだ。それを確認しても、地震はまだ止まらない。
「仕方が無いわ。真紀子ゴメン。」
大島が近づいてきたと思ったら、突然キスをされた。
「お姉さま!嫌っ。」
その後、当て身を喰らったようで、視界が暗転する。
・・・・・・・
目を覚ますとアーティスの屋敷の割り当てられた部屋のベッドに寝かされていた。
「セ、セナ!」
傍らには、アーティスの他、皆が勢揃いしているようだ。
「皆、大丈夫だったか?」
生徒たちの顔を見回して言う。
「ああ。」「そうね。」「むう。」
夏目、それはなんだ?
「まさか、私のライバルが校長先生だと思いませんでしたのよ。」
その瞬間に気絶する直前の光景を思い出す。
私が大島のほうに視線を向けると大島は、赤くなって視線を逸らす。そうなのか?もしかして、この3年間、ことあるごとに盾突いてきたのは、愛情の裏返し?
へえ、そうなんだ。なんか、こちらの世界に来た途端、酷くモテるようになったな。
「妬けるな。」
アーティス、そんな余裕のある爽やかな笑顔で言われても、全然本気でとれないぞ。
「アーティス、全てを話せ。」
この国の悲劇は、王とその側近たちが皆、女好きだったことらしい。この国のトップ3が、好き放題にあらゆる若い女性たちに手を付けていったことで、次々と多くの若い女性たちとその家族が王都を捨てて出て行った。
王たちが気づいたときには、殆どの若い女性たちが出て行った後で慌てて王都を出ることを規制したらしい。そして、残った若い女性たちは、それぞれ3人が囲うことになったらしい。
そんなときに、アーティスに申し入れがあったそうだ。どんな援助でもするから、異世界から女性たちを召喚してほしいと。アーティスにとっては、自力では、どうすることもできない召喚のための材料が必要でただ1つの条件で受け入れたそうだ。
条件は、セナを引き渡すこと。ただそれだけだという。
「ちなみに王も死んだから。」
「そうするとアーティスお前も共犯なのか?」
「そうだ。軽蔑するか?どうする、俺も殺すか?」
私が前世の恋人だったこの男を殺せるのか?できるわけがない。軽蔑?800年も待ったらどんな手段を使ってでも行動したいと思うだろう。
「お前たちは、どうしたい?」
私は、生徒たちに視線を向ける。被害者は、彼女たちだ。私が、アーティスを殺してどうするのだろう。アーティスが転生してくるのをひたすら待つのか?
「ダメだよ。アーちゃんは、800年も待ってたんだよ。」
おいおい、遠山、だんだん語呂が怪しくなっていくなぁ。
「俺は、セナに殺されるなら本望だな。」
「アーティス、過去に召喚されてきた人たちは、どうしたんだ?」
「ああ、処分した。皆、人族じゃなかったからな。」
召喚して人間じゃなかったら、驚くだろうな。人間じゃなきゃ良いってわけでも無いが感情移入はできないな。
「そうすると、人族での被害者は、私たちだけか?」
「ああ、召喚できた人族は、セナたちだけだ。」
「大島は、どうしたい?」
「私たちは、元の世界に帰れるの?」
「無理だな。」
「なぜ?」
「召喚の間が王城ごと潰れてしまったからな。」
もしかして、私のせい?
「じゃあ、この世界で生きていくしかないわ。」
「そうなるな。」
「アーティスを殺したら、なんの伝手もない。この世界に放り出されるのは困るわ。できるわけないじゃないの。」
夏目に視線を向けると頷いている。まあ、自分の考えより大島の考えを優先する子だから解かっていたことだ。
「アーティス、この国でのお前の立場は?」
「王宮筆頭魔術師兼法衣侯爵といったところだ。」
「国民に恨まれている?」
「いや、王たちの目線が国内の女性たちから逸れたから、それほどでもないと思うが。」
「兵士たちは、誰が束ねている?」
「王都の兵士は、俺が・・・。」
「そうか、それなら、私からアーティスに贖罪の機会を与えよう。この国を乗っ取れ、そして、この国の国民を幸せにしろ!」
「それだけでいいのか?」
「ああ。」
「軽蔑しないのか?」
「ああ。」
「俺と結婚してくれるか?」
「あ・・・。」
ドサクサに紛れて何を言っているんだ。間違って、肯定するところだったじゃないか。
「ちっ。」
しかも、舌打ちまでしてやがる。全く、油断も隙もない。
・・・・・・・
その後の復興は、早かった。ほんの1ヶ月ほどで元通りだ。まあ、私も魔法を駆使して王城を修復させられたが・・・。
後宮に居た王の女たちや各屋敷に囚われていた側近の女たちは、すべて解き放たれ、皆、肉親の元へ帰って行った。心に負っているだろう傷は、どうしようもない。時間が解決してくれることを待つより他にないだろう。
王都の外に避難していた国民も僅かずつだが、帰ってきているようだ。
私たちはというと、王城に住んでくれとアーティスに懇願されたが、元アーティスの屋敷を貰い、そこで皆で住んでいる。アーティスも、王城は執務だけで、夜遅くに疲れて帰ってきては、寝るだけの生活を送っている。
このまま、平穏な生活が続いていくとその時は、思っていたのだが・・・それは、大間違いであることを、暫くあとになって知ることになる。
まだまだ、序章です。一難去ってまた一難なんです。
まあ、校長先生にとっての今一番難儀なのは、アーティスでしょうけど。
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くりかえしになりますが、小説への文句・抗議は第5話から6話辺りですべての設定が出切ると思いますのでそれ以降にお願い致します。
ええ書きますとも書きますとも。
クドイですよね。ごめんなさい。でも、わからんチンがいらっしゃるようなので(泣)