オーガキラー.2
じゃあ二つ目にいくわよ? そう言って、ジェシカさんが机にしたから取り出したのは、これまた書状だった。
「書状、ですか? 何が書いてあるんです?」
「とりあえず、見てみて」
ジェシカさんに促されて、書状を確認する。
『カイルに、オーガキラーの称号を付与する。並びに、それを口上することを許可する。セバンタートギルド本部』
オーガキラー。エントランスで冒険者が口にしていた。
「な、なんですか? これ」
「○○キラー、みたいな称号はね、本来であれば無理であることをやってのけてしまった人に贈られるの。改めて言うけど、カイル君はE級でありながら、オーガ二体を出現位置で足止め、一体を討伐するという、とんでもないことをやってのけたのよ」
称号付きの冒険者、俺は出会った事がない。なんか、リョウさんなら称号を持ってそうな気もするけど。あの人、飄々としているから、持っていても口上しなさそうだ。
「ちなみに、セバンタート内では、称号を持ってない人が口上すると重罪になるの」
「え!? そ、そうなんですね」
理由は、色々と融通が利いてしまうからとのこと。口に出す時は、状況を選んだ方が良さそうだ。
「カイル君に関しては、誰かさんが言いふらしたせいで、都市中にほぼバレているから、口上しなくても、その辺りは有利になるかもね」
ジェシカさんは、少し遠い目をしていた。昨日はここにも迷惑が掛かってしまったんだろう。俺は頭を下げた。
「なんか、すみません……」
「いいのよ! 貴方が謝ることじゃないわ、気にしないで」
アミカさんは、今日ここには来ていない様だった。今度会った時にでも、それっぽく進言しておこう。
「それにしても、昨日は都市中大騒ぎだったわよ」
「それなんですけど、何でそんな大事になったんですか? ギルドの職員さんもオーガを討伐出来る方はいると思うんですが」
「それはね、カイル君達みたいなフリーの冒険者で、オーガを倒せる程の実力を有している人が、セバンタートには極端に少ないの」
「そうなんですか?」
「そう。言い方が悪いけど、実力がある人達は、皆ギルドの職員になるか、騎士団へ入るかを選択する事が多いの。確実に収入が入るから」
「なるほど」
冒険者は稼ぎが安定しない。一定収入を望めるなら、その選択を多くの人がすることは想像がつく。
「でも、そうなると仕事上、ダンジョンへ向かう機会が極端に減るのよ。救援は別としてね」
ダンジョン前にいる職員は、戦闘が主な仕事で、救援でダンジョンへはよく行くとの事。それでも、パーティーを組まないと、オーガは討伐出来ないようだ、とジェシカさんが教えてくれた。
「だから、常に人手不足で、中層以降は特に手が進まないの。フリーで強い冒険者も、大体南の方へ行っちゃうから……。フリーの冒険者でオーガを倒す事自体、聞くのも久方なのに、それが形だけでもE級って言うんだから。皆、そいつはどこだー! って感じになったのよ」
「な、納得です」
実際には、皆が来るまで俺は手も足も出ず、壁へ吹き飛ばされるだけだった。それで平気な顔して継続戦闘してるのも……まぁ、おかしいか。
「そういえば、アメルやアミカさんには無いんですか?」
「上の方で協議した結果、二体を足止めしたカイル君が、一番の功労者だということになったみたいよ。残念ながら、二人には無いわね」
「そうですか、皆で倒したっていう感覚だったから、俺だけ戴くのも少しバツが悪い気がしますけど……」
「そう言うなら、カイル君達で、ギルドパーティーを作れば良いんじゃない?」
「パーティーですか?」
「そう。D級になったんだし、作れるわよ? 団長、リーダー、まぁ呼び方はなんでも良いわ。カイル君が主導の形で運営すれば、他のメンバーが称号を口上することは可能よ」
D級になればパーティーを作れる。すっかり忘れていた。
「まぁ、急いで決めることもないわ。パーティーの名前だけ、もしだったら考えておくと良いかもね」
「分かりました」
「それ、と。ちょっと待っててね」
ジェシカさんはそう言うと、エントランス中央へと向かっていった。




