医務室にて
「……ん」
ゆっくりと眼を開けると、天井が見える。視線を横を動かすと、白を基調とした部屋にいることが分かった。
(カイル、おはよー!)
「ん、ライムか……あれ、まだ融合したままなのか?」
(そーだよー、ゆっくりやすめた?)
「おかげ様でな」
ブーストを解除した瞬間、俺は意識を失った。てっきり、従魔融合も解けるもんだと思っていたけど。ライムと俺は、混ざり合ったままだった。身体自体は、何ともないみたいだ。ライムの再生能力だろうな。
「ライム、ここがどこだか分かるか?」
(んーとね、イムシツ、っていってた!)
ーー医務室か。ということは、ダンジョンから出て、ギルド本部には来れたんだな。
俺はゆっくり起きようとして、手を動かす。すると、触り心地のいい何かがあり、目線をそこへ向ける。
アメルが床に座り、ベッドへ頭を乗せる形で寝息を立てていた。
触れたのは、青色の髪。滑りがよく、さらさらしていた。
「……頑張ってたもんな」
元は農民の子が、ダンジョンで魔物と戦う。あまつさえ、オーガを倒してしまうなんて、知らない人が聞いたら、嘘つきと言われても仕方ない。
俺は半身だけ起こし、労わる様に、アメルの頭を優しく撫でた。
「ん……んぅ」
アメルは起きない。余程疲れていたんだろう。
「とりあえずライム、一旦融合を解除するぞ」
(オッケー!)
「融合解除」
部屋が光に包まれて、やがて徐々に元の明るさへ戻っていく。
俺のお腹に、ライムが現れた。
「ライム、俺が気を失っている間、身体の中にいて何ともなかったか?」
「んーとね、なんともないんだけど、あんまりうごけなかった!」
ライムが言うには、身体が極端に動かしにくくなったらしい。
理由は定かじゃないが、宿主である俺の意思がないと、動きに制限が掛かるのかもしれない。
良かった、気絶してたらミンチは確実だった様だ。死なないと思うけど、オーガが飽きるまで延々と叩かれる。それは悪夢以外のなにものでもない。
俺は、あり得たかもしれない現実に身震いした。
「あ……あの……」
声がした方を向く。アメルがぷるぷると震えている。
「ん、起きたかな。おはようアメル。沢山頑張ってくれてありがとね」
「は、はい、それは全然なんですけど……その」
「ん?」
「……手、手が……」
手? そういえば、労いを込めてアメルの頭を撫でて、そのままライムに出て来てもらって……俺の手は、未だにアメルの頭に乗せている。
触り心地がいいもんだから、撫でることを止めていなかった。慌てて、手を引っ込める。
「ご、ごめん! 触り心地が良くて……えぇい違う! 少しでも労いが出来ればと思って!」
アメルも慌てて立ち上がる。顔が真っ赤になっていた。
「わ、わ、私! 皆さんを呼んで来ますね!」
「わ、分かった!」
俺が返事をする頃には、脱兎の如き速さで、アメルはこの場から居なくなっていた。
「カイルー、かお、まっかだぞー?」
大丈夫かとライムに聞かれ、何ともない! と答えるのが精一杯だった。




