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二十九話、四つの魂は一つになって二つに分かれ、そして……


 ボクたちの後ろで腕を組んで話を聞いていたファディスが「お前もカレンだという事は分かった。が、少し疑問がある。聞いてもいいか?」と、難しい顔をしながらサアヤの肩に軽くポンッと触れ隣に腰を下ろした。


【ナンダ? ポク、ニ、ワカル、コト、カ?】

「分かる範囲でいい。ミノとカイのダンジョンの元々のボスはどうなったんだ?」

『うん! うん! サラちゃんも気になってるにゃ。やっぱり不自然なのはボスなんだにゃ!』

【ボス、タチハ、ポク、ノ、ヒタイ、ニ、イル】


 カレンは朽ちた小さな両手で、額の赤い石に両手で触れる。

 

「それってまさか!」

「あぁ。やはりルノンと似てる。と言うよりまったく同じだ。と言うことは、おまえたち二人のカレンも短命なのか?」

【ソウダ。ケレド、フツウ、ノ、ネズミ、ヨリ、ナガイキ、デキタ。ダカラ、カレン、モ、キニシテナイ、ハズダ】


 ネズミは何処にでもいる。ごくまれにダンジョンにさえ現れたこともあった。たまたま現れたネズミを見て、短命で長くても三年くらいしか生きられないのだと、爺ちゃんが言ってたのを思い出した。


「けれど薄暗いダンジョンの中で一人はさみしかったでしょう?」


 小さなサアヤのつぶやきに、カレンはコクンッと頷く。ダンジョンに囚われ出られないし、もう一人のカレン……自分の半身にも会えない。なんてさみしくない訳はないんだよね。ボクには爺ちゃんがいたからさみしいなんて思ったこともなかった。けどカレンは本当のひとりぼっちだったんだよね。


【ヤサシイ、ニンゲン、タチ。ポク、ハ、ダイジウブ。イマ、ハ、ナカマ、タチ、イル】


 サアヤの手のひらからピョンッと飛び降りてヒョコヒョコ歩く。すると空中をただよっていた青く光クラゲたちが、カレンの周りに集まってきた。


「もしかして前のカイのダンジョンボスってクラゲだったの?」

【ソウダ。コノ、コ、タチ、ハ、ボス、ノ、コドモ、ダ。ダカラ、ポク、サミシクナイ】

『もしかしたら相性が良かったのかにゃ? 不思議だにゃ……普通は魔物と合成なんてありえないのにゃ……けど……』


 ふわっとファディスの頭から飛んで、くるりくるりとカレンを観察するサラは、眉間にシワがよってる。


「短命だとしても、カレンとルノンは生きてる」

「えぇ。ルノンさんは目的のため、カレンさんたちはお互いのことを思って生きてるんだわ」


 ピタリとカレンの前で止まって、サラは頷く。


『にゃるほどにゃー。強く激しい思いが不自然を自然なモノにしたんだにゃん』

「うん! ボクたちと何も変わらないんだよ」

【ウレシイ。アリガト】


 もうすぐ命が消えてしまうんじゃないかと思うくらいに弱々しいけど、喜びをボクたちに伝えようとカレンは必死に手足をパタパタさせる。


『んにゃー。サラちゃん的には、カレンちゃんにもう少し頑張って欲しいにゃん』


 サラもカレンの死が近づいていることに気がついてしまっているようで、カレンの前にちょこんと座って『どうしようかにゃ……』などと、つぶやく。


【ポク、アト、イチネン、クライ、イキラレル】


 悩むサラに、カレンが自分はまだまだ元気だと走ってみせるけど、やっぱり足元がヨロヨロしててボクも心配になってしまう。


『カレンちゃんたちを今、失うのはマズイのにゃ……』

「異変を加速させるからか?」


 ファディスの問いかけに、サラはうなずき視線を地面に落とす。


『これ以上、世界に綻びが広がったら取り返しがつかないにゃん』

「……オレたちに出来ることはないか?」

『もちろんあるにゃ! メディセーラの王都の様子を見てきてほしいにゃ』

「お前たち精霊はオレたちを見てたんだろ? ならわざわざ見に行く必要ないんじゃないか?」


 ファディスの質問に、サラは『チッチッチッ』と指を振り、そして。


『水鏡で見るだけじゃ分からないこともあるんだにゃん』

「なるほどな……。たしかに実際に見た方がいい事もあるかもしれないな」

『うん! うん! しっかり見てくるにゃ。んでもって、あとでサラちゃんたちにお知らせするにゃ』

「お知らせって、サラはボクたちと一緒に行かないの?」

『サラちゃんはルフトラーガに戻って、ディーネちゃんにカレンちゃんたちのこと頼んでみるにゃ!』

【ポク、ノ、コト?】

『うん! うん! ディーネちゃんは、ハイポーションの湧き出る湖の管理者なのにゃ。だからカレンちゃんたちを、なんとかできるかもなのにゃ!』


 飛び上がって、くるんと宙返りしてサラはVサインをする。


【ポク、ト、カレン、タクサン、ノ、ジカン、イキラレル、カ?】

『断言はできないにゃ。でもディーネちゃんに任せてみて欲しいにゃん』

【ワカタ。タノム】


 ほんの少しの希望に、カレンは朽ち果てて骨が見えてしまってる尻尾をゆらめかせ喜ぶ。けど体力がなくて、すぐにうずくまってしまった。サアヤが心配そうにカレンの体を撫でる。


「サラさん帰ってしまうのね。もっと色々お話しがしたかったわ」

『すぐに会えるにゃ! 王都に行ってからサラちゃんたちのお家に来ると良いにゃん』

「あの浮かんでるルフトラーガに行ってもいいの?」

『うん! うん! 大歓迎にゃ!」

「しかし問題はどうやって行くかだな」

「そうよね」

「空だもんね」


 もしかしたら爺ちゃんのスキルを組み合わせれば、なんとかなるかもしれないけど、サアヤとファディスを乗せて飛べるかが不安なんだよね。まだ一度も飛んだことないからね。


『それなら大丈夫にゃ。行き方を教えるにゃん』


 ふわっと地面に降りて、サラは木の棒を両手で握ると地面にガリガリと世界地図を描く。


『サラちゃんたちは、大陸以外の小さな島を星々って呼んでるんだけど、二つの大陸のちょうど真ん中辺りヒルとヨルの境界線にある島フィーネから行けるにゃ』


 大きな大陸と大陸の間に、サラは小さな丸印をつける。


『この辺かにゃ? そいでフィーネの南の岬、日が沈む一瞬の刻にだけ、光の扉が開くにゃん。輝く道をたどると天空ダンジョン、イフェルに行くことができるのにゃ』

「海の真ん中か。まぁ、船をモリスに頼めば行けそうだな」

「ダンジョンは魔物がいるのかしら?」

「危険があってもボクが守るよ!」

『心配ないにゃ。イフェルは妖精やエルフが産まれる聖なるダンジョンにゃん。守護精霊シルフィちゃんの許しがあれば誰でも通れるにゃ』


 あれ? ルフトラーガには四人しかいないって言ってたよね? 産まれるってどういうこと? 


「もしかしてルフトラーガに住んでるのってサラたちだけじゃないの?」


 不思議そうにするボクたちに、サラはニコッと微笑みピョンと飛んでファディスの頭に座る。

 

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