ジグラト地理誌 第4章「貴族」
――王国暦107年のファブニルの乱以降、中央集権的な王の力は弱まり、それに代わって貴族たちが政治の中核となっていった。
その中で、特に絶大な権勢を誇ったのは、五つの貴族家。
すなわち、サンドブルグ家、グッゲンハイム家、アゾレス家、ウッドヘルム家、ダルトン家である。
サンドブルグはオルギン地方を治めている、ジグラト最大の貴族。
それに続くグッゲンハイムはレーベン半島、アゾレス家はトイル一帯、ウッドヘルム家はノーザンブルグ一帯、ダルトン家は南部ロンディニウムをそれぞれ治めていた。
しかし、141年にグッゲンハイムによる半ば強引なレーベン半島への遷都計画に反対する形でウッドヘルム家とダルトン家はそれぞれ私兵をレーベン半島へ派遣。
ここでグッゲンハイムの軍と衝突し、敗れた。
この一連の紛争により反対勢力の中核だったウッドヘルムとダルトンの2つの貴族を一掃する機会を得たグッゲンハイムは2つの貴族を徹底的に粛清して排除。
これにより、ウッドヘルム家は没落。
ダルトン家はかろうじて生き残っていた者が反対派と結託して水都で蜂起した。
一方でアゾレス家はこの「レーベン事変」をきっかけに国政に深く関わるのをやめてトイルで貿易業に専念するようになった。
………………
そして、ラズ紛争以降、武器商人の出身であるサイモン一族が急激に力を伸ばした。
軍需物資が大きく黒字に転じ、富の力で権勢を誇るようになったのだ。
サイモン一族はその莫大な富の力を使って貴族院に入り、今では大貴族に数えられるほどになった。
しかし、彼らは王国に敵対するガイウスやファブニルらに武器を売りさばき儲けを得ており、サイモン家は戦争の長期化を特に望む勢力の中核となっていた――
そして、戦争を望むのはサイモン一族だけではない。
貴族たちとしては、この大戦乱がどのように終わるにしても、戦後に武家が政治の主導権を握るのは避けたかった。
そのため、彼らは英雄を誕生させないように画策しているのである――
――ベル・ブラウン著「アーレス記」より――




