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ダエット(DAET)の街

やっとの思いでアンナの田舎へ着いた、これからどうなるのやら・・・・

夜行バスは殆んどノンストップで走ったお陰で、ダエットの街に早く着いた。

いくら朝の早いフィリピンでも、皆寝ている時間だ。

バスターミナルは、薄暗い蛍光灯が、ぽつんと点燈していてバスを照らしていた。

迎えのトライシクルが客待ちをしていて、降りてくる乗客たちを待ち構えている。

アンナの住んでいる部落は、ここからトライシクルで40分ぐらいの所らしい。

私達は2台のトライシクルに分乗して、アンナの家へ向かった。住宅街の道をしばらく走り、

国道に出て、アンナの家のあるバスド(BASUD)に向かって走る。私の乗っているトライシクルは、

125CCのエンジンで、バイクの横に、客の座る椅子が付いている三輪車である。

運転手のイスも客席も、鉄板で囲まれていて、雨が降っても濡れない様に出来ている。

私とアンナは座席に座り、荷物は屋根と、後部の棚に載せて走っている。

私達の後ろには、大きなスーツケースを屋根に積んだ、幸男の乗ったトライシクルが、

べったり付いて来る。国道を、マニラと反対方向に走っているようだ。

アンナの住んでいるバスドは、ダエットの隣の町らしい。

小さな川が流れていて、橋を渡るとすぐ路地を右に曲がった。

車が1台やっと通れる様な、細い道をクネクネ走る。周りは竹と椰子の葉で出来た家が、

ポツリポツリと建っている。道が舗装していないので、穴ぼこだらけで物凄く揺れるので、

荷物が落ちやしないかと心配だ。街灯が無いので真っ暗である、

トライシクルの、ライトだけが頼りである。

10分ほど走って、アンナの家にやっと着いた、家の前に裸電球が一つ点いていて、

垣根を照らしている。竹で出来た門を開け、アンナが家の人を呼んだ。

運転手に料金を払い、荷物を家の中へ運んだ。

家の中は、竹で出来たソファーが有り、私が買ってあげた、ステレオとテレビが飾ってある。

テレビの上には、レースの飾りが掛けてあって、ナンナがおめかしをしている、写真がのっている。

その横には、アンナが格帽をかぶった、高校の卒業写真も飾ってあった。

裸電球一つが照明器具なので、部屋は薄暗い。起きたばかりの、兄弟達が集まってきた。

下は1歳ぐらいの赤ん坊から、上はアンナと同じぐらいか、ちょっと下の女の子まで、6,7人はいる。

「何人兄弟はいるの?」とアンナに聞いた。「一番上のお兄さんは結婚して、隣に住んでいて、

私のすぐ下の妹がこの子で」と先ほどの可愛い娘を指差して言った。全部で10人兄弟で、

アンナは長女であった。赤ん坊を抱いている、小太りのアンナのお母さんが、

照れた様な顔で私に会釈した。日本人と口を利くのは始めてらしい、

何かタガログ語で言ったかと思うと、アンナの後ろに隠れてしまった。竹で出来たデーブルの上に、

コーラの大瓶が2本置いてあり、全部かたちの違うコップが置いてあった。

多分お客が来るので、かき集めたのだろう、冷蔵庫が無いので、生暖かいコーラである。

「ごめんね、夜でテンダハンが閉まっていて、氷が無いの」とすまなそうにアンナが言った。

「ローズの家は近いの?」と幸男が聞いた。「はい、後で呼んできます」

グラスにコーラを注ぎながら言った。バイクのエンジンの音が聞こえ、家の前で止った。

聞き覚えの有るローズの声がした。「いらっしゃい、疲れたでしょう」

振り向くとそこにローズがいた。幸男は、まさかローズが来るとは思って無かったらしく、

ビックリした様でローズの顔を見ていた。

ローズは幸男の顔を見て「お土産は?」と言った。幸男は「ここに入ってるよ、今出すから」

と良いながら、スーツケースの鍵を開けた。ケースを開けると、ペットボトルの、

ミネラルウオーターの下から、ばらばらのカップ麺を取り出して

「これとこれ」と良いながら、20個のカップ麺と、チョコレートを出して見せた。

かさばる物ばかり持ってきたので、お土産を全部出すと、すっきりしたようだ。

ローズは幸男の持って来たチョコレートを手に取り、「何これ、チョコレートなの?」

がっかりした様な顔して言った。チョコレートは大きなビニールの袋に入っている。

何処のメーカーか、名前も分からない物である。「こんなのより、明治のアーモンドのとか、

森永のミルクチョコレートが良かったのに」と言って、がっかりした様な顔で言った。

そうです、フィリピン人は味や量より、一流メーカーの物を欲しがる。

テレビはソニー、靴はナイキ、シャツはポロのマークが刺繍してあるもの、

見栄っ張りの人種である。私はちゃんと、明治や森永を買ってある。

マガンダでタレントが、働いて居た事を思い出した。

お客に買ってもらった指輪を、5本の指に6個も、はめているタレントもいたし、

金のネックレスを、首に何重にもかけて自慢している女も居た。

「フィリピンなんて、量が多い方が喜ぶと思って」と幸男はあきれ返っている。

私もアンナの家族に、日清のカップ麺と、チョコレートを渡すと、

弟や妹達に分けてあげた。アンナはカップ麺を、大事そうに箱ごと棚に飾った。

「食べないの?カップヌードル」と言うと、「飾っておいて、近所の人に見せるの」言った。

日本では、学生が夜食に食べる様な物でも、ここでは高級品らしい。私なんか、カップヌードルなんて、

しばらく食べた事が無かった。「後で家に来てね」と良いながら、ローズは外に出た。「これ、アニキです」

と言って、外で待っていた男を幸男に紹介した。そしてローズはバイクに乗り、

お土産の袋をを抱えて帰って行った。ローズを見送る為に、私達は家の外に出ていたが、

いつの間にか、外が明るくなっていた。アンナの家は、小川の斜面に建っていた。

今朝早く着いた時には気が付かなかったが、この家は土手の上に建っている。

横に回ると、後ろ側が木の柱で支えてあった。「アンナ、これはお父さんの土地なの?」と聞いてみた。

「いいえ、ここは川なので、誰の土地でもないの」と言った。

幅が5メートルぐらいの川に、水が蛇行しながら流れていた。見渡すと、川の土手に沿って、

ニッパ椰子の屋根で出来た、同じような家が並んで建っている。

家と家の間には、バナナや、パパイヤの木が植えてあり、川の向こう側は、

椰子の木が生えていた。私と幸男は、後でローズの家へ行こうと思い、アンナに

「ローズの家はこれと同じ?」と聞いてみた。「いいえ、ローズの家は、

ブロックでちゃんと出来てるの」と言いながら、コーラをコップに注いでくれた。

幸男がタバコを吸おうとして、灰皿をさがしている。「アンナ、灰皿有る?」と聞くと、

「灰皿はここ」と言って床を指差した。床は木の板で出来ているが、粗末な板で隙間が点々とある。

タバコの灰は、この隙間へ捨てるのだ。食べ残しの残飯も、床の隙間から捨てる。

床の下で放し飼いの、鶏がそれを食べる。トイレも外の川っぷちにあって、

川の水に流すのだろう。トイレと言っても、竹の囲いで目隠しをしてあるだけで、

便器も無い。大きな平らな石がひき詰めてあり、そこで小便をする。大きい方は、

川に向かってするらしい。私達にはとても無理で、ここでは出来そうも無い。

「朝ごはんの支度が出来ました」アンナが竹のテーブルに、大皿に山盛りに、

海老が乗った皿を置いている。「幸男、飯だって」と言うと「俺食欲が無いんだ」と言った。

「まだ下痢してんの?」「いや下痢は治ったけど、さっきから変な臭いがするし、

ハエがぶんぶん」と私にささやく様に言った。私も気に成っていたが、

何処かで豚を飼っているのか、かなり強烈な臭いがしていた。「ハルキは、

海老がすきって言ってたから、お母さんが、昨日市場で買って来たのよ」と良いながら、

ご飯をよそってくれた。「たくさん食べてね」と言って、幸男の皿に、海老を山盛りにとった。

アンナは私の為に、海老を手でむいてくれている。ハエがちょっと油断をすると、

コップの周りにたかる。それを手で追い払うのだが、ハエも必死で食らいつく。

今度はむいた海老に集中攻撃、とてもゆっくり食べている気分ではない。せっかくアンナが私の為に、

むいてくれたので、無理して食べたが、やはり食欲がわかなかった。





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