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極夜物語  作者: 昆布
第6節 覇王
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余談:戦後の結婚ラッシュについて


 ガイウス平定、そして即位から2ヶ月が経過し、年を越して王国暦207年になった。


 ジークによる親政が軌道に乗りはじめしばらくした頃。


「……よし、頃合いだな」

「陛下?」


 レイモンドは、そう言って玉座を立ち上がった国王ジークを見た。


「メリアさんと結婚式を挙げよう」


 レイモンドは、卒倒した。


 ………………


 1月某日。


 王都の王宮にて、ジークとメリアの結婚式が行われた。


 進行役は聖職者――ではない。


 ジグラトは一神教ではなく、多神教である。

 そのため、レーベル半島出身のジークとノーザンブルク出身のメリアでは信仰する神は違うし、参列者と信仰で揉めても面倒だからである。


 進行役に抜擢されたのは、ファブニル公ヴェルト・イェリントン。

 若い頃からジークとメリアの双方と親しく、そもそも2人が親しくなったきっかけも彼だからである。


 ……しかし、ヴェルトが王宮に参内したのは、ジークフリート治世下ではこれが最後になる。

 ヴェルトの軍事的才能を恐れたジークフリートは、彼をファブニルに閉じ込め、冷遇するようになるのである。


 もっとも、彼自身も右手を失った自分が王都でやれる仕事はないと割り切っていたため、ジークフリートの恐れたヴェルトの反乱が起こることはない。


 彼が次に王都に召喚されるのは、ジークフリート崩御後の王国暦213年に勃発した「ユリシーズの乱」の際である。


 ……さて、少々脱線した。

 話を結婚式に戻そう。


 参列者は以下の通りである。


 ――アリエス辺境伯ディアス・トンプソン。


 ――男爵ケリー・ヘラー。


 ――トイル侯シュナイダー・ベルモンド。


 ――ラズ伯ドーン・ヒューストン。


 ――子爵ライト・アイゼンブルク。


 ――男爵ジンジャー・コリント。


 ――ニブル公ルキウス・サンドブルク。


 ――侯爵カルロス・サンドブルク。


 ――子爵エリー・サンドブルク。


 ――クレオス侯ルイ・グッゲンハイム。


 そして、ロンディニウムからアゾレス公爵家当主であるマルクス・アゾレスと、その令嬢ヴァレリアが参列している。


 この他にも数百名を越える人物が招聘に応じて結婚式に参列したので、王宮の大広間は溢れ返っている。


 そんな中で、ヴェルトが半ば叫ぶように言う。


「はい、皆さん揃いましたね!

 それじゃ挙行しますよ!」


 と、ヴェルトの合図で喇叭が鳴り響き、楽器の音と共に、入り口から新郎ジークと、新婦メリアが手を繋いで歩いてきた。


 ジークの側には子爵サイラス・ハミルトンが控えている。

 メリアの側には この婚礼でジークの義弟になる、北城(ノーザンブルク)伯レイモンド・ウッドヘルムが控えている。


 2人はそのまま歩いてゆき、最奥の神官の前まで歩いてきた。


「――汝、ジークフリート・ジグラト・アテーネは、メリア・ウッドヘルムを妻とするか」


「はい」


「――汝、メリア・ウッドヘルムは、ジークフリート・ジグラト・アテーネを夫とするか」


「はい」


 神官は、それを聞いて微笑んだ。


「ならばこの指輪をお互いの指に嵌めなさい」


「はい」


 そうして、お互いの左手の薬指に、金の指輪が嵌められた。

 

「――これをもって、あなたたちは晴れて夫婦(めおと)となりました。

 あなたたちに、女神(ヘラ)の加護のあらんことを」


 大広間に、万雷の喝采が響く。

 ヴェルトやレイモンドは、感極まって泣いている。


「レイモンド、泣くなよ。」

「これが泣かずにいられるか!

 姉さんが、姉さんが結婚したんだ!」


 と、そんなレイモンドのところに、エリーがやってきた。


「義姉上が結婚したぐらいで大袈裟ですわね、レイモンド」

「いや、そりゃあ――」


 と言って、レイモンドはあれ?と首をかしげた。

 

「……あのエリーさん、なんかさっき変な感じがしたから、もう一回言ってくれるかな」

「は?

 だから義姉上が結婚したぐらいで――」

「うわあああ助けてくれディアス!」


 レイモンドはディアスに抱きついた。

 

「どうしたよレイモンド」

「でででディアス、なんか、なんかエリーさんが変だ!

 俺たち結婚してないのに姉さんのことを義姉上って言ってるよ!」


 エリーは逆に怪訝な顔をしている。


「なんで俺がおかしいみたいな反応してるんだよ!

 異常なのはあなたでしょうが!」

「……?

 何を言ってるのかしら、レイモンド。

 義姉上に遠慮して挙式してなかっただけでしょう?

 来月には私たちも結婚しますわよ」

「……………………は?

 いや待ってくれそんなのはおかしいよディアス助けてくれ」

 

 しかし、ディアスはレイモンドから目を逸らす。


「レイモンド……がんばれ」


 レイモンドは、膝から崩れ落ちた。

 

 この翌月、レイモンドとエリーは結婚式を挙げた。

 両者の同意はともかく、貴族勢力を味方に引き入れたことで、アテーネ朝は政権運営をスムーズに進めることができるようになったのである。



「さて、俺もそろそろ退散するとするか――」


 と、誰かから逃げるように歩くディアスだったが、不意に後ろから肩を掴まれた。


「どこ行くの、ディアス」

「け、ケリー……

 いやちょっと手洗いにな……」

「そうだ、ちょうどいい機会だから、私たちも結婚しましょう」

「急に?!」

「ええ、今急に思い付いたのよね。

 私、ディアスじゃないと結婚したくないなあ、って」

「ちょっと待ってくれケリーさん」

「逃がさないわよ」


 ケリーは、狩人の目をしていた。


 ――2ヶ月後、ディアスとケリーは結婚する。


 ディアスにしろレイモンドにしろ、夫婦としての主導権がどちらに握られてしまったのかは、言うまでもない。


 ――そんな様子を、ライトとジンジャーは微笑ましく見ていた。


「結婚って、いいものですね、ライト卿」

「そうだな――」


 もちろん、彼らも3ヶ月後に結婚する。


 彼らファブニルゆかりのものはヴェルトやディアスら武闘派と結びつき、ハボック戦役において大きく活躍することになる。




 






 

 ――そして、このジークフリート治世1年目に結婚したのは、彼らだけではない。

 遠くファブニルでも、とある2人がひっそりと結婚式を挙げたのであった――

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