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ゾンビとアカツメクサ  作者: くらげ
第二章 夢の中を散歩する親子
9/12

02 立て札と美女

『ゾンビとアカツメクサ』第一章『03 森に迷い込んだ男』と『04 ゾンビの罰とハンスの想い』の裏にあたります。

「おい。見ないのか?」


「パパ、頭いたい」

 作者とミクの睡眠の周期がまったく合っていないのだ。

 いきなり、夜中に目覚まし時計10個鳴らされた不快感があるだろう。

「もうちょっと、眠るか?それとも、自分のいえに帰るか?」

「いや、見る!」


 次に目覚めた時も、森の中。湖のほとりでゾンビと少女は話をしている。

 かすかに聞き取れる会話で少女の名前がわかった。『アイリス』だそうだ。

 話をしているうちに、少女はどんどん成長していき、ある時、突然消える。


「ゾンビさん、とてもさびしそう」

「そうか?」

 俺には、さっきと何一つ変わらないグロいゾンビにしか見えない。


 そこに、美しい娘さんに成長した少女が現れる。


「シロツメクサの指輪だ!」

「しー!声が大きい」

 不用意に、この世界に入り込んでは危ない。夢の中で、ゾンビに追われる経験は一度で十分だ。


 幸い、向こうには聞こえていないのか、向こうがこっちを認識できないのか、ゾンビたちがこちらを振り向くことはなかった。


 せっかく、娘の望む夢を見せてやれたんだ。このままでは、会話が良く聞こえない。

 少し、近づいて会話に集中する。

「もう少し近づかないと良く聞こえないよ」娘が文句を言うが、これ以上近くで、ゾンビの顔を眺めるのは嫌だ。


「どうやら、アイリスは結婚するみたいだな」

「アイリスちゃん、ゾンビさんのお嫁さんになるの?」

「いや、違うだろ」

 ゾンビのお嫁さんになるのかうらやましそうに聞く娘の将来が今から心配だ。


 七夕の願いに『ゾンビのお嫁さんになりたい』なんて書かないだろうな。


 少女は光の道を辿って帰り、世界が夜になる。

 遠くから男の声が聞こえる。よく聴くと「アイリス」と言っているみたいだ。


 ハンスと名乗る男がゾンビの前に現れ、協力をう。

 どうやら、アイリスが行方不明になったようだ。


「アイリスちゃん、どこ行ったの?」

「どこ行ったんだろうな」


 ハンスとゾンビは森の外に出るようだ。俺は娘を抱き上げて翼を広げた。


 森の上を低空飛行しながら、下を見る。木々の隙間から、白い一本の線が見えていた。

 森の外を出たハンスとゾンビは、どこからかフードつきの足元まですっぽり覆う服と馬を調達する。

 ゾンビが服を着てフードを目深に被り、ハンスを馬の上に押し上げ、自らも馬に乗る。


 早朝から駆けて、昼前には目的の場所についたようだ。結構大きな町で城がでーんと建っている。


 俺たちは、人気ひとけのない路地裏に降り立ち、彼らの様子をうかがう。


 ゾンビとハンスは城の前の立て札を気にしているようだったが、すぐにどっかに行ってしまう。


 中世ヨーロッパ風の世界だ。このままの姿ではまずい。

 幸い、魔法を使うのと違って、その世界の服装に着替えるのは割りと簡単だ。

 行きかう人間の服の中から、まあ、商人風の服と小さな子ども用の服をイメージする。

 途端、俺と娘の服が中世ヨーロッパ風に変わる。

 相変わらず、髪はどうしようもないのだが。


 俺は、こちらをちらちら見てくる城の門番さんに軽く会釈をして、ミクを抱っこしながら、立て札を見上げる。

 まあ、いきなり襲われたら、空に逃げれば済むことだし……。でも、魔法をばんばん飛ばされたら、やっかいだなぁって思っていたら……


「まさか、あんな小さな子を……」などというひそひそ声が、耳に届いた。


 とりあえず気にしないことにして、立て札を見上げる。

 最初は見たことも無い文字だったが集中していると夢の世界の文字が薄れ、代わりに日本語が浮かび上がってきた。


 曰く、

『王のお妃様になれる絶好のチャンス!容姿に自信のある方、奮ってご応募下さい。紹介者にも仲介料をお支払いします』


「なんて書いてあるの?」

「お妃様になる人を探しているんだって」


「シンデレラ?」

 これで玉の輿に乗れれば、確かにシンデレラストーリーだよなぁ。

 謝礼がどうのこうのと書いてあるのが胡散臭いが、

「まあ、そんなところかな?」

 と答えておく。


「ミクも、お妃様になれるの?」

 お妃様になったら、シンデレラみたいな綺麗なドレスが着れると勘違いしているんだろうな。

 また門番がひそひそ話している。


 ああ、こんな小さな子を嫁に出す親だと思われていたのか?

 うちの娘は確かに世界一可愛いよ。でも、たとえ夢の中だって、嫁に出す気は一切いっさい無い。  

「アラブの石油が求婚してきたって、絶対ミクをお嫁さんにやったりしないからな」


「えー?」

 娘よ。何で、不満そうなんだ。


「あー。ゾンビさん!」

「こら、ミク。人を指差したらいけないよ」

 そう娘に注意しながら、門の方を見ると、ハンスとゾンビが門番と話しているのが見える。


「え?」

 俺は自分の目を疑った。“ゾンビ”が目深まぶかに被っているフードの隙間から、さらさらの黒髪と娘と同じくらいつややかな唇が覗いていた。

 うちの娘には負けるが、うちの奥さんには確実に勝っているな。


「ゾンビさん、女の人だったの?」

 娘が、目をまん丸にして俺に問いかける。

 美女の隣の人物はハンスで間違いないし、美女さんが着ているのはさっきまでゾンビが着ていた服と同じに見える。


 確か、ゾンビは王子だったんだよな。えー?ここまで来て、実は違うゾンビさんだった?

 それとも、本物の美人が、ゾンビの着た服を着ているのか?

「とりあえず、ゾンビさんはゾンビさんなんだから、ほら、二人が中に入るよ」


 ハンスと美女(ゾンビ?)がお城に入っていくと同時に強い眠気に襲われる。

 

 世界に、黒の紗がかかっていく。

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