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校長勇者  作者: 一条由吏
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プロローグ

ありがちな召喚モノです。

変な設定その1、主人公が校長先生なんです。

 県立松陰商業高等学校の校長、丸地良男(まるちよしお)が召喚されたのは、卒業式が終った後に卒業生数人が校長室にお礼参り来ていたときのことだった。


 一瞬で、白い靄がかかった空間に放り出された。


 移動の際のGだったのだろうか内臓をミキシングされたような気持ち悪さに吐きそうになる。しかし、近くには、お礼参りに来た卒業生である3人の女の子も居たので、なんとかやり過ごした。


 そして次第に白い靄が晴れていき。目の前に女が1人立っているのがわかった。


 非常に美形で、それはこの世のものでないと言わんばかりの・・・。


 その美形の女性が目の前に手をかざすと、すっと気持ち悪さが引いていった。そしてこの世のものとはっきりわかる言葉で話しかけてきた。


「おみゃーさんたち大丈夫きゃー、わしゃこの地区で転生係をしとるナナという女神だきゃー。」


 おもわず、ズッコケそうになるも、あきらかにこの場の代表者である私は、必死に我慢する。


「転生?ということは私たちは死んだのですか?」


「ちがうなも。おみゃーたちは異世界から召喚されたがね。とっさに動けたんがわしだったちゅうわけだがね。」


「元の場所に返して貰えるのですか?」


「いや無理だなも。今は時空間に割り込みを掛けただけだがね。割り込みをやめたとたん、異世界に召喚されることになる。それは変えられへんでーしょうがねえでいかんがー。」


「では、状況説明しかしてもらえないのですか?」


「いんや、向こうの世界は、剣と魔法の世界でこの世界とは全く違うんだわ。生き延びて帰って来れるように、最低限の装備と力を1人に1つずつ渡そうと思ったのだなも。」


「装備と力・・・ですか?」


「そうだなも。 『翻訳』『鑑定』『状態』『箱』の4つの装備と『知識』『魔術』『力』『不老不死』の4つの力だがね。」


 『翻訳』:日本語での読み書きが全て、相手の言語に自動翻訳される。

 『鑑定』:生物、無生物を問わず、その能力などを知ることができる。

 『状態』:自分の現在の状況を知り、設定を変更することができる。

 『箱』:1種類につき999個までのものを重量に関係なく収納できる。


 という装備と


 『知識』:属している世界の知識を取り出すことができる。

 『魔術』:古今東西どのような魔法でも使用することができる。

 『力』:腕力、脚力など肉体の力を人族の最大1000倍にすることができる。

 『不老不死』:HPとMPを無限大にし、再生能力を持つ。


 という力だそうだ。そして、どの力も普通3%ほどしか使われていない人族としての能力を100%引き出すらしい。


 まずは、他の3人の女の子から決めさせる。教師の私は、一番後だ。女の子だから美貌が衰えない『不老不死』を誰かが選ぶだろう。他の3つの力ならば、どれを貰っても、彼女たちを守ることができそうだ。


「そうね。まずは、私から・・・『力』を頂くわ。」


 まず、最初に決めたのは、松商のワルキューレと呼ばれる元生徒会長の大島麗子(おおしまれいこ)だ。彼女は、剣道、空手の黒帯でしかも芸能人の両親を持つ、全校生徒の憧れの存在だ。

 私たちが召喚の対象になったのは、おそらく、彼女の持つカリスマ性だろう。


「じゃ、私は、『魔術』ね。」


 次に選んだのは、同じく元生徒会副会長の遠山響子(とおやまきょうこ)だ。彼女は、現役女子高生デビューした小説家だ。主にファンタジーを得意としている。


「私は、『知識』よ。」


 我が校は、公立学校に珍しくプティ(姉妹)制度があってそれも今のはやりは、同学年で行われることが多いらしい。高校を卒業すると制度としてのプティ関係が終るがその関係は、一生続いていくことが多く、関係性も本当の姉妹よりも強いと言われている。


 大島麗子のプティである夏目真紀子(なつめまきこ)は全校生徒のマスコット的存在でもあった。


 実は、このプティ制度が我が校のガンだと。私は睨んでいる。我が校で起きるトラブルの殆どは、この制度に絡んだものだったのだ。


 しかし、特に生徒会周りは生徒の自主性を尊重する意味で手を出せない領域であり、特に大島麗子が生徒会長だった1年間は全校生徒の信頼の元、おそらく、校長である私よりも絶大な権力を振るった。


 卒業生であった3年目も院制をしいているようなものだったため、手を出すとしたら来年からになる。その意味もあって、彼女たちはお礼参りに来たのだろうし、私も1発ぐらい殴られる覚悟をしていたのだ。もちろん、事件にするつもりはなかったが・・・。


 そもそも、私がこの学校の校長として赴任したのは、特別なキャリアがあったからでも特別優秀だったわけでもなく、トラブルを内々で処理できる能力を買われたためらしい。そうでなくては、年功序列の厳しいこの世界で、教頭も経験していない46歳の私が校長になれるはずもなかったのだ。


 まさか、卒業式の日に人生最大のトラブルに巻き込まれるとは・・・。


 仕方が無い。残った『不老不死』で彼女たちの盾になるしか残されていないようだ。


 先ほどの女神から、各人に小さな玉を渡された。


「その玉を、頭に乗せて上から押さえてちょーよ。そうすれば、力が得られるだがね。」


 彼女たちが不安そうにその玉を見ているので、ここは教師である私が率先して実行するべきと思い、真っ先にその玉を頭に乗せて頭の中に押し込む。


 その途端、身体中が熱を持ち、頭が貧血を起こしたのだろう。その場に倒れこむ。全く動けず、体中が痙攣する。


「このようにあんたらの肉体と精神を改造することで力が得られるようになるのだがね。」


 残った彼女たちは、3人で話し合っているようだ。そして、出た結論は・・・。


「「「卒業までの3年間、ご指導頂きありがとうございました。」」」


 痙攣して動けない私に傍に来て、彼女たちが口々に言っていく。ああ、私が彼女たちから感謝される日が来るとは・・・。


 だが、次の瞬間、驚愕の言葉が続けて発せられた。


「「「お礼にこの力は、校長先生にあげます。受け取ってください。」」」


 え。1つでも能力が100%引き出されるものをさらに3つも押し付けられるのか・・・。大丈夫なのか?


「これから、勇者として生きていくのは、面倒だから先生に任せるわ。装備だけでも十分にぜいたくに暮らしていけるし、召喚者に頼ればいいわ。」


 お前が勇者として呼ばれたのに・・・。面倒って・・・。


「これから、鍛え上げて魔法を使うなんて、面倒。でも、創作の糧にしたいから、使って見せてね。」


 おのれもプロの作家なら、自分の身体を張れよ。


「ごめんなさい。お姉さまと暮らしていくには、特別な能力は邪魔なのよ。」


 1人で生きていけるだけの能力を備えた女性では、庇護の対象にならないのだろうか。違うだろう・・・。


 私が大丈夫かどうかなんて全く考えていないのだろう。そう彼女たちが口々に言って、彼女たちの持つ玉を動けない私の頭へ押し付けていく。その後のことは、覚えていない。精神が改造されだしたのか、視界が暗転したのだった。


・・・・・・・


 気が付くと周囲には、彼女たちは居らず、女神だけが居た。


「ひどいことするがね。『不老不死』が先でよかったがね。かろうじて、力は、全て貴方の肉体と精神に刻み込まれたがね。」


「私の身体は大丈夫なんですか?」


 教師とはいえ、人間なんだ。自分の身体が一番大事だ。


「わからんがね。人族の限界は、軽く越えているだろうがね。おそらく、コントロールが難しいと思うだがね。決して衝動に身を任せてはならないんだがね。」


「衝動に身を任せると、どうなるんですか?」


「異世界が壊れるかもしれないがね。」


 とにかく死んでも感情を抑制しなくては・・・。


「なんとかならないですか?」


「うーん、異世界には、竜が居るというから、巨大な力を制御する方法があるかもしれんがね。聞いてみるのもひとつの手だがね。」


「ありがとうございます。」


「特別に貴方の言うことをひとつだけ叶えてあげるでよ。なんでもええでよ。例えば、彼女たちの顔を醜くするとか・・・。」


 こんな身体にさせられた復讐の手伝いをしてくれるということか・・・。だが私は、教師だ。彼女たちを守ることしか考えは、無い。


「では、私の力が暴走しても、彼女たちの肉体や精神に影響が無いようにしてください。」


「お人好しだなも。わかったがね。では、時間だがなも。がんばってちょーよ。」
























 目の前には、4人の男たちが出現した。いや、出現したのは、こちらのほうか。


 中央にいるひと際でっぷりと太った男の頭には、王冠が載っているからこの国の王なのであろう。その左右にハゲジジイと潤沢で真っ白いヒゲを蓄えた男たちとすっぽりと頭からフードを被った男が、脇に控えていた。


「おお、成功だ。よしよし、女が3人もおるぞ。」


 好色そうな赤ら顔の王が、品定めをするように彼女たちを下から上へ嘗め回すように見上げる。


「そこの男は、どういたしましょうか。」


 脇に控えているフードを被った男が問う。


「アーティスよ。よきにはからえ!」


「はっ!わかりました。」


 フードを被った男が、こちらに近づいてくる。


「ここは、どこなんだ。私たちをどうするつもりなんだ!」


「勇者である貴方たちを召喚したのは、この国を魔族より守って頂くためです。彼女たちは、これから、賓客として接待を受けられます。そして、あなたは、私の元で魔法を学ぶのです。セナ。」


 そういいながら、彼はフードを取り去る。


「きゃー・・・。」


 この声は、夏目だろう。ミーハーな黄色い声を出している。あとの2人からは、唾を飲み込む音が聞こえてきた。


 そのフードの中からは、透けるような金髪が185センチほどと思われる長身の背中まであり、その健康的だが透き通るような白い肌をしたイケメンが顔を出したのだから、無理もないだろう。


 しかし、私は、そんなことを聞いている余裕は全くなかった。彼が最後に『セナ』と私に向かって言うと突然、頭が割れるような痛みが襲ってきたのだ。そして、私の前世がセナというお姫さまであり、前世の記憶が走馬灯のように凄いスピードで脳に刻み付けられたのだ。


 その記憶によると、目の前の男は、なんと恋人だった。セナは、1国の姫だったが本来友好のための嫁ぎ先である近隣の国々には、既に嫁いだ姉たちが居り、なんの気兼ねなく、父である王からも祝福される恋人だったのだ。


 しかし、セナとアーティスは、ある戦いに巻き込まれ、ついにセナは彼の目の前で命を落としてしまったのだ。その後は、どうなったかわからないが、どうも、彼は、セナをあきらめきれず、魔術師となり私が転生するまで待ち続けていたらしい。


「ようやく、みつけた。」

ありがちな召喚モノなのに、転生モノだったりします。

変な設定その2、校長先生が姫の転生した姿なんです。

変な設定その3、姫のイケメンな恋人が召喚者なんです。


BLに踏み入れないように気を付けながら話を進めていきますので

引き続きよろしくお願いします。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

ブックマーク登録を是非ともお願い致します。


誤字脱字の指摘をよろしくお願いします。

小説への文句・抗議は第5話から6話辺りですべての設定が出切ると思いますのでそれ以降にお願い致します。


励ましのお便りは、いつもいつも待ってますのでジャンジャンください。



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