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十七話、雪遊びをしよう 


「見て! ニャーさん、野菜たちが土に戻ったみたいだわ」

「飛んだり跳ねたりしてないね!」

【サアヤ、ト、ニャー、ガ、ワレ、ヲ、タスケタ、ダカラ、ダンジョン、モトニ、モドッタ】


 カレンが正気になったおかげでダンジョンが、いつも通りの姿を取り戻して静かになったって事みたい。大事件とかにならなくて本当に良かった。


「カレンも大丈夫そうだし、次はどこ行こっか?」

「やっぱり王都に早く行ってみたいわ」

「どんな街かな?」

「とても大きな街だそうよ。あとピネお姉さまが美しくて住みやすいと言ってたわ」

「わぁ! 楽しみだなぁ!」


 ボクたちがこれからの事を話していると、カレンがサアヤの手のひらからピョンと飛び降りてボクたちを見上げ、そして。


【キヨラカ、デ、ヤサシイ、ナカマ、タチ。タノミ、キイテ、タスケテ、ホシイ】

 

 カレンの朽ちかけた赤い目玉から涙がポロポロ落ちていく。


「どうしたの?」

「ボクたちに出来ることなら何でも言ってよ」

【ワレノ、キョウダイ、ガ、イル。カイ、ノ、ダンジョン、スクッテ、ホシイ】

「カイのダンジョン? 何処にあるの?」

【オウト、ノ、ミナト、ノ、チカク】

「王都の近くなら行ってみよ! サアヤ」

「そうね。カレンさんのご兄弟が心配だものね」

【アリガト、タノム】


 切羽詰まった様子のカレンの頼みを放っておけない。サアヤも同じ気持ちみたいで、ボクの手を握って「今すぐ行きましょう」と、気合いを入れた。


『じゃあぁ〜。あちしはぁ〜、一度ぉ〜ルフトラーガにぃ〜戻るぅ〜』

「グノーまたね!」

「ぜったいルフトラーガに遊びに行くわね」

『待ってるぅ〜! じゃねぇ〜』


 カレンと別れてミノのダンジョンから出ると、グノーがボクの胸元からふわっと羽ばたき空に転移魔法陣を描く。するとグノーは金の光をふりまき空気に溶けるようにして消えてしまった。


「帰っちゃったね」

「少しさみしいわね」

「うん。でも、またぜったい会えるよ」

「そうね」


 野菜がおとなしくなったからなのか、ダンジョン前に集まっていた人間たちもいなくなっていた。日が沈みヒューヒューと冷たい風が吹く。


「焚き火、なくなってるね」

「ちょっと寒いわね。コート着るから待っててくれるかしら?」

「分かった」

 

 体をブルリと震わせ、吐く息も白い。サアヤは、鞄からコートとマフラーと手袋を出して身につけた。


「おまたせ。ね! 今日はここで野宿するのはどうかしら?」

「うん! 焚き火の跡もあるから、そのまま使えそうだからね」


 踊る野菜見物に来てた人間たちが、集めた小枝や枯れ草が一ヶ所に集められ放置されたままになってる。運良くまだ湿ってない。そこへ火打石を、カチカチと音を立ててサアヤが炎を灯す。


「雪、少しだけつもったわね」

「もっとたくさん降って欲しかったなぁ!」

「そうね。焚き火の周りは溶けはじめてしまってるものね」

「また降るかな?」

「この辺りの冬は長いから、きっと降ると思うわ」

「そっか」

「そのときは雪遊びしましょう」

「うん。遊ぶ」


 残った枯れ草の上に毛皮を何枚も重ねて敷いて寝床を作ると、その上に座ってサアヤと身をよせあい毛布にくるまる。


「カレンさんに貰ったじゃがいもと、干し肉でスープを作ってみたわ」

「ダンジョンから出ても、カレンのじゃがいもは枯れなかったんだね」

「カレンさんがスキルを使って作った野菜は持ちだせるそうなの。しかも疲労回復効果もあるんですって! 実はミノのダンジョンの特産品なんだそうよ」

「さすがダンジョンボスだね」

「ふふふ! ボスは強いだけじゃないのね」

「守ったり戦ったりだけじゃなくて野菜作ったりとか色々出来るんだね」


 サアヤが、焚き火で温めたスープを木製のお椀についで渡してくれた。焚き火の暖かさと手のひらに伝わるスープの温かさで、冷えきった体がじんわりあたたまってくる。


「さぁ。食べましょう」

「うん」


 スプーンでじゃがいもをすくって食べようとした、その時。


「おい! 精霊はどうした?」


 暗闇が広がる草むらからファディスが飛び出してきた。なぜか何かを食べようとしてる時に限ってファディスは現れる。


「……もしかファディスって、お腹空いてるの?」

「腹は減ってない。そんなことより精霊を出せ!」

「いないよ」

「隠してないだろうな?」

「精霊さんはお家に帰ったわ」


 サアヤの言葉に衝撃を受けたのか、ファディスばヨロヨロとよろめき座りこんでしまった。


「……帰っただと!?」

「うん。さっきルフトラーガに帰ったよ」

 

 辺りの草をブチブチ引っこ抜いては放り投げ「クソ! 一体どうすりゃいいんだ!」と、ファディスが大声で叫ぶ。


「なにか困ったことがあるのかしら?」

「お前らには関係ない」


 ファディスは立ち上がってボクたちを睨んでから、暗闇が広がる草むらに消えていってしまった。


「事情があるみたいね」

「うん。精霊の力が必要なのかな?」

「そうかもしれないわね」

「ボクたちに出来ることがあればいいんだけど……」

「えぇ……。そうね。力になれたらいいわね」


 乱暴な雰囲気と態度だけど、なんだか苦しそうにみえるファディス。目的は分からないけど、精霊を狙っている”何者か”と同じように精霊の力を必要だと言う。


 ファディスのことは気がかりだけど、アツアツスープを食べた後は、毛布の中でサアヤと抱き合うようにして眠った。


「ニャーさん、起きて! 雪よ」

「いっぱい雪、つもってる」

「真っ白だわ」

「すっごいねー!」


 起き上がると辺りは真っ白な雪がつもってた。空気もキンと冷えきってる。けど焚き火はまだ小さな炎と煙を立ち昇らせて、ボクたちのいる場所の雪を円形に溶かしてる。


「おはようニャーさん、よく眠れたかしら?」

「おはよサアヤ。一緒に寝てくれたから暖かくて、ぐっすり眠れたよ。サアヤは初めての野宿、眠れた?」

「ニャーさんがとても暖かかったから、ぐっすり眠れて元気いっぱいよ」

「良かった!」


 ボクは体温を上げたり下げたり自由自在だから、サアヤを暖めることができて嬉しい。


「それでね。ニャーさんと雪遊びしたいと思ったの」

「やりたい!」

「ふふふ! それじゃあ早速遊んじゃいましょう!」

「遊んじゃいましょー!」


 周囲に人間がいないことを確認すると、ボクは猫スケルトンに変幻した。そして毛布からピョンと飛び出て頭から雪につっこんだ。


「冷たーい! 柔らか!」

「ふふふ! 雪にニャーさんの形が出来てるわ!」


 もう一度ピョンと跳ねて、後ろを振り向くと雪が押しつぶされて、ボクがもう一人いるみたいになっていた。


「私もやってみるわね」


 サアヤが柔らかな雪に大の字に倒れこんでから、ゆっくり起き上がる。


「わぁ! サアヤがもう一人いる!」

「ふふふ! 人型と猫型ね。私たちと一緒で仲良く並んでるわ」

「本当だ!」


 歩くたびに足跡が二人分、サアヤの靴跡とボクの骨の足跡。ポツポツまるで雪に散らばる花みたいで面白い。


「見て! ニャーさんを作ってみたの」


 サアヤが雪を固めて手のひらほどの真っ白な猫を作った。目は木の実、手足は枯れ木、少しゆがんでるけどボクそっくりだ。


「わぁ! 可愛い! ありがと! ボクもサアヤを作る!」


 人型に変幻すると、雪をかきあつめてペタペタポンポンと固めて、頭を丸く、体は三角、目は木の実で手足も枯れ木で作ってみた。


「サアヤ、どうかな?」

「まぁ! とても可愛らしいわ。ありがとうニャーさん」


 岩の上に、サアヤとボクの雪人形を並べる。サアヤの雪人形の方が少しだけ大きい。そんなところもボクたちそっくりだ。


「見て!」


 サアヤが両手で雪を、すくってフワッと空に向かって投げる。すると朝日で雪の粒がキラキラ輝きながら、風に飛ばされていく。


「綺麗だね」

「えぇ。本当に美しいわね」


お読みいただきありがとうございます。

ブクマと☆とイイネ、とても嬉しいです。感謝いっぱいです。


次回からは毎週金曜日の昼に更新予定です。


まだまだニャーさんの旅は続きます。最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。

ゆっくり更新になってしまいますが応援、どうかよろしくお願いします。

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