草原で
ベラートさんと別れた俺は、アメル達と合流した。買っていたのは、サンドイッチと串焼きだった。
「あれ? もっと買っても良かったのに」
先に行ってもらう時、アメル自身もお金は持っているが、俺からも渡しておいた。色々買っても、お釣りが来る程度には渡したつもりだったんだけど。
「えっと、カイルさんとライムちゃんが食べたって言っていたので、私も食べてみたくなって……駄目、でしたか?」
「いや、大丈夫だよ。外で食べるなら、持ちやすいしね」
やってきたのは草原。こちらから何かしない限り、大人しい生物ばかりなので、外で何か食べようかって話になった時、真っ先に候補に上がった場所だ。
「きもちいいねー!」
「天気も良いもんね」
今日は快晴だ。そよ風も吹いており心地良い。外で食べるには絶好の機会だ。
「この辺にするか」
草原の、見晴らしがいい場所に腰をおろす。アメルも隣に座った。
「そういえばカイルさん。ベラートさん、で良いですよね? 大丈夫でしたか?」
「あの人は、人を強さで判断するタイプの方だったんだけど、どうやら認められたみたいでね。一緒に南に行かないか? って誘われたんだ。断ったけどね」
「南、ですか?」
アメルは不思議そうに尋ねる。
「そう。ジェシカさん、それにベラートさんも同じ事を言ってたんだけど、強さを求める人は南へ。安定を求めるなら、騎士団かギルド本部へ入る人が多いんだって」
「そうなんですね。でも、行く選択肢も、あったかなと思いますけど……」
行く資格がある。アメルはそう言ってくれているようだ、単純に嬉しいな。
「そうだな……一番大きな理由は、皆で一緒に強くなりたかったからかな」
「皆で?」
「うん。俺とライム、そしてアメル。皆で、これからも冒険したいからね」
「……っ! 私、今よりもっと強くなります!」
「そんなに気を張らなくても大丈夫だよ。一歩ずつ強くなろう」
「は、はい」
「ほら、折角買ってきてくれたんだ、食べよう。アメルは何にする?」
「じゃあ、サンドイッチをいただきます」
「俺もサンドイッチ」
「じゃあぼくは、くしやきー!」
皆で食べ始める。食べながら、ここまでの道のりを思い返す。
ーー冒険者をやってみませんか。
ギルドからの手紙で、俺は冒険者になった。そう、俺は冒険したいんだ。強くならなくてもいい、といえば嘘になるけど。
入り口しか見ていないダンジョンの中層、そして、殆どの人が踏み入れた事のない下層。Dランク以上の依頼等々、セバンタートでやれることは、まだまだある。どれも、体験したことのないものばかりだ。
南に行くとして、それらを体験してからでも遅くない。そう決断し、ベラートさんの誘いを断った。
ーーライムが従魔になってくれてから、俺の生活が一変したのも、大きな出来事の一つだ。
戦闘向きかと問われると、ライム自身の能力は戦闘向きだと答える。これは間違いない。
でも、出来るならライムとは、楽しいことを中心に、一緒にしていきたいなと思っている。
従魔と言っても、ライムは友達だ。友達をこき使うのは、なんか違う気がするしね。
ーーアメルは、冒険者になってからそこそこ経つ。
本人から聞いたことは無いけど、実際どうなんだろう?
「アメルはさ」
「ふぁい?」
アメルは、サンドイッチを頬張りながら返事をしてきた。顔を真っ赤にして、慌てて口に入れたサンドイッチを飲み込む。
「あぁ、急がせる気はないんだ。ごめん」
「い、いえ。気にしないでください……それで、どうしました?」
「アメルはさ、冒険者になって、良かった?」
本当は、セバンタート内で生活することも出来た。冒険者は危険な稼業だ。収入も安定しない。だけど彼女は、冒険者になることを選んだ。賊だったり、オーガの一件もあったから、嫌になってないかと思って尋ねてみた。
この質問に、アメルはキョトンとして、少し考える仕草を見せる。やがて口を開いた。
「そう、ですね……今までの生活と何もかも違うので、初めは、付いていくので精一杯でした。けど今は、楽しいですし、冒険者になって良かったなと、思ってます」
「そっか」
「それこそ、今こうして陽の光を浴びれているのは、本当に嬉しいんです。カイルさん、改めて私を助けて下さって、本当にありがとうございます」
「ううん、いいんだ」
お辞儀をしてくれるアメル。安心した。冒険者になったことを、後悔してはいないようだ。
地下で軟禁、あれはもう監禁か。されていたアメルは、身体もやせ細っていたし、表情は暗く、発言も周りを気遣って、最低限しかしていなかったと思う。
今は、身体も以前より健康体になっている様だし、よく笑ってくれる。自身から発言してくれることも増えた。良い変化だと思う。
「ライムには伝えたんだけど、アメル。これからもよろしくね」
「は、はい! こちらこそよろしくお願いします!」
二人で挨拶を交わす。自然と笑みがこぼれた。




