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クバオのターミナル

はじめてフィリピンのバスに乗り、二人はアンナの田舎へと向かう。

またまた災難が襲う。

翌朝、テレビの音で目が覚めた、時計を見ると7時を少し回っていた。私はベッドから起き、幸男を起した。

昨晩からずっと点けっぱなしのテレビが、ニュースをやっていた。「おい幸男起きろよ」

と良いながら肩を揺すった。幸男は気持ち良さそうな顔で、ぐっすり寝ている。額は禿げ上がり、

少し腹が出て「禿げ、デブ、ちびの三拍子」もてないクンの典型の様な男だ、今まで彼女が出来た事が無い、

ローズが始めての彼女?らしい。ローズとのデートは「同伴、同伴」とせがまれ、

夕方店の前で待ち合わせをして、焼肉やへ行くのが、1週間に3日ぐらい。

客と同伴をすると、1時間の遅刻が許される。開店は7時だが、8時までに客と一緒に店に入れば良い。

女の子は同伴をすると店から同伴料として、1500円もらえる。私もアンナに、

同伴をせがまれていたが、アンナは、日本が始めてのタレントなので、

誰か他のタレントと、一緒で無いと同伴は出来なかった。

私は余分な金が掛かるので、なるべく同伴は断ったが、1週間に1度は付き合った。

必ずお邪魔虫が付いてくるので、料金は倍掛かる。客の中には、ホテルへ誘う男も居て、

うまく断る事も、必要で有ったらしい。だが勝手なもので、好きなお客とはホテルもOKらしい。

私はアンナと、そういう関係では無かったので、アンナにとっては、安全パイなお客である。

ようやく幸男が起きてきた、テレビのボリュームを大きくして、私は便所へ入っていたので、

うるさくて起きたのだろう。眠い目をこすりながら「おはよう、飯でも食いに行くか?」と私に声を掛けた。

私は便所の中で、用をたしていた、終わって流そうと思い、便器のノブを回した。

所が水の流れる量がとても弱い、固まりが全部流れない。何回も水を流したが、なかなか流れなかった。

「フィリピンの水道はこんな物かな?」と独り言を言いながら、置いてあったゴミ箱に水を汲んで、

便器に勢い良く水をまいて流した。やっと中が綺麗になって来たが、ヒヤヒヤ物だった。

隣に行ってアンナ達を呼んできて、1階のレストランで朝食を食べた。ここはバイキング方式で、

好きなものを取って食べれる。私はハムにパンと、オムレツを食べた。コーヒーは、

入れたてなのかは分からないが、あまり美味しく無かった。粉臭い感じで、香りがあまり無い。

多分フィリピン産の、豆を使っているのだろう。大きなホールの様なレストランで、

女の人がピアノを弾いていた。ぐるりと太い柱の周りに、テーブルが置いてあり、

食べ物が取りやすい様に、大きな皿に盛ってある。私は最後に、果物を取りに行った。

熟れたマンゴーにパパイア、スイカやパイナップルも有る。マンゴーはとびきり美味しく、

甘さと酸っぱさのバランスが抜群であった。

幸男は大皿にいっぱいに、パイナップルやスイカをのせている。そしてテーブルに運んで、

一気に頬張る。南国の果物は美味しい、それを腹いっぱい食べ、満足して部屋へ戻った。

「チェックアウトは12時だから、後で隣のデパートへ行こう」とアンナに言うと、

「はい10時開店だから、その頃貴方の部屋へゆきます」と言ってドアを閉めた。

アンナが私達の部屋へきたのは、10時をちょっと過ぎていたて、

お父さんも一緒について来た。アンナのお父さんは無口で、こちらから何か言わないと喋らない。

言葉が分からないので喋らないのか、無口なのかは分からないが、ただ笑っているだけで、

私とアンナの関係をどう思っているのか?。このホテルとデパートは、廊下でつながっている。

3階の通路から行くと、ちょうどデパートの3階にでる。所がデパートへ入ったとたん、

知らない男が話しかけてきた。「アナタ、ホテルでみたよ」年の頃は40歳前後、

ポロシャツに、ジーパンを穿いている。私はホテルの従業員かと思い、適当にあいづちをうち話をした。

私はアンナと腕を組んで歩いていたので、今度は男は幸男に何か話しかけている。

「デパートの女、誰でも紹介するね」と男は幸男に言った。

「ノーノー」幸男は手を横に振りながら断っている。「こいつ何なんだ?」

と幸男は迷惑そうな顔をして、男から離れて歩いた。すると男は、幸男の後を付いて

「アナタ友達ね、だから私お腹が空いたよ」今度は金銭を要求している。

知らない男に、金を恵んでやる筋合いは無い。無視して歩く、男は必要に離れない。

幸男から金を貰うまでは、帰らないつもりだ。アンナは、男にタガログ語で何か言うと、

男はあきらめて帰って言った。「何て言ったの?」私は聞いた。

「あんまりひつこいと、ガードマンを呼ぶよ」と脅かしたらしい。

アンナに何か服でも買ってやろうと思い、女性専門の服売り場へ行った。

「何か欲しい服があれば、買ってあげるから」とアンナに言った。

アンナは嬉しそうに返事をすると、Tシャツ売り場の方へ行った。それを女性店員が、

追いかける様にアンナの後を追う。何枚もシャツを胸に当てて、選んでいる。

店員はここぞとばかりに売りつける、なるたけ高い物を持ってきては、

アンナに買わせようとしている。日本人のスポンサーが居るので、大船に乗った様な気分で服を勧める。

結局、普段着る事の無い様な、服を買わされてしまっていた。「これで良いの?」とアンナに聞いた。

「店員がうるさいの、これを買えって」と言って見せてくれた服は、レースの派手な、

ヒラヒラが襟について、胸の所にキラキラ光るビーズが、縫い付けてあって、

変てこりんな、中国のダサい服のようだった。

値段は、他のシャツの3倍はする。デパートの店員は、高い服を無理に買わせたらしい。

しかも、今度はレジの女は、まったく無愛想で、椅子に座ったまま応対している。

ありがとうの言葉も無く、渡した金を偽札かどうか透かしてみる。そしてつり銭を投げてよこした、

日本だったら即首だ。「俺ちょっと部屋へ帰るわ」と幸男が言った。

「どうして?」「うん、ちょっと腹の具合がおかしいんだ」と腹を押さえながら言った。

「俺も帰るよ」と言ってアンナに「俺たち先に帰るから」と言うと「私も一緒」と言って、

買い物袋を大事そうに持って付いてきた。私は「幸男がCRへ行きたいんだって」と言うと、

アンナは「うん、分かった」と言った。フィリピンでは、便所の事を、シーアールと言う、

マガンダで教わった。どうやら、幸男は下痢をしたらしい。あんなに心配して、

日本からミネラルウォーターを、幾つも持ってきたのに、何故下痢をしたのか検討がつかない。

急いで部屋に戻ると、幸男は慌てて便所に駆け込んだ。何回も水を流す音がする、

「幸男大丈夫か?」と声を掛ける。

便所の中から「腹が痛てえ・・・」と幸男のうめき声が聞こえる。しばらく出てこなかったが、

30分もたってやっと出てきた。「大丈夫かよ、」と声を掛けると、「うん、少し落ち着いたよ」

と幸男はタオルで顔を拭きながら言った。「何か変な水でも飲んだの?」

「いいや、ここの水なんか、危なくって飲んでないよ、コーヒーだけだ」と言った幸男が、

ハッとした顔で、何かを思い出した様な顔をして言った。「俺水飲んだかも知れない」「どうして?」

「さっき朝飯の時に、大きなグラスに水が入って、置いてあったのを知ってた?」

「うん、あったな」「それを飲んだかも知れないな」「どうして?」

「うん、話に夢中になって、うっかりそばにおいて有った、コップの水を飲んじゃったらしい」

と言った。私はフィリピンの水は危険なので、うっかり飲むといけないので、

グラスをわざと遠くへ置いていたが、幸男はそれを飲んでしまったらしい。

それにパイナップルも、幸男はたくさん食べていた。

アンナが心配で見に来た、「大丈夫?お腹痛いの?」と良いながら私のベッドに座った。

「薬買ってこようか?」私は心配なって幸男に聞いた。「俺薬持ってきたから、飲んでみるよ」

と良いながら幸男は、ウエストバックから下痢止めの薬を出して飲んだ。「痛たた、又腹が痛くなった」

と言って便所へ駆け込むと、水を流す音が何回も聞こえた。水流が弱いので、

なかなか流れないのだろう、苦労しているのが分かる。しばらくして幸男が便所から出て

「内臓まで全部出たような気分だよ」と冗談を言った。しばらくして、薬が聞いてきた様で、

お腹の痛いのは収まった様だ。ホテルのフロントへ行き、病人がでたと言って、

チェックアウトを、少し遅らせてもらった。本来なら12時がチェックアウトだが、

夕方のバスが出るまで、部屋で休んで居ても良いと言った。料金はそのままで良いと言ったので、

フロントの二人に、100ペソづつ、チップを上げると、凄く喜んでくれた。

幸男の腹の具合も良くなって、夕方9時のバスに間に合う様に、6時にホテルを出た。

バスターミナルは、クバオという所にある。

ホテルからタクシーで1時間ぐらいの所らしいが、クバオまでは、渋滞が凄いと聞いていたので、

早めにホテルを出る事になった。ホテルのボーイに、タクシーの手配をしてもらい、

玄関にタクシーが止まった。そのタクシーは、ボディーはボコボコで、バンパーも、

落ちそうに成っているのを、針金で留めてある。ドアの取っ手は壊れていて、なかなか開かない。

運転手が降りてきて、トランクを開け、荷物を積んでくれた。

5人はちょっとキツイ、荷物が大きい為に、幸男のスーツケースは、トランクに入り切れない。

私がアンナと助手席に乗り、幸男とお父さんは後部座席に乗った。ドアの内側の板は接がれて無く、

窓ガラスを上げ下げする、ノブは付いてなかった。私の股の所にアンナが座り、

両手で抱きかかえる様にして座った。もちろんメーターは壊れていて、使い物にならない、

クバオまで幾ら掛かるのだろう。アンナに、クバオまで、幾らで行くのか聞いてもらった。

若い運ちゃんは「300ペソ」と言った。するとアンナは、運ちゃんと値段の交渉を始めた。

結局チップ込みで200ペソで、と決まった。タクシーは黒鉛を履きながら、

ホテルを出て、夕方の街を走り出した。6時はまだ明るい、見たことも無い様なバラックや、

壊れかかった民家、錆び付いたトタン屋根の家が見える。建てているのか、

壊しているのか分からない様な、ビルの建築現場も見える。足場は竹で出来ていて、

建物の上まで伸びている。角が割れたブロックを、セメントで固めているのが見える。

家の軒先では、子供が水浴びをしている。石鹸をつけて、体を洗っているようだ。

街の電線は垂れ下がり、何十本もゴチャゴチャに張ってある。

電柱は斜めに曲がって立っている、まるで日本の終戦当時の様だ。

狭い道をクネクネと、タクシーは走る。近道をしている様だが、1時間も走っているのに、

クバオにはなかなか着かない。何しろ狭い路地に子供がいっぱい、子供をかき分けて走る。

どの道も車だらけで、スピードは出ない。クバオに着いたのは7時半を過ぎていた。

チケットを買ってから、まだ時間があるので、ターミナルの前にある、ファミリーレストランに入った。

ここはフィリピンで一番有名な「ジョリビー」と言うファーストフードの店で、

ハンバーグやスパゲッティー、チキンのから揚げなどが有った。

幸男はまだ腹の調子か心配なのか、コーヒーを頼んでいる。

私とアンナは、スパゲッティーを注文した。「お父さんは何食べるかな?」とアンナに言うと

「お父さんはチキンジョイでいいの」とアンナは言った。カウンターで注文して、

私と幸男はテーブルの椅子で待った。アンナとお父さんが、食べ物を持ってきた。

幸男と私はコーヒー、アンナとお父さんは、大きな紙コップに入った、コーラを持ってきた。

ここのスパゲッティーは、ミートソースが物凄く甘い。ケチャップに砂糖を混ぜた様な味で、

細かく切った、真っ赤なウインナーが少し入っていた。お父さんは、発砲スチロールの皿に入った、

鶏のから揚げに、ご飯が入っているのを、美味そうに食べている。いよいよアンナの田舎へ出発、

心が浮き浮きしてきた。







夜行バスでまたまた騒動!

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