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フィリピンの夜、

初めての海外旅行での失敗経験は、これからも二人に次々と襲い掛かる。

私達は夕飯を食べ終わると、日本料理屋を出て部屋へ戻った。寝るまではまだ時間が有るが、

旅の疲れがあるので、すぐ寝ようかとも思ったが、アンナと久々の対面で、

興奮していたので、あまり眠くなかった。

「幸男これからどうする?」と聞いてみた。「俺、カジノへ行ってみたいんだ」

とテレビのリモコンを操作している幸男が言った。テレビはケーブルテレビで、

日本の放送もある、NHKの海外向けの放送をやっていた。「それじあ、

アンナも誘ってカジノでもいくか、ちょっと聞いてくるわ」と言うと、

私は一人で隣の部屋へ行った。ノックをしてドアを開く、

「出てきたアンナに「これから幸男と、カジノへ行くけど一緒に行かない?」

とアンナに聞いた。すると「私はディスコへ行って見たいな」とアンナは言った。

「ディスコか・・・ディスコも悪くないな、じゃあ幸男に聞いてみるよ」と言って、

アンナを連れて私達の部屋へ戻った。「アンナが、ディスコへ行きたいんだって」と、

テレビを見ていた幸男に言った。「ディスコも悪くないな、でも俺は踊れないぜ」

「俺だってディスコなんか出来ねえよ、昔ゴーゴーを踊っただけだ」と言うと

「ゴーゴーじゃあないだろ、モンキーダンスかサーフィンダンスだよ」と幸男は笑いながら言った。

「どうする?カジノへ行きたいんだろ?」「俺はどっちでも良いよ」

カジノはこのホテルには無く、タクシーを使わないと行けなかった。

このホテルの地下には、有名なディスコがあると、ガイドブックに書いてある。私は少し興味があった、

ガイドブックには、日本人を目当てに女達がたむろしていて、部屋まで一緒に来て、

朝まで過ごすと書いてある。まさかアンナが居るので、女を部屋まで連れてくる訳にもゆかないが、

どんな女達が居るのか見てみたかった。

「よし、ディスコへ行こう」とアンナに言うと、「ちょっと着替えてきます」

と言って、自分の部屋へ戻って行った。トントン、ドアをノックする音が聞こえた。

私はアンナかと思い、ドアを開けた。ドアの外には、先ほど私達を案内した、ボーイが立っていた。

「イズミサン、オンナイリマスカ?」と小指を立てて言っている。

私は「ノーノーと言って無理にドアを閉めた。「本当にしつこい奴だ、

日本人は皆助平だと思ってんだから」と言うと、幸男が「皆助平じゃん」と私の顔を見て言った。

「そうだな、アンナが居なかったら、ボーイに頼んだかもしてないな?」

「そうだよ、俺だってローズが居なけりゃ同じだよ」と笑いながら言った。

この部屋はシングルベッドが二つ、タオルもシャンプーも全部二組あった。

男同士で寝るなんて、私達だけだろう。

部屋は20平米ぐらいの広さで、他に、バスルームと、二人用のソファーがある。

大きな鏡の前に机が置いてあり、引き出しには、バイブルが入れてあった。

電話の横にはマッサージの広告があり、日本語でホテルの案内が書いてあった。

「寝る前にマッサージでも、呼ぶか?」と幸男が言った。

「いいね、俺も呼んでみようかな」と私は言うと、しばらくしてトントンと、

ドアをノックする音がこえた。ドアを開けると、ちょっとおめかしをしたアンナが立っていた。

日本で見たアンナとは、違った魅力を感じる。

ジーパンにT シャツだけなシンプルな服装だが、長い髪は真っ直ぐ胸の辺りまで伸び、

腰はくびれ胸は大きめで、真っ直ぐに伸びた足は、日本人の女の子より長いし、

お尻がプクンと出ている。スタイルの点では、断然フィリピン人の方が良い。

アンナは店で働いていた時は、ミニスカートのボデコンの制服をを着て、

セクシーを前面に出して、私をメロメロにしていたのだ。

今晩はそのアンナを連れて、マニラで一緒に遊べる、まるで夢の様だ。

私は派手なアロハシャツを着て、真っ白いパンツを穿き、ハワイ旅行の日本人の様だ。

幸男は真っ赤なポロシャツに、白いズボン、これも日の丸の旗の様な感じで、

寒い日本から南国へ来たのを、楽しんで居る様だった。「お父さんは?」とアンナに聞いた。

「お父さんは部屋で待ってるって」とアンナは、私の腕に手を回しながら言った。

エレベーターに乗り、1回のフロアで降りて、フロントを左に見ながら歩くと、

地下へ降りる階段がある。階段の上の所に、「ディスコ、インペリアル」と書いてあった。

私達はディスコの看板を確認してから、階段を下りて行った。

階段は薄暗く、かすかにディスコ音楽が聞こえてきた。

入り口の椅子に座っているボーイが、服装チェックをしている。私達は一人50ペソの入場料を払い、

中へ入って行った。そして、ドアを開けてくれたボーイが、私達を案内してくれるが、

飲み物の注文を、聞いているんだろうが、うるさくて聞こえない。私はメニューを指差し、

「これ、これ」とビールを日本語で注文した。テーブルは6人ぐらい座れる大きな物で、

私達3人では大きすぎる。舞台では、白人のDJが大きなイヤホーンをかぶり、

大きな声で、何か怒鳴っているのが見える。正面の舞台には、日本人や、

外人の男女20人ぐらいが踊っていた。点滅するストロボや、レーザー光線が、それらを照らしている。

「幸男踊ってくれば?」と顔を近づけて言った。「まだ良いよ、ビール飲んで、

ちょっと酔っ払ってからな」と言いながら、幸男はタバコに火をつけた。

「じゃあ、俺アンナとちょっと踊ってくるわ」と言って、舞台へアンナの手を引いて上がった。

大勢の人で、肩がぶつかるほど混雑していたが、旅の恥は掻き捨て、って事で、

久々にディスコを踊った。マガンダではお店が閉まる直前に、メリージェンの歌が流れると、

指名しているタレントと、チークダンスが踊れる。それがしたい為に、いつも閉店時間まで粘った。

流石に若くは無いので、ディスコは苦手である。アンナは大分踊りなれている様子だ、

腰を振り振り上手に踊る。私は気分良く、一心不乱に踊ったので、さすがに喉が渇いた。

私はアンナの手を取り「ちょっと休憩」と言いながら席へ戻った。

すると幸男の隣に、、知らない女が座っていた。幸男はその女に顔を近づけて、

耳元で何かしゃべっている。「誰その女?」と幸男に聞いたが、「えっ、何?」

大音響のディスコ音楽で聞き取れない、「何?」と幸男は私に聞き返す。

私が幸男の隣へ行き、「何だよ、この女?」と聞いた。「知らないよ、

目が合ったら、こっちへ来ちゃったんだ」と言った。確かにこのディスコは、

獲物を狙っている女が一杯いる。まあ幸男は一人だし、ちょうど良いと思った。

「良いんじゃない、今日はマニラで楽しめば?」と言うと、私はアンナの横に戻った。

それにしても、私達のテーブルの横に、ボーイ達が何人も並んで立っている。

幸男がタバコを1本灰皿に捨てると、すぐ取り替える。サービスがとても良い、

ディスコだと感心をした。コップにビールが無くなると、すぐ注いでくれる。

ボーイ達が、私達のテーブルに、何人もぴったり張り付いて、サービスをしてくれる。

すると幸男が、灰皿をボーイが取り替える事に、チップをやっていた。

良く見ると、50ペソの札を渡している。アンナが「チップあげすぎ」

とビックリした様な、顔をして驚いている。ボーイが一日働いても、

80ペソも貰ってないのに、灰皿を1回取り替える事に50ペソでは、ここのテーブルに、

ボーイ達が群がるわけだ。幸男はそれを楽しんで居るようで、わざとチップをあげていた。

確かに札束が、ポケットに入り切れないほど有れば、金持ちに成った様な気がする。

日本とフィリピンの、物価に違いに驚く。私はアンナとビールを飲み、喉の渇きを癒した。

「アンナ、ビールで大丈夫?」と美味そうに、ビールを飲んでいるアンナに聞いた。

「さっきはお父さんが居たから、ジュースを飲んだけど、本当はビールの方が好きなの」

とグラスに氷の入った、ビールを飲み干した。「だって、マガンダでたまにはビールを飲まないと、

お客さんが怒るのよ」とアンナは言った。幸男も彼女を連れて、踊りに行った様だ。

2時間ぐらいディスコで踊ると、旅の疲れがどっと出てきた。「そろそろ帰ろうが」と幸男が言った。

「うん、大分疲れたし、眠いや」「それじあ、お愛想して?」とアンナに言うと、

アンナはボーイに向かって、指を四角くして合図した。フィリピンでお勘定の時は、

親指と人差し指で、コの字にして合図すると、お会計の合図に成るらしい。

隣に居たボーイに、アンナがお愛想の合図をしてから、かなり時間が掛かる。

そう言えば、さっき日本料理屋でも、会計に大分時間が掛かった。

まず、ウエイトレスを呼ぶのに時間が掛かる、こちらを見ていない。

伝票を持って来るのに、また時間が掛かる。そしてお釣りを持って来るのに、マタマタ時間が掛かる。

フィリピンで食事をする時、注文をする前に、「お愛想」をしておいた方が良いと、

そんな冗談も言いたく成る。何事も日本と違う、驚きの連続であった。

何か幸男が女ともめている、「何やってんだよ」と幸男に言うと、

「この女が部屋まで一緒に来るって言うんだ」「どうすんだ?部屋に連れてくるか?」

「いいや、今日は疲れているし、アンナが見てるからヤバイよ」

「それじあ、いくらか金をやって返したら?」「幾らやれば良いんだかわからねえ」

「千ペソも、やりゃあ良いんじゃない?」「OK,わかった」と言って、

幸男は女に耳打ちしていた。女は幸男から金を貰うと「アリガト」と日本語で言いながら帰って行った。

ここは耳鳴りがするほどうるさい、テーブルにお釣りの中から、150ペソ程チップを置いて、

私達はディスコを出た。

階段を上がりながら、「さっきの女はどうしたの?」とアンナが幸男に聞く。

幸男は罰の悪そうな顔をして「俺知らないよ、女が勝手に来ちゃったんだよ」

と汗をかきながら弁解していた。





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