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チート能力を貰って異世界転生したはずが、ステータス画面の「正気度」がゼロだった  作者: 臥亜


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10/10

第2部・第5話(最終回) 人類の完全敗北と、深淵のハッピーエンド

ついに第2部も最終回です!ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

国王様(※ハエ)の差し入れによって、完全に胃袋から調教(?)されてしまったエリーゼ皇女。

連絡の途絶えた彼女を救うため、そして人類の未来をかけて、あの『本物の勇者』が禁忌の術式で蘇り、地下室へと突入してきます。

勘違いが勘違いを呼ぶ、狂った楽園の結末をどうぞ見届けてください!

「アリアお姉様! 次はどこのお肉(※胃壁)を磨けばよろしいでしょうか! カナタ様のお部屋を、世界で一番ピカピカにしてみせますわ!」

数日前まで絶望に震えていた帝国第一皇女・エリーゼは、今やエプロン(※魔物の皮)を身に纏い、目を輝かせながらアリアさんに尋ねていた。

昨日の『ハエの卵(※高級チェリー)』があまりにも美味すぎたのだ。

彼女の脳内は、**「これほど美味いバケモノの食事を拒めないということは、私はもう中身までバケモノの仲間入りをしたのだわ。ならば、この部屋の筆頭奴隷として完璧に生き残ってみせる!」**という、極端すぎる方向へと完全覚醒していた。

「あら、殊勝な心がけですね、泥虫。では、そこの肉のひだの隙間を念入りに磨きなさい」

「はい、お姉様っ!」

アリア様が無数の触手をフンスと鼻高々に蠢かせ、脳内美少女ボイスで命令を下す。エリーゼは嬉々として四つん這いになり、猛スピードで雑巾がけを始めた。

(うん……なんか、お姫様がめちゃくちゃ部屋に馴染んでるな。アリアさんとも義姉妹みたいになってるし、結果オーライか?)

俺がベッドの上でポテトチップスをサクサクと齧りながら、そんな風に完全に緊張感を無くしていた、その時だった。

――ズドォオオオオオオオオン!!!

地下室の肉壁が、目も眩むような黄金の神聖魔力によって木っ端微塵に爆破された。

「そこまでだ、魔王カナタァアアア! 帝国第一皇女エリーゼ殿下は、我が命に代えても救出する!!」

立ち込める煙の向こうから現れたのは、あの日、俺の闇魔法で消滅したはずの少年勇者だった。

全身の半分が白銀の魔導機械サイボーグで補われ、手にする『聖剣』は不気味なほど激しい神の光を放っている。人類の秘跡によって、死の淵から無理やり魂を繋ぎ止められて蘇った、決死の姿だった。

「勇者……!? 生きていたのか!」

俺が驚いて声を上げる。

しかし、勇者は俺の姿など見ていなかった。彼の視線は、四つん這いで床を磨いていたエリーゼへと向けられる。

「エリーゼ殿下! 今すぐお助けします! さあ、その悍ましい怪物どもから離れて、こちらの光の中へ!」

勇者は一点の曇りもない、正義の瞳で手を差し伸べた。

だが、それを見たエリーゼは、信じられないことに恐怖で顔を歪め、アリアさんの背後(※巨大な肉塊のくぼみ)へと猛ダッシュで隠れたのだ。

「嫌ぁあああああっ! 来ないで、光の勇者! 私に近づかないでっ!」

「え……? で、殿下……?」

勇者が呆然と手を止める。

エリーゼはアリアさんの極太触手にしがみつき、涙を流しながら勇者に向かって絶叫した。

「私はもう、あの巨大なハエの王が吐き出した蛆虫の卵(※チェリー)を『脳がとろけるほど美味い』と感じてしまう身体になってしまったのよ! 精神も味覚も、完全にこの魔王様にハメられて、内側からバケモノに作り変えられてしまったの! 今さら人間の世界に戻れるわけないでしょうがぁあああっ!!」

「な……っ!?!?!!」

勇者は絶句し、その場にガチガチと激しく震え出した。

彼の視点(正常なSAN値)からすれば、この光景は人類史上最大の絶望だった。

人類最高峰の美と気品を誇ったお姫様が、薄汚れた生贄の布を纏い、巨大な触手肉塊アリアに涙ながらにしがみつき、『ハエの王のウジ卵が美味くて堪らない、私はもうバケモノだ』と狂ったように叫んでいるのだ。完璧な、救いようのない精神崩壊(洗脳)に見えた。

「おのれ……おのれぇえええ魔王カナタァアア!!」

勇者の目が血走る。

「殿下を……人類の宝を、ここまで無惨に調教し、狂わせるなど……! 貴様はどこまで邪悪なんだ! 絶許、絶対に許さんぞぉおおおお!」

「いや、だから、ただのチェリーだって言ってるだろ……!」

俺の必死の弁明は、やはり『全言語理解』スキルの逆作用により、勇者の耳には**『愚かな人間よ、その絶望の叫びこそが我が最高の娯楽よ』**という、脳を直接破壊する冥府の波動として響いた。

「ガハッ……!?(魔音だけで、私のサイボーグボディの制御回路が焼き切れるだと……!?)」

勇者は吐血し、膝をついた。まだ何も攻撃していないのに。

「カナタ様、うるさい羽虫はさっさと叩き潰して、おやつの時間にいたしましょう。今日のポテトチップスは、私が触手で丁寧に二度揚げしましたのよ」

「あ、アリアお姉様! 私が塩振りを担当いたしますわ!」

脳内に響くアリアさんの甘い声と、それに嬉々として従うエリーゼ。

その背景では、俺の『無限の魔力』がドス黒いオーラとなって部屋全体を包み込み、自動防御の壁が勇者の聖剣の光をバリバリと握り潰していた。

「ああ……あ、ああ……(バケモノの触手の中でポテトチップスを食べる魔王……。それに仕える、完全に狂った我が国の姫……。ここは、人間の立ち入っていい場所じゃない、真の深淵だ……っ!)」

勇者は、自分の命をかけた復讐劇が、魔王にとっては「おやつの時間を邪魔された」程度の雑音でしかないという絶対的な格の違い、そして世界の理が完全に反転した狂気の世界を前に、ついに心が完全にへし折れた。

「ひ、ひぃいいいいいっっ!!」

勇者は折れた聖剣を放り出すと、サイボーグの脚をガタガタと鳴らし、破壊された壁の向こうへと脱兎のごとく逃げ去っていった。二度と、この国に近づくことはないだろう。

それから、人間の国(神聖魔王軍)は、こちらの王国へ一切の干渉をしてこなくなった。

彼らの歴史書には、こう記されたという。

『王宮の最深部には、入った者を一瞬で狂わせ、怪物の肉を貪り食う従順な奴隷へと作り変える、最凶の引きこもり魔王カナタが潜んでいる。人類の常識は一切通じない。決して、あの地下室に近づいてはならない』と。

おかげで、俺の引きこもりライフを邪魔する者は、世界に一人もいなくなった。

「はい、カナタ様。ポテトチップスのあーん、ですわ」

「うん、アリアさん、二度揚げサクサクで最高に美味いよ」

俺は、ふかふかのアリアさんの触手に包まれながら、至福の声を上げる。

「カナタ様、お茶のお代わりはいかがですか? アリアお姉様のご指導のもと、美味しく淹れられましたわ!」

部屋の隅では、エリーゼがすっかり洗脳完了した(と本人が思い込んでいる)満面の笑みで、お茶を運んできてくれる。

ふと、視界の端に自分のステータス画面を開いてみる。

【異常状態:致命的な狂気(手遅れ)】

【SAN値(正気度):0 / 100】

数値は、やっぱり完全なるゼロのままだ。

俺の脳は、どこまでも、手遅れなほどに狂い切っている。

外の世界から見れば、ここは世界で一番おぞましい、恐怖の魔王の地下室。

だけど、SAN値ゼロの俺にとっては――世界で一番優しくて、美味しくて、大好きなみんなに甘やかされる、最高のハッピーエンドの楽園なのだから。

(チート能力を貰って異世界転生したはずが、ステータス画面の「正気度」がゼロだった――いやぁ、正気なんて、捨てちまって大正解だったな!)

【第二部・完結】

『チート能力を貰って異世界転生したはずが、ステータス画面の「正気度」がゼロだった』、これにて堂々の完全完結です!

勇者を完全に恐怖で退け、エリーゼ皇女も(勘違いのまま)幸せな筆頭侍女として定着し、カナタの引きこもり楽園は永遠のものとなりました。

第1部からここまでカナタたちの狂った日常を一緒に楽しんでくださり、本当にありがとうございました!

皆様のクスッと笑える応援や、ホラーな展開へのドキドキが、執筆の最大の原動力でした。

もし「この結末、最高にシュールで面白かった!」「狂気ハッピーエンド、素晴らしい!」と思って頂けましたら、ぜひ最後に下の【★評価】や【ブックマーク】で作品を応援していただけますと幸いです!

また次回の新しい物語でお会いしましょう。本当にありがとうございました!

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