表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/73

草原で

 ベラートさんと別れた俺は、アメル達と合流した。買っていたのは、サンドイッチと串焼きだった。


「あれ? もっと買っても良かったのに」


 先に行ってもらう時、アメル自身もお金は持っているが、俺からも渡しておいた。色々買っても、お釣りが来る程度には渡したつもりだったんだけど。


「えっと、カイルさんとライムちゃんが食べたって言っていたので、私も食べてみたくなって……駄目、でしたか?」


「いや、大丈夫だよ。外で食べるなら、持ちやすいしね」


 やってきたのは草原。こちらから何かしない限り、大人しい生物ばかりなので、外で何か食べようかって話になった時、真っ先に候補に上がった場所だ。


「きもちいいねー!」


「天気も良いもんね」


 今日は快晴だ。そよ風も吹いており心地良い。外で食べるには絶好の機会だ。


「この辺にするか」


 草原の、見晴らしがいい場所に腰をおろす。アメルも隣に座った。


「そういえばカイルさん。ベラートさん、で良いですよね? 大丈夫でしたか?」


「あの人は、人を強さで判断するタイプの方だったんだけど、どうやら認められたみたいでね。一緒に南に行かないか? って誘われたんだ。断ったけどね」


「南、ですか?」


 アメルは不思議そうに尋ねる。


「そう。ジェシカさん、それにベラートさんも同じ事を言ってたんだけど、強さを求める人は南へ。安定を求めるなら、騎士団かギルド本部へ入る人が多いんだって」


「そうなんですね。でも、行く選択肢も、あったかなと思いますけど……」


 行く資格がある。アメルはそう言ってくれているようだ、単純に嬉しいな。


「そうだな……一番大きな理由は、皆で一緒に強くなりたかったからかな」


「皆で?」


「うん。俺とライム、そしてアメル。皆で、これからも冒険したいからね」


「……っ! 私、今よりもっと強くなります!」


「そんなに気を張らなくても大丈夫だよ。一歩ずつ強くなろう」


「は、はい」


「ほら、折角買ってきてくれたんだ、食べよう。アメルは何にする?」


「じゃあ、サンドイッチをいただきます」


「俺もサンドイッチ」


「じゃあぼくは、くしやきー!」


 皆で食べ始める。食べながら、ここまでの道のりを思い返す。



 ーー冒険者をやってみませんか。


 ギルドからの手紙で、俺は冒険者になった。そう、俺は冒険したいんだ。強くならなくてもいい、といえば嘘になるけど。


 入り口しか見ていないダンジョンの中層、そして、殆どの人が踏み入れた事のない下層。Dランク以上の依頼等々、セバンタートでやれることは、まだまだある。どれも、体験したことのないものばかりだ。


 南に行くとして、それらを体験してからでも遅くない。そう決断し、ベラートさんの誘いを断った。



 ーーライムが従魔になってくれてから、俺の生活が一変したのも、大きな出来事の一つだ。


 戦闘向きかと問われると、ライム自身の能力は戦闘向きだと答える。これは間違いない。


 でも、出来るならライムとは、楽しいことを中心に、一緒にしていきたいなと思っている。


 従魔と言っても、ライムは友達だ。友達をこき使うのは、なんか違う気がするしね。



 ーーアメルは、冒険者になってからそこそこ経つ。


 本人から聞いたことは無いけど、実際どうなんだろう?


「アメルはさ」


「ふぁい?」


 アメルは、サンドイッチを頬張りながら返事をしてきた。顔を真っ赤にして、慌てて口に入れたサンドイッチを飲み込む。


「あぁ、急がせる気はないんだ。ごめん」


「い、いえ。気にしないでください……それで、どうしました?」


「アメルはさ、冒険者になって、良かった?」


 本当は、セバンタート内で生活することも出来た。冒険者は危険な稼業だ。収入も安定しない。だけど彼女は、冒険者になることを選んだ。賊だったり、オーガの一件もあったから、嫌になってないかと思って尋ねてみた。


 この質問に、アメルはキョトンとして、少し考える仕草を見せる。やがて口を開いた。


「そう、ですね……今までの生活と何もかも違うので、初めは、付いていくので精一杯でした。けど今は、楽しいですし、冒険者になって良かったなと、思ってます」


「そっか」


「それこそ、今こうして陽の光を浴びれているのは、本当に嬉しいんです。カイルさん、改めて私を助けて下さって、本当にありがとうございます」


「ううん、いいんだ」


 お辞儀をしてくれるアメル。安心した。冒険者になったことを、後悔してはいないようだ。


 地下で軟禁、あれはもう監禁か。されていたアメルは、身体もやせ細っていたし、表情は暗く、発言も周りを気遣って、最低限しかしていなかったと思う。


 今は、身体も以前より健康体になっている様だし、よく笑ってくれる。自身から発言してくれることも増えた。良い変化だと思う。


「ライムには伝えたんだけど、アメル。これからもよろしくね」


「は、はい! こちらこそよろしくお願いします!」


 二人で挨拶を交わす。自然と笑みがこぼれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ