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空港行きの電車

いよいよ二人は成田空港へ、ずっこけ珍道中のはじまり。!!

早朝の国立駅のプラットホームは結構通勤客がいる、東京方面へ行く通勤客が並んで待っている。

私はあまりにも大きな荷物を持ってきた幸男に「ケースの中身は何なんだよ?」

電車を待ちながら聞いた。「うん、あれもこれも入れたら、こんなになっちゃて」

とスーツケースを軽く叩きながら言った。何だろう?こんなに大きなケースが、

パンパンに膨れている、私のは2週間分の荷物で、私の力でも軽く持ち運べる程度だ。

お土産のカップヌードルがかざばるが、二つ重ねて紐で結んである。やがて電車が来て、

私達は乗り込んだ。新宿駅に着いたのは、もう6時半を過ぎていた。山手線に乗り換える為、

上野方面行きを待つ。さすが新宿駅は通勤客で混雑している。かなり大きな荷物をもって、

移動するのは大変だった。やっとの思いで上野駅に着いて気がついた。京成上野駅は、

JRから離れていたのだ、私達は気がつかなかった。広い上野駅の出口を探し、

やっとの思いで、京成上野駅に近い改札をでた。

滑り止めのあるコンクリートの上を、ガラガラと大きな音をたてて、重い荷物を運んで行く。

私達はヒイヒイ言いながら、京成上野駅にやっと着いた。切符売り場の上の時間表を見ると、

成田空港行きの特急は、今さっき発車した所だった。「どうする?・・・

次の特急に乗っても、成田に9時過ぎになるぜ」と私は遅れてきた幸男をにらむ様に見て言った。

フライトは9時30分、本当なら2時間前には、空港に到着してなければならない、

旅行社の人に言われていた。登場手続きは時間が掛かるらしい、「今回の旅行はキャンセルかな?」

私の頭をよぎった。

「どうする?次の電車で行ってみる?」と、すまなそうに、しょげている幸男に言った。

私たちが切符を買おうか迷っていると、後ろから私の肩をトントンと誰かが叩いた。

振り返ると、鳥打帽をかぶり、横しま模様のトックリのセーターを着た男が立っていた。

「お兄さん方成田まで行くの?・・・私のタクシーなら間に合うよ」と薄笑いを浮かべて話しかけてきた。

「本当?どうやって?」私は半信半疑で、二重あごの高木ブーそっくりな男に聞いた。

「フィリピンでしょ?確か9時30分出発ですね、もし、間に合わなかったら、

料金は要らないよ」といかにも自身ありげに言った。私は駄目もとで「幾らで行くの?」

と聞いてみた。「2万5千円、航空券がパーに成るより安いですよ」と揉み手をしながら言った。

チラッと幸男の顔を見た、「良いよ、俺が全部払うから行こうぜ」と目を輝かして言った。

振り返ると運ちゃんは、幸男の荷物を持って改札口から出ようとしている。私たちも後に続く、

タクシーは駅の裏手に駐車してあり、派手な模様が目に付いた。聞いたことのないタクシーだ、

運ちゃんはトランクを開け荷物を積んだ。トランクに積みきれない荷物は、後ろの座席に置いた。

私は助手席に座り、後部座席では幸男が荷物を押さえていた。

「何で俺たちが、フィリピンへ行くの知っていたの?」

と運ちゃんに聞いた。「だって、カップヌードルを持っているのは、フィリピンだけですよ」

と笑いながら言った。運ちゃんはエンジンをかけ、タクシーは勢い良く発車した。

「この高速の入り口から乗ると遅くなるんだ」と良いながら上野から錦糸町方面に向かって走る。

私も仕事の関係で、毎日車を運転している。都内の道も結構詳しいが、この運ちゃんにはかなわない。

やがてタクシーは高速に乗り、スピードをあげた。首都高速は狭い、それでもスピードは落ちない。

チラッとメーターを覗くと、100キロ以上のスピードを出している。車が停滞しても路肩をすり抜ける。

私は助手席に乗ったのを後悔した、私は思わず何回もブレーキを踏む動作をしてしまった。

「シートベルトをして下さいよ」と運ちゃんは私に言うと、まるでゲームセンターで、

運転ゲームをする様に車を走らせる。窓の外を見ると、いつのまにか、

季節はずれのみぞれが降っていた。「こんなにスピード出して大丈夫?」

と運ちゃんに聞いた。「もちろん、ラジアルを履いてるから」と言いながら、運ちゃんはタバコをぷかり、

余裕の片手運転だ。私はこの運転手に任せるよりしょうがないな・・・と思った。

運を天に任せるから”運転手と言うんだと心で納得。首都高を抜け、

道幅の太い高速道路に入ると、更にスピードが上がった。時々停滞もしていないのに路肩を走る、

すると運ちゃんは「スピード違反を取り締まるカメラがあるんだ、

路肩を走ると写真に写らないんですよ」と得意げに話す。小雪交じりの高速道路を、

高木ブーのタクシーは140キロの速さで空港に向けて走る。やがて空港出口の標識を見て、

高速を降りると成田空港のゲートがあった。入り口でパスポートと荷物の検査をすませ、

出発の第二ビルの入り口にようやく着いた。時計を見ると8時40分、滑り込みセーフ。

私は急ぎ荷物をタクシーから降ろし、カートを探す為入り口付近を見回した。

すると高木ブーは何処からかカートを引いてきて「はいどうぞ、これ使ってください」

と良いながら私にカートを渡してくれた。幸男は運ちゃんに3万円渡すと

「お釣りは良いよ」と気前良く渡し、二人は重いカートを押しながら、建物の入り口へ向かった。

振り返ると、運ちゃんは車の横で手を振っている、この時ばかりは高木ブーが天使に見えた。

建物に入ると、アンナを見送りに行った時の、見覚えのあるカウンターはすぐ分かった、

カートに沢山の荷物を積んだ列が、まだ並んでいた。皆カップヌードルの箱を積んでいたので、

すぐフィリピン行きと分かる。しかも同じメーカーのカップ麺ばかり、

アンナから何回もメーカーの名前を聞かされたていて、他のじゃ駄目らしい。

おかげでアンナが帰ってから今日まで、国際電話の料金が1ヶ月3万円にも成った。

毎日のように電話が掛かる、全部コレクトコールなので料金はこっち持ち。

途中で電話を切ろうとすると「またマガンダへ行くんでしょう」と凄いやきもち。

だが、もうすぐ愛するアンナが待っている、フィリピンに行ける、私は思わず胸が高鳴った。

カウンターで無事チェックが済んだのは出発時間ぎりぎりであった。荷物の検査、

パスポートのチェック、あわただしく私達は中へ入った。入管の手続きが済んで、

免税店で土産のウイスキーとタバコを買う、やっとの思いで登場口にたどり着いた。

乗客はすでに機内に皆入っていて、私たちだけが遅れて到着。「お急ぎ下さい、お急ぎ下さい」

乗務員が叫ぶ、私達は搭乗チケットを確認して機内の細い通路を歩いた。

乗客全員が私たちをみている、中には聞こえる様に「遅れて来やがって」などと言いながら、

ヤクザ風の男がにらむ。この飛行機は出発時間が過ぎていたが、

私たちの為に待っていてくれたらしい。機内のアナウンスが「遅れて申し開けございませんでした、

この飛行機はマニラまで飛行いたします。シートベルトをお閉めください」

と英語と日本語とタガログ語で挨拶した。飛行機は滑走路に向かい走り出した。

乗務員が黄色いチョッキを着て、緊急時の時の説明をはじめた。

私は何か有るといけないので、しっかり見ていたが、旅なれた乗客は新聞を読んだりしている。

私の席はちょうど真ん中の席で、右隣に幸男、左の席は40歳ぐらいの男だった。

飛行機が水平飛行になると、機内アナウンスが「これから、お飲み物はおもちいたします」

と言った。シートベルト着用のサインが消え、しばらくして通路に乗務員が飲み物を運んで来た。

ビール、ウイスキー何でも無料で飲み放題。私はブランディーを頼んだ、幸男はビールを頼み、

テーブルを倒した。飲みものがちょうど飲み終わった頃、お弁当が運ばれてきた。

プラスティックの容器に、小分けされたおかずや、ご飯がはいっている。味は濃くも薄くもなく、

誰でも食べられる様な味付けだった。私は肉が苦手で、魚を選んだ、

日本ソバが小さな容器に入っている、海苔もわさびもついていた。初めて食べる憧れの機内食、

私はそれをうまそうにたいらげた。食べ終わって椅子を倒し、またブランディーを注文した。

機内で飲む酒は利くらしい、酔いがすぐ回ってきた。私がぐっすり寝込んでいると、

幸男に起された「オイこれどうやって書くんだ?」と小さな紙を私に見せた。入国証だった。

全部英語で書いてある、全然分からない。私は隣の男に「すいませんこれ、

書き方分かりますか?」と聞いた。すると男は私に「パスポートを見せて下さい」

と言ってボールペンを取り出し、「ここへ全部ローマ字で名前、生年月日、住所を書いて下さい」

と説明を始めた。初めての海外旅行、書類の書き方も全部ローマ字で英語で書く。

住所は日本と反対で、番地から先に書くようだ、説明を受けたが、結局隣の男に殆んど書いてもらった。

幸男も悪戦苦闘の末、なんとか書き上げたようだ。隣の男は新潟の長岡から来たらしい、

日本で知り合ったフィリピーナを追っかけて、ミンダナオのダバオまで行くと言う。

フィリピンは沢山の島があり、大きくルソン、ビサヤ、ミンダナオと分かれている。

マニラで国内航空に乗り換え、ダバオは1時間半で着くと言っていた。マニラに着くまで、

男は延々とフィリピンの怖い話や、危険な話を私に話した。行く前からあまり怖い話をされると、

行く気がしなくなって来くる。「冗談ですよ、フィリピンは注意をしていれば、

そんなに怖い所ではありませんよ」と笑いながら言った。どっちが本当かは知らないが、

マニラに着いたら注意しよう。



マニラ空港



マニラ空港のびっくり・・・・

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