オーガキラー
翌日。本部内で一泊した俺達は、一度裏口から出て、改めてギルドへ入り直した。
「おい、来たぞ」
「あれが、オーガキラーか」
「俺達より年下か、まだ子供じゃねぇか」
熱気冷めやらぬエントランス。俺達は、入ったと同時に一斉に視線を浴びた。オーガキラーってなんだ?
昨日の朝までは何事も無かったのに、一晩でこの変わりよう……緊張を覚えながらも、受付まで向かう。
そこには、いつものようにジェシカさんがいた。緊張も少し和らぐ。
「おはようカイル君。よく眠れた?」
「おかげさまでグッスリでした。ジェシカさん、おはようございます」
渡したいものがある。ジェシカさんはそう言っていた。ギルドへの報告は、事件もあって伝わっている筈だが、一応の報告も兼ねて、早めにやってきた。
「さて、カイル君。今日は貴方達、特に貴方へ渡すものがあるわ」
「俺に?」
「順番にいくわね。えぇと……まずはこれを二人に」
はい、と言われカウンターの机に置かれたのは書状。書状にはこう書かれていた。
『カイルを、D級の冒険者と認める。セバンタートギルド本部』
「これ、昇格の書状じゃないですか!」
「そうよ?」
「流石に、EからDへの期間が短すぎませんか?」
「あのねぇ、貴方達が規格外過ぎるのよ……」
説明するわね、とジェシカさんは前置きをして話し始めた。
「まず、依頼達成度と遂行速度。これが、他のEランク冒険者と比べると、比較にならない早さなの。達成度も何も、失敗していないしね」
「それは、はい」
そこは、自覚がある。
「次に、ダンジョンで襲ってきた賊の捕獲ね。痛々しくはあったけど、治せる範囲だったし、何より生け捕りに出来たことで、情報が得られたことが、ギルド側として有り難かったわ」
やはり、ライムを制止したのは正解だった様だ。ちょっと痛めつけてやれって言おうものなら、瀕死の状態まで持っていったかもしれない。ライムは素直だから、俺が言ったことを守ってくれる。ノリで何か言うのは止めよう。
「それに、賊の中にC級の冒険者も一人居たのよ?」
「えっ」
それは初耳だ。なんたって、皆等しくライムにやられていたから、Cランクが居たなんて思いもしなかった。
「最後にオーガ、ね。これは言わずもがな、カイル君が足止めしてくれていなかったら、とんでもないことになっていたかもしれないの」
「百鬼夜行、ですか」
「そう。私も当時は幼かったから、ギルドの資料でしか把握できていないの。読めば読むほど悲惨だったわ……。リョウは出陣していたみたいで、『流石にやばかったよー』って、のんびりした口調で言われたわ」
ジェシカさんは、呆れた様に呟く。
資料は、十年前位の記述だったはず。その頃、リョウさんも俺と同じ位の年齢だったのかな。当時から研鑽を積んでいるなら、納得の剣技だ。
「以上、どれを例に挙げても、E級ではないと。リョウにも『彼等、特にカイル君はランク詐欺みたいなとこあるから、頃合いみてさっさと昇格させないと、他の冒険者から苦情が出るよ?』と言ってたわ」
「救援要請をしちゃいましたけど」
「そんなの、ランクを考えれば当然の事よ」
だから、短期間ではあるけど、このタイミングで昇格になったの。ジェシカさんは、そう言葉を締めた。
アメルにも同様の書状。アメルは、書状を手に持ってはにかんでいる。二人揃って昇格だ。
「これが一つ目ね」
「一つ目だけでも嬉しくて、お腹一杯なんですが」
「嬉しいなら問題ないわね、どんどんいくわよ?」
ジェシカさんは、笑顔で話してきた。




