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ベラート

「すまんな、急に」


「いえ、それは大丈夫です」


 アメルとライムには、先に行ってもらい、食べ物の調達をお願いした。


 アメルは気にしていたが、大丈夫と伝えると頷き、この場を後にしてくれた。


 付いてきてくれ、とベラートさんに促されて、ギルドから少し離れた人気のない場所にやってきた。


 それにしても、ベラートさんと二人で話すなんて今まで無かったぞ。何から話したものかと思案していた所に、ベラートさんから話し掛けてきてくれた。


「それにしても……称号持ち、か。儂とカイルで、随分と差が開いてしまったな」


「そんなことはないですよ。倒せたのだって、従魔であるライムと、アメル達がいてこそでしたから」


「従魔であったとしても、それは使役している【従魔士】であるお前の力に相違ない」


 そう言って、ベラートさんは、俺に頭を下げてきた。


「詫びる。テイム出来たとしても、このパーティーの中で最弱だ、と言ったあの日の言葉。カイル、お前は今は無き、オルサフォルムの誰よりも強い。当然、儂よりもだ」


「あ、頭を上げてください! 謝って欲しくて強くなったわけでは無いですから」


 ベラートさんは、ゆっくりと頭を上げ、真剣な表情で俺を見ながら話し始める。


「儂は自分自身の、個人の力に溺れていたのかもしれない。それこそ、狂戦士化を使えばどうとでもなる、と。ダンジョンで窮地に陥ったのがいい例だ。あれは、仲間を頼らず自身の力だけで切り抜けようとした、儂のミスだった」


「……確かに、メンバーと密に連携を取れていれば、避けれたかもしれないですけど。あくまで可能性ですから。ベラートさんだけが悪いわけじゃ」


「儂が狂戦士化なんぞ使わなくとも、もっと強ければ、問題なく迅速に倒せていたのだ……!」


「……ん?」


 あれ? これからは仲間と連携を取って、魔物を倒していければ良いな……っていう話の流れじゃなかった?


「この程度の強さでは足りん。元々、アミカより強くなることを目標としていたが、そもそも志が低かったのだ。もっと、一薙ぎで全てを破壊する圧倒的な力が必要だ!」


「あ、あの? ベラートさん?」


「スキルに自身が使われているのも気に食わん! 所有者は儂だ! なのに何故、スキルに良いようにされねばならんのだ!」


 これは狂戦士化の事を言っているようだ。段々一人語りになってるけど、俺もう帰ってもいいかな……?


「……すまん、話が逸れたな、カイルよ。要するに、だ。儂は強くならねばならん。それも、今とは段違いな程の強さを! それは、ここセバンタートでは足りない」


「足りない?」


「ぬるいのだ、ここは。カイル含め、儂等はフリーの冒険者としては、そこそこかもしれん。だが、ギルドや騎士団から見れば、ひよっ子同然だ。ここで苦労し努力しても、得られるのはその末席。その時点で頭打ちだ。かといって、フリーでダンジョンの中層以降へ進める冒険者は、儂の知る限り、おらん」


 ベラートさんが言いたいことは、何となく分かった。初級者が研鑽するには、セバンタートはうってつけだが、中級者以降は、ここで力をつけるには物足りないんじゃないか? ということ。


「カイルよ。儂と一緒に、南へ行かんか?」


「南……ですか?」


「うむ。強ければ、何をしてもある程度許される、南の領地ディハールへ。そこで儂は、今よりもっと強くなる! お前もまだまだ強くなる。悪くなかろう?」


 勧誘、ではないけど、まさかベラートさんから誘われるとは思っていなかった。


 俺も確かに強くなりたい。だけど、一歩ずつ進みたいのも本音だ。


「お誘いは嬉しいですが、今はまだ、行けません。お断りさせて下さい」


「む? 早ければ早いほど良いと思うが……何故だ?」


「俺一人だけ強くなったとしても、あまり意味がありません。俺は、今いる仲間達全員で、強くなりたいんです」


「……そうか」


 ベラートさんは、納得していない様子だったが、それ以上は何も言わなかった。


「ならば……先に行って待っていよう。お前もいずれ来るだろうしな。その時、儂の力がお前を上回っていたとしても、後悔するなよ?」


 ベラートさんは、俺に初めてであろう笑みを向けてくれた。挑発的な笑みを浮かべるベラートさんへ、俺も笑みを返す。


「そっちこそ。俺もここで遊んでいるつもりはありません。差が変わらなくても、ガッカリしないでくださいよ?」


「……ハッハッハ! 抜かしよる!」


 ベラートさんは豪快に笑い、そして俺に背を向けた。


「……では、またなと言っておこう。カイルよ、達者でな」


「はい、ベラートさんも、お元気で」


 手を上げて、ベラートさんは去っていった。


 人を強弱で判断する極端な人に、恐らく認められたであろう俺は、嬉しいような、怖いような……そんな何ともいえない気持ちになった。


「俺も、もっと……強くならないとな」


 ーー拳を握りしめ、今以上に強くなる事を誓った。

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