表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

犬前さん

 犬前さんは犬である。

 どこからどう見ても茶色の柴犬が警備員服を着ている立派な柴犬だ。おかしいのは大きさだけ。人間のLサイズが合う柴犬は犬前さんだけだ。特別感があっていい。

 だが、もともと犬前さんは人間だった。

 色々あって人間を辞めたくなったのだが、死にたくはなかった。

 人間辞めたいな、と思い続けていたら、いつの間にか犬になっていた。

 ある日突然の変化だったので、いるかいないかわからない神様が叶えてくれたのかもしれない。いや、もしかしたら自力で変化か進化したのかもしれない。

 とにかく原因不明のまま犬になった。

 茶色の柴犬という姿に絆されたのか、犬前さんは割とすんなり世の中に受け入れられた。

 いやいや、お前ら全員おかしいだろ、と心の中で思いながら、犬前さんは自分に都合のいい現実を受け入れた。

 だって、嫌われるよりは受け入れてもらったほうが嬉しいから。

 そんなわけで、犬前さんは今日も明日も警備の仕事についている。

 人間だった時からそうだったので違和感はない。

 ただ、職場の人達は戸惑いを隠さなかった。

「犬が同僚とかおかしい」と言い出す人も半分くらいの割合でいたし、「犬と同じ給料なんて嫌だ」と叫んだ人もいた。

 犬前さんとしては彼らの言い分に納得する面があったりなかったりで、特に異論は挟まなかった。自分が同じ状況になった時、取り乱さない自信がなかったから。

 後で聞くところによると、尻尾がしょぼんとしていたらしい。

 犬特有の鼻の良さで迷子を見つけたり、落とし物を探したりしているうちに、何となく有耶無耶になって同僚の枠に入れてもらった。ちょっと嬉しかった。

 犬前さんが人間だった時の先輩になる伊崎さんが、「良い子だ。よくやった」と顔面をぐちゃぐちゃにしに来ることだけは憂鬱だったが、尻尾が揺れていたので受け入れられていると思われていたそうだ。

 人間の時にはなかった現象だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ