表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極夜物語  作者: 昆布
第6節 覇王
91/93

僭王(タイラント)


 ――さて。


「英雄」ジークフリートの物語は、ここで終わり。


 ここから先は、血にまみれた「僭王」ジークフリート・ジグラト・アテーネの物語である。


 ………………


 王国暦206年、11月25日。

 

 サンドブルクでの決戦から約半月かけ、南部のガイウス残党を平定したグングニルの軍勢は、ようやく王都レーベンに凱旋した。


 民衆から歓待を受けたグングニルの軍勢は、そのまま王宮へと向かう。


 そして王宮を制圧し、隠れていた幼王リチャードを見つけ出して強引に禅譲を迫った。

 リチャードは拒否できるはずもなく、ジークフリートに王冠を明け渡した。


 こうして、約200年続いたジグラト王朝は滅亡し、ジークフリート・ジグラト・アテーネによるアテーネ王朝が始まるのであった――


 ………………


 ――戴冠式のあと、王宮の端っこでヴェルトとレイモンドが話していた。


「……終わったな、すべてが」

「終わりましたね、伍長」


 ヴェルトは、寂しそうな顔をしている。

 

「伍長、どうしたんですか、浮かない顔をして」


 レイモンドが訊くと、ヴェルトは薄ら笑いを浮かべて言った。

 

「俺は王都にはもういられないだろう」

「それはどうして――」

「……俺は、ジークの邪魔になるだろうからな」


 それだけ言って、ヴェルトは閉口する。

 レイモンドも、それ以上は聞かなかった。



 ――ヴェルト・イェリントン。


 ファブニル公に封じられる。

 ジークフリートの冷遇を受けるが、ファブニルの復興を成し遂げる。

 8年後、運命と再会する。



 

 ――レイモンド・ウッドヘルム。


 姉の結婚によりジークフリートの義弟となる。

 ノーザンブルク伯に封じられ、禁軍の指揮も担当した。

 のちにエリー・サンドブルクと結婚する。

 


 ………………


 ――王宮の廊下にて、ディアスとケリー、ライトとジンジャーが話していた。


「もう、戦はできなくなるのか。

 寂しくなるな、ライト将軍」

「ディアス殿、戦は出来ずとも手合わせはいつでも出来ます。

 また稽古しましょう」

「あたぼうよ!」


 と、ディアスとライトは笑う。



 ――ディアス・トンプソン。


 アリエス辺境伯に封じられる。

 ハボック戦役において戦死する。



 ――ケリー・ヘラー。


 ディアスと結婚する。

 213年のユリシーズの乱において戦死する。



 ――ライト・アイゼンブルク。


 子爵に封じられる。

 同じくハボック戦役において戦死する。



 ――ジンジャー・コリント。


 ライトと結婚し、子爵夫人となる。

 ハボック戦役を生き抜き、のちに「アテーネ記」編纂に携わる。



 ………………


 そして、玉座でジークフリートと、ロバートと、サイラスが話している。


「大事なのはここからだぞ、ジーク」

「わかっている。

 ジグラト王国が弱体化したのは貴族の力が強すぎたからだ。

 なんとしても、中央集権体制を確立させなくては――」

「……」

 


 ――サイラス・ハミルトン。


 子爵に封じられる。

 ハボック戦役において戦死する。



 ――ロバート・アダムス。


 オルギン伯と治部省長官を兼ねる。

 しかし、彼自身の政策への参画は統一以降ほとんど無くなる。



 ――ジークフリート・ジグラト・アテーネ。


 アテーネ朝初代国王。高祖。

 6年後、30歳にて崩御する。



 ――「アテーネ記」より――

 

 ………………


 ……蛇足ではあるが、ジークフリートのその後について語ろう。


 ジークフリートは、即位してから崩御するまで、中央集権体制――もとい独裁体制――を完成させることに腐心した。


 彼としては、戦乱の原因は貴族の専横と権力の拡大にあると考えていた。

 その轍を踏まぬために、再び戦乱を起こさぬために、王の権力の拡大を図ったのである。


 しかし、その悲願の実現には、険しい道のりが待っていた。


 ジークフリートの半ば強引かつ連発した軍事行動によって戦費は途方もないことになっていた。

 

 アテーネ朝は建国した時点で多額の負債を抱えていたのである。

 

 そして、その代償は民たちに回ってきた。


 ――更なる課税である。

 

 これによって戦乱で人口が減少した地域でも重税が課せられ、人民は貧困に苦しんだ。

 彼らの中で、ジークフリートへの不信感が募りはじめる。

 

 そうして民たちにも政権への不満が浸透してきたため、ジークフリートは大弾圧を敢行した。


 ――粛清の名を借りた虐殺、言論の統制、焚書である。


 政権に批判的な者は貴族であれ騎士であれ、もちろん民も、粛清された。

 グングニル三番隊副隊長を務めていたドーン・ヒューストンも、ジークフリートに批判的だったために粛清された。

 

 この大弾圧の犠牲者は数万人に膨れ上がり、いよいよ貴族らや民衆の反感は高まっていった。


 しかし、ジークフリートには力で押さえつける以外の方法がわからなかった。

 彼自身、その圧倒的な戦略のセンス、圧倒的な武力で敵対する人々を打倒していき、押さえつけ、自由を奪って仮初めの平和を手に入れたからである。


 やがて、人々はジークフリートをこう呼ぶようになった。


 ――"僭王"――


 統治6年目になる王国暦212年の段階で辺境のガイウスやファブニルでは農民反乱の兆しが見えはじめ、貴族たちの動きも怪しくなってきた。


 そんな中で、ジークフリートが急死した。


 "統一戦争"の開始からちょうど10年。

 ジークフリート30歳のことであった。


 




 

 ――極夜は、未だ明けないらしい――





 

 


 ――オールト叙事詩

 ――"僭王(タイラント)の章"より――

これにて、「極夜物語」は完結になります。

ここまで読んでくださった皆さまには感謝してもしきれません。


さて、読んでいただいたら気がつくと思いますが、この物語には続編があります。

もう構想、ストーリーも考えています。

というか考え出したのは「極夜物語」よりそちらの方が先です。

しかしながら現在の私の拙い文章力ではその物語は書ききれないと思う次第なので、作品制作はしばらく凍結します。


また、自分に自信が出てきたら書き始めようと思いますので、書き始めたらまた応援をお願いします。


結びに、今一度ここまで読んでいただいた皆さまに感謝を申し上げます。

それではまたいつか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ