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フィリピン・・・・マニラにて!

今から30年も前のマニラは、多くの日本人観光客で一杯だった。日本人専用の繁華街が存在していて、肩がぶつかるほどだ。目的は当然飲む、打つ、買うの三拍子である。

二人はカートを押しながら、ようやくチップ攻撃から逃れ、空港ビルの外に出た。

アンナが迎えに来ているはずだ。、ローズとアンナは同じ田舎で、マニラから、

300キロ以上離れている地方に住んでいる。アンナがタレントとして日本へ行けたのは、

ローズのおかげだ。フィリピンではどんな小さな田舎でも、必ず美人の少女が居て、

周りの親戚や、日本に出稼ぎに行った経験のある女が日本行きを勧める。

それを「ジャパユキ」と呼んでいる。マニラのプロモーターにダンスの訓練をさせられ、

踊り子としての免許を取得し、日本へダンサーとして6ヶ月間働いてくるのだ。

ローズは子供が居るので、一緒に迎えに来れなかった様だ。幸男もローズとは、

毎日の様に電話をしている。私と同じように国際電話の料金が、毎月相当額に成っていたらしい。

「確かマリアが出口で待っているって言っていたな?」と幸男に話しかけた。

「うん、でも何処に居るのか全然分からないな、こんなに人がいたんじゃ」と言いながら、

フエンスの外で、こちらを見ている人たちの中から、アンナを探した。

マニラ空港は成田と違い、一般の人は空港の建物には入れない。

迎えの人はフェンス越しに、出てくる乗客を、待たなければ成らなかった。

出迎えの人に混じって、関係の無い人も結構いるらしい。手すりの向かうから、目だけが見える。

それにしても、物凄い人数だ、とても簡単にアンナを探す事は出来そうもない。

電話でローズに何回もマニラは危険だから、注意をする様にと言われていた。

「ハルキ~、ハルキ~」遠くで私の名前を呼ぶ声がした。そちらを見ると、

破れたフェンスの金網からニョキッと手を出して、男が私に手を振っていた。

アンナが一人では危ないので、お父さんも一緒に来ると言っていたので、

私は多分お父さんかと思い近づいていった。フェンス越しにかすかに顔が見える、

お父さんにしては若すぎる。年の頃は15,6歳、その少年が「ハルキ、ハルキ」

と私の顔を見ながら叫んでいる。私が近づくと「シェンエン、シェンエン」

と破れた金網の中から手を出して金銭をせがんだ。「ハルキ~こっちよ」

聞き覚えのある声が聞こえた、懐かしいアンナがそこに居た。私は「幸男、居た、居た」

と大声を出して幸男を呼んだ。横の階段を下りると、駐車場に成っていた。

私と幸男はカートを階段の上に置くと、重たい荷物を持ってフーフー言いながら降りた。

さすがに寒い日本から、南国のフィリピンへ来ると、その温度差に驚かされる。

東京とは、20度は違っていた。スーツを着て、中にセーターを着込んで居たので余計だ。

暑がりの幸男は、ツイードの背広である、びっしょり汗をかいていた。

「お父さんです」と私に会うなりアンナが紹介をした。年の頃は、60から65歳ぐらいに見えた。

私と幸男に軽い握手をして、「はい」と日本語で挨拶をした。すると先ほど金網越しに、

私に声を掛けた少年が近づいて来て「シェンエン、シェンエン」と言いながら金をせびっている。

すると、お父さんが少年にコインを渡して、何か言ったと思うと、

少年は貰ったコインをポケットに入れると、そそくさとフェンスの方へ戻って行った。

全然関係ないのに、出迎えの人に混じって適当に声を掛け、金銭をせびっているらしい。

マニラに住んでいる親戚のおじさんが、たまたま車を持っているので、ホテルまでその車で、

送ってくれる約束だった。私は「あの少年、何で俺の名前を知ってたのだろう?」と心の中でつぶやいた。

私の荷物と幸男の荷物を、運んでくれる男たちがいた。私は親戚の人が来て手伝ってくれたのかと思い、

後からついて行った。駐車場の真ん中あたりに、ジープの様なステンレスで出来た車があり、

男たちは私達の荷物を後ろの席に積んでくれた。「サンキュー、サンキュー」とお礼を言うと

「シェンエン、シェンエン」と言いながら手を出した。こいつらも関係ないのか?

結局たかが30メートルの距離を運んで、千円は高すぎるので、3人いたので、

千円札を1枚だけ渡して追い返した。私はてっきりアンナの親戚の人かと思い、

荷物を運んでもらってしまった。油断もすきも無い、空港を出るまでに、幾ら盗られるか分かったもんじゃない。

運転席には腹の出た、ランニング姿の中年の男が座っていた。マリアが「親戚のおじさんで、マルコスです」

と紹介した。また軽い握手をして、車に乗り込んだ。運転手のマルコスを入れて5人、

大きな荷物が有るので物凄く窮屈だ。助手席にお父さんとアンナ、後部座席には私と幸男が乗った。

駐車場は、出迎えの車が一斉に駐車場を出るので、かなり混雑している。外の道路に出るまで時間が掛かかる、

空港を出るまでに、一時間ぐらいか掛かってしまった。すれ違う車は、ボロボロのカローラや、

20人ぐらい乗れるジープの様な形をした車に、人が屋根まで山盛りにのっている。

さらに空港を出てから道路の渋滞、大型の古いバスや、ジプニーからモクモクと黒煙が出ている。

途中車が止まるたびに、乞食が寄ってくる。赤ん坊を抱いた女や、目の不自由な年寄り、

5歳ぐらいの子供たちが私達に向かって「マネーマネー」と良いながら寄ってくる。

「あげちゃ駄目」とアンナが言う、お金をあげたくても、ペソを持ってないのであげられない。

ようやく私達を乗せた車は、海辺の太い道にでた。「ここはロハスブルバードよ」とアンナは 

指を挿して言った。車は渋滞を抜け、スピードが上がる。海から来る涼しい風が気持ちが良い。

左にヨットハーバーが見える、「ここがマニラ湾か」幸男が海を見ながら言った。

遠くに貨物船が、何艘も停泊している。椰子の木の向こうに、入道雲が見える。

私達の乗っている車は、窓が付いて無い、ステンレスの屋根に、ドアがと手すりが付いているだけだ。

全部手作りで出来ていて、ステンレスがキラキラ光っていた。

雨が降ったら大丈夫だろうか?スプリングが利いていないのでお尻が痛い。

これでも無いよりはましだと思い、私は我慢をした。フィリピンは、日本と違い右側通行である。

感覚的に他の車とすれ違う時、ぶつかって来るのかと思いヒヤヒヤした。

しかも運転も粗い、車線変更、割り込み、急停車、急発進何でもあり。

クラクションは鳴らしっぱなし、信号は無視、人が横断歩道に居ても止まらない。

車の間をぬって人が通る、太い道もお構いなしに横断してくる。

まるでゲームセンターで、運転ゲームをしている様だ。ロハス通りを右に曲がって、

車はガソリンスタンドに入った。助手席の横に、燃料を入れるふたがある。

メーターが無いので、棒切れを差し込んで量る。その後そこへ給油して、ふたを閉める。

ふたと言っても、ボロ布をねじ込むだけで、その横で運転しているおじさんは、咥えタバコである。

”危険があぶない・・・スタンドのお兄ちゃんも、気にしないで給油している。

しかもエンジンは掛けっぱなし、この国はいったいどうなっているのか?

おじさんが車を降りて、ボンネットを開けている、私もお尻が痛いのと、

危ないので車から降りた。ボンネットの中をを覗くと、湯気がラジエターから吹いていた。

スタンドの従業員に、水を入れてもらっている。もちろん、ラジエターのキャップは付いて無い。

そのままボンネットを閉めた。「エンジンが焼けないのかな?・・」私はつぶやいた。

給油が済んで、おじさんが従業員のお兄ちゃんに札を渡した。「ハウマッチ?」マルコスおじさんに聞いた。

「OK,OK]と言っておじさんは、車に乗り込んだ。私はアンナに「マネーチェンジ、マネーチェンジ」

と言って両替所に行く様に言った。おじさんは「オーケー」と言うなり、車のエンジンをかけ、

車はスタンドから出てしばらく走り、賑やかな道へ入って行った。「ここはマビニ通りよ」とアンナは言った。

アンナの居たプロダクションは、この近くらしい。この道はキラキラとネオンが輝いている。

みちの両側のガラス越しに、ビキニ姿の若い女が踊っているのが見える。私は興味があったが、

アンナが居るので我慢、我慢。一方通行のこの道に、両替所があった。私と幸男が車から降りて、

両替所に入ろうとすると、ポン引きが一斉に群がってきた。手に腕時計を持って

「ロレックス、ロレックス」と叫ぶ、偽物の時計を売りつけるのだ。

私は振り切る様にして両替所に入ると、制服を着た警備員がドアを開けてくれた。

この後も問題がいっぱい!!!

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