希少種
スライムが、喋った。
本来、魔物は発声こそするが、人語を介したりはしない。ましてや、会話が出来る個体なんて聞いたこともない。
いや、あったな……魔物の中にも例外が。
--希少種。
数は非常に少ないが、稀に現れる個体のことで、通常とは異なる点が多く見られる。
スキルの多さや、その個体にはないスキルを有していたり、ステータスの違い、外見の特徴、言葉を発することもあるらしい。
冒険者達からは、希少種や変異種、また、単独で行動している様子から、はぐれと呼称する声もあるそう。
恐らく、目の前にいるこのスライムは希少種だ。都市外付近ではあるが、人懐っこいというか、攻撃を仕掛けてくる様子もないし、単独で行動していることからも、かなり可能性が高い。
スライムは、先程の質問への答えを待っている様子で、その場で揺れたり跳ねたりしている。
「えっと、君はスライムだよね?」
「うん、そうだよー!」
話し掛けられたことに、嬉しそうに応えるスライム。
「色々と聞きたいことはあるんだけど、俺に何か用事かな?」
「なんでか、ないてるから、きになってみてたー」
別に用事はなく、泣いてる所から今に至るまで見られてたらしい。相手は魔物とはいえ、少し恥ずかしい。
俺は気恥ずかしさを誤魔化すように、質問を変えた。
「ところで、何でこんな人目に付くようなところにいるの? 多分、希少種である君が見つかったら、冒険者達は君を倒そうとしてくるはずだけど」
希少種発見の際は、ギルドへの報告義務がある。討伐すれば報酬金も出る。
希少種? なにそれ? スライムは分からずと言った感じで、身体を曲げている、
「じゃあ、オマエはなんでおそわないの?」
冒険者じゃないの? と、逆に聞かれてしまう。
今はある程度心の整理もついてきたし、魔物相手なら、何を喋っても平気だろう。
「冒険者をやめて、村へ帰ろうと思ってさ。君に襲いかかっても、俺にはメリットが少ないんだ」
ふーんと、分かった様に相槌をうつスライム。これ多分、分かってないな。
それじゃあ、と言ってスライムは、俺に向かって元気に提案をしてきた。
「ぼくと、ともだちになってよ!」