勝利
--赤い弾を撃つ。
それを聞いた俺達は、アメルの射線を遮らないよう、オーガと対峙していく。
「赤い弾ってなんだ!?」
「ティアジャールさん特製のビックリ弾ですよ! 有事の時専用だから、今回が初めてになるな!」
「ぶっつけ本番かよ!」
アミカさんが攻撃を受けている内に、俺はアメルとは逆方向から、オーガにちょっかいをかける。
アメルが狙いを定めて発射した。弾は、オーガの左肩に直撃。その後--爆発した。
凄まじい爆発音が、ダンジョン内に響き渡る。
「な、なんだぁ!?」
アミカさんは、大盾で視界を遮っているから、何が起きたか分からない様子だ。
「ふざけた威力だな! オモチャじゃなかったのかよ!」
オモチャでも、改造すれば危険になるとはよく言ったもんだ。あれだけ傷をつけられなかったオーガは、左腕をだらんと下ろしている、力が入らないようだ。直撃した左肩からは、大量に出血している。
俺はアメルに声をかけた。
「アメル!」
「は、はい!」
「助かった! 可能なら右側もやってくれ!」
「分かりました!」
アメルが赤い弾を装填していく。残り二発だ。
「アミカさん! 左は攻撃が通る! 余裕があれば反撃してくれ!」
「おう!」
オーガが放った右拳での打撃を、アミカさんは大盾でしっかりと受ける。
「さっきの威力はどうした! そんなもん全く効かねぇぞ!」
大盾を鳴らし、更にヘイトを買ってくれるアミカさん。俄然動きやすくなった俺は、負傷している左側へ、全力で猛攻を仕掛ける。左側は力が入らないせいか、さっきより深く斬り込めた。
「グウッ!」
初めて苦しそうな声を上げる。俺達を睨み付けるオーガに、吠える。
「俺達ばっかり見てて良いのか!? 本命はこっちじゃないぞ!」
アメルが弾を発射する。弾は、オーガの右足に命中。激しい音と共に爆発した。
余りの痛さに立っていられなかったのか、オーガはその場に仰向けで倒れ込んだ。
--勝った!
俺は安堵して、緊張感が抜けてしまった。途端に意識が朦朧としてくる。
いい加減……限界がきたか。今までよく動けたもんだ。
力なく地面に倒れる。皆が慌てて駆け寄って来てくれた。俺は、力を振り絞って、皆に声を掛けた。
「職員さん。トドメとか、後処理とか、任せます。皆に指示を出してください」
「き、急にどうしたというんだ! 大丈夫か!?」
死に際の様な台詞をいう俺に、職員さんが慌てて聞き返す。すまん、答えてる場合じゃない。
「アミカさん。ちょっと……スキルを使い過ぎました。気ぃ失うと思うんで、良かったら帰り、頼みます」
「そうか……おう、任せとけ!」
頼りになる。職員さんだけの救援だったら、今も戦ってたか、あるいは逃走していたか……アミカさんがいたから、討伐出来た様なもんだ。言葉にするには、ちょっと恥ずかしいから言わないけど。
「アメル……ありがとな。おかげで助かったよ。俺達にとって、大金星だ」
「はい……! カイルさんも無事で、本当に……良かった……!」
アメルは泣きそうになっている。赤いオーガを倒せたのは、間違いなくアメルのおかげだ。
オーガを見ると、絶命した様でゆっくりと消え始めていた。改めて安心し、俺はライムに、頭の中で話し掛けてみた。
(ライム……これでも、聞こえるか?)
(うん! バッチリ!)
(そうか、やっぱりこのスキルは便利だな……ライム、お前がいなきゃ、俺はアッサリ死んでたと思う。本当に助かった)
(ともだちを、たすけるのは……とーぜんだよね!)
その言葉に、嬉しさを覚え泣きそうになった。
(……これからも、宜しくな)
(とーぜん! カイルも、すこしやすめー)
(あぁ、お言葉に甘えてそうするわ……)
--俺はスキルを解除し、その瞬間意識を失った。




