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医務室

 ここは、ギルド本部にある医務室。白を基調とした、清潔感のある場所だ。


 私達は、ダンジョンから脱出した後、ギルド本部へ直行した。


 状況を理解したジェシカさんの動きはとても早く、私達はすぐに医務室へと通された。


 救援に来てくれたギルド職員さんは、男達の話を聞くと言って、エントランスへ戻っていった。


 私は無傷、アミカさんは擦り傷程度で、急を要する傷はない。でも、カイルさんは……。


 オーガ二体を、足止めしてくれたカイルさん。彼はまだ、目覚めない。ライムちゃんもいない。


 恐らくだけど、従魔融合のスキルが発動したままなんだと思う。


 いつもは数分で覚醒するんだけど、もう一時間は経っている。カイルさんも目立った傷はないんだけど。


 起きないカイルさんを、みかねたアミカさんが職員さんへ尋ねる。


「おい! アンタ医療班だろ! カイルは大丈夫なんだろうな!?」


「いや、その……」


 職員さんの歯切れは悪い。


「なんだ? どこかまずいのか?」


 アミカさんも、神妙な面持ちで尋ねる。


「……手の施しようが、無いんだ」


「何だと!? じゃあカイルはもう駄目だって言うのか!? ふざけるな!!」


「い、いや、そうじゃない! 話は最後まで聞いてくれ!」


 胸ぐらを掴まれた職員さんが、必死に声を上げる。


「外傷がない! 状態異常もない! 治療をする箇所がどこにも無いんだ!」


「な、何だそりゃあ……」


 アミカさんも、面食らった様に、手を離す。


「……カイル君本人の状態としては、眠っているだけ。健康体そのものだ。故に、我々は何もすることがない。本当にオーガを討伐したのか疑うほどにね」


 あれだけ戦闘をして、無傷。カイルさんが訓練の時に教えてくれた。ライムは凄いスキルを複数持っていると。


 その内の一つ、再生能力。従魔融合をした時に、スキルを引き継げるのかは聞いたことがないけど、ライムちゃんのスキルが発動しているなら、納得できる。


「カイル君より、貴方の方が心配だ、アミカさん。左腕、折れてはないにしろ、負傷しているな?」


「流石に分かるか……医療班でも、ギルドの一員だもんな」


 アミカさんは、オーガの攻撃、特に力の強い、赤色のオーガからヘイトを買ってくれていた。大盾がひしゃげる程の攻撃を、何度も。


 腕を痛そうにしていたから、治してあげたいなと思ったが、救援の職員さんがいるから、私はスキル発動を躊躇ってしまった。


 アミカさんは、私を気遣うように肩へ手をポンと置いてくれて、歯が見える位の笑みを向けてくれた。その後、何事もなかったかの様に、気を失ったカイルさんを軽く持ち上げて、肩に掛けるようにして、ここまで連れてきてくれた。


「腕の動きが、ぎこちなかったからな。スキルか何かで無理に動かすのは、なるべく控えた方が良いかもしれない」


「心配してくれてありがとな……母ちゃんにも、同じこと言われたよ。アンタ、ウチの母ちゃんみたいだな」


「……私はまだ、成人したばかりだが?」


 アミカさんの言葉で、急に冷淡な口調になる職員さん。慌ててアミカさんも言葉を訂正する。


「わ、悪い! 良い奴だなって思って口に出ただけだ! 気を悪くしたなら謝る、他意はないんだ!」


「……腕を見せてくれ。それを放置したままでは落ち着かない」


 ……もしかすると、アミカさんは一言多いタイプなのかもしれない。凄くいい人なんだけど。


 私がぼんやり、そんな事を考えている内に、治療が始まった様だ。職員さんが詠唱をすると同時に、アミカさんの左腕が光っていく。


「おぉ……綺麗なもんだな」


「貴方自身の治癒力を促進させただけだ。怪我自体が治っている訳ではないから、重ねて言うが、無理はしないでくれ」


「分かった。回復薬は使わないんだな」


「あれは、余程の時には使用するが……副作用だったり、依存度が高くなる物もあったりするから、最低限としてるんだ」


 私がここへ運ばれて来た時も、回復薬は足にちょっとだけだったなぁ。傷に染みて痛かった思い出がある。


「そうなると、やっぱり嬢ちゃんの力は凄いんだな」


「ん、なんの話だ?」


 アミカさんが、急に私へ話を振るもんだから、職員さんが気になっちゃっている。一言多いよぉ。


「いや、こっちの話だ」


 ありがとな、と手を上げるアミカさん。職員は頷いて、私の元へ来た。


「アメルさんも、二回目のダンジョンで大変でしたね」


「いえ、頑張ってくれたのは、カイルさんとアミカさん。それとライムちゃんです。皆がいなければ、私は何も出来ませんでした」


「それでも、二回目にして、オーガを二体も討伐する、というのは貴重な経験です。どうか恐れずに、今後の糧として欲しい」


「はい、ありがとうございます」


「さて、皆さんの治療は、もう必要ない様だ。私は一度報告へ出ますが、お二人はどうされる?」


「俺も、一旦出るわ。嬢ちゃん、エントランスの方にいるから、何かあったら声を掛けてくれ」


「分かりました。私は、もうちょっとここに残ろうと思います」


「了解した。ではアミカさん、行こうか」


「おう」


 出ていく際に、それにしても、女性の胸ぐらを掴むのは如何なものか、と職員さんに詰め寄られて、アミカさんは非常に焦っていた。職員さんは笑っており、からかっている様にも見えた。


 二人が医務室を後にして、静寂に残されたのは、私とカイルさんだけ。私は、近くにあった椅子へ腰掛け、カイルさんへ話し掛けた。


「カイルさん……今は、ゆっくり休んでください。起きたらまた一緒に、色んな事しましょうね?」


 カイルさんの寝顔は幼く、私より年下の様だった。私はその寝顔を見つめながら、彼が目覚めるのをゆっくりと待った。

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