命懸けの鬼ごっこ
--まずい。何がまずいかって、このままだと全滅する。転がっている男達は、正直自業自得だ。だが、アメルも俺も、E級になりたてで、オーガは、C級になり中層へ挑戦出来るようになった冒険者の命を、いとも簡単に奪い取る化物だ。
アメルを守りながらでは、無理だ。
俺はスキルを発動し、アメルに告げる。
「アメル!」
「は、はい!」
「救援だ! ダンジョン入り口の職員を呼んできてくれ! 一人で行かせて悪いが、避けれる戦闘は全て避けろ! オーガは俺とライムで食い止める!」
「い、嫌です! 私も戦います!」
「このままじゃ全滅するって言ってるんだ! アメルは足が速い! オーガを地上に出すわけにはいかないんだよ! 分かってくれ!」
「で、でも!」
「行け! 早く!!」
「……っ! 分かりました!」
アメルは背を向けて走り出した。
「ライム! 来い!」
「おー!」
ライムが俺の肩に乗ってきた。
「手加減して勝てる相手じゃない! しかも二体だ! 倒すのが無理でも食い止めるぞ!」
「やるかー!」
「従魔融合っ!!」
俺とライムが、混ざり合い身体が柔らかくなっていくのを感じる。俺達の見える所まで、オーガが歩いて来ていた。
臭いの元となっているこの場所、そして、粉がかかりまくっている俺へと視線を向けてきた。
「おう、いかつい顔してんなぁオーガさんよ! 鬼ごっこでもするかい?」
オーガと対峙した俺達は、ゆっくりと剣を構えた。
(で、デカ過ぎんだろ!)
対峙したオーガに思った事が、まずこれだった。
二メートル、いや、もうちょっとあるんじゃないか? 身長もそうだが、筋肉も一目で分かるほどに凄まじい。立派な角が二本、額から生えており、口から牙もはみ出ている。
赤い方が、体格が良い。青は、赤に体格では劣っているが、武器を持っている。棒状の岩、いや、あれ武器か? そう思いたくなる様な、大剣に近い大きさの岩を、右手に持っていた。
結果、二体揃って規格外。
まず、倒せたら一番良い。それが無理なら、一秒でも長く食い止める。それで俺達も生き残る。救援が間に合えば、一緒に戦う。駄目なら逃げる。よし、これでいこう。
「ライム! 移動は任せる! 行くぞ!」
(いくかー!)
俺の身体を使い、滑るように走るライム。俺もこの動きに慣れてきたようで、速いとは感じなくなっていた。
赤いオーガが俺達の動きに反応して、両拳を合わせて振り下ろしてくる。それを俺達は、横へするりと避けた。
成果が出てる! そう思うのも束の間、凄まじい音と共に、地面が抉れた。
「マジかよ!? 反則だろそんなの!」
当たったら、ぺちゃんこになる。打撃無効とはいえ、生きてられるのか不安になる威力だ。
赤のオーガに気を取られている内に、青いオーガがこちらに肉薄していた。
(速ッ--)
そう思った瞬間、俺達に凄まじい衝撃が走る。手に持っていた岩を振り切られて、壁へ思い切り激突した。
激突した瞬間、身体中を激痛が駆け巡る。
「痛ってぇ!? ……打撃無効じゃねぇのかよ!」
痛かったのは一瞬。見た目には傷もない。打撃や斬撃、無効であっても、一瞬の痛みはあるって事か。
今は大丈夫だが、何度も喰らったら意識が飛ぶかもしれない。従魔融合が解除されるかは謎だが、仮に意識が飛んで、解除になってしまったら、その時点で、おしまいだ。
俺達は、ダンジョンの壁から地面へ降り、再び構える。
「……ま! やるしかねぇよなぁ!」
俺達は、二体のオーガへ走り込んでいった。




