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オルサフォルム.3

「おいおいおい! 撃つにしたって、俺達が避けてからにしろよな!」


「同感だ!」


 俺とアミカさんは、後方から何か声がしたが、よく分からなかった。


 ちゃんと聞こえた言葉が、どかないと一緒に燃やすという物騒な言葉。それと同時に、俺達へ向けて放たれた炎の魔法だ。


 螺旋状の炎の矢は、敵を燃やしながら、洞窟の奥までその勢いのまま進み、そして消えていった。


 ギリギリでかわせた俺達は、ハディットさんに文句を言う。


「ハディット! お前もうちょっと周りから仕留めるとか何かあっただろ!」


「久々に会ったのに容赦ねぇなぁ、オイ!」


「あら? そこに一番敵が居たから撃っただけよ? カイルが居たのは見えなかったわ。久しぶり、ようやくテイム出来たようね」


 悪びれもなく、平然と言葉を返すハディットさん。相変わらずだな。


「とはいえ、ずっとこんな薄暗い場所にいるのも飽きてきたわ。さっさと終わらせるわよ」


 そう言って、杖を構えるハディットさん。


二重奏デュエット


 杖から放たれたのは、先程と同じ魔法。ハディットさんのスキルだ。


 一度、魔法を放った後はその魔法に限り、魔力を消費せず撃ち続ける事が出来る。


 次々と放たれる螺旋の炎に、たちまちゴブリン達は焼け落ち、魔石だけが残される。辺りは魔石だらけになった。


「……相変わらずエゲツねぇな」


 俺がそう言うと、ハディットさんは気を良くしたのか、嬉しそうに話し出す。


「この華麗なる魔法を、何度も拝めることに感謝なさい! さぁ、どんどんいくわ--ちょっと! どきなさいよベラート!! 一緒に燃やすわよ!?」


 怒気がこもる声で、言い放った先にはベラートさんがいる。


 楽しそうに、一体ずつ丁寧に敵を叩き潰していた。


 狂戦士化。ベラートさんのスキルで、攻撃に高補正が掛かるそうだが、代償として、自我が極端に保てなくなる。諸刃の剣だ。


 業を煮やして、舌打ちをしながら杖を構えるハディットさん。慌てて、アミカさんが声を掛ける。


「ハディット! ストップだストップ! ダンジョン内、冒険者同士の戦闘は御法度だろ?」


「……っ! そんなこと分かってるわよ! さっさとなんとかしなさいよ、また呼ばれるわよ!?」


 ベラートさんの先には、仲間を呼び寄せているゴブリンが健在している。だが、ベラートさんは、そのゴブリンに目もくれない。


「どうする? 近寄って共闘は良いが、ベラート本人に襲われかねんからな」


「同士討ちは笑えねぇな……」


 俺とアミカさんは思案する。後ろでは、早くしなさい! とハディットさんがうるさい。


「カイル。お前んとこの従魔で、なんとか出来ないか?」


「それはなんとも……でも、聞いてみます。ライム!」


 声を掛けると、ライムがこちらに飛び跳ねてきた。


「どーしたの?」


「戦っている男の人、ベラートさんって言うんだけど、あの人を避けて周りのゴブリン、特に後ろで声を出してるやつを倒せるか?」


 アイツだ。と、俺は指をさす。


「できるよー!」


「自分から聞いといてなんだが……ホントにそんなこと出来るのか? スライムだぞ?」


 何の気なしに即答するライムに、アミカさんは驚いていた。


「よし、じゃあ今すぐ頼む!」


「おー!」


 ライムは俺達の前に立ち、いつもの決めポーズをとる。


「へんっしん!」


 掛け声と同時に、眩い光が洞窟内を照らす。


 俺に擬態して遊撃していく気か。そう思った俺の考えは、見事に外れた。


 その姿は、長髪を後ろで縛っており、独特な和服が特徴のギルド職員。


 --リョウさんの姿だった。


 そして、その姿になったライムは、刀に手を添え、リョウさんがしていた構えをとる。まさか……出来るのか?


「くらえっ!」


 キンッという甲高い音が、洞窟内に響き渡る。


 ライムは動かない。だが、次の瞬間、今まさに仲間を呼ぼうとしていたゴブリンが、口を開けたままその場に崩れ落ちる。次いで、他のゴブリン達も倒れていった。


「なんだっけ? ……そうだ! イッセンだ!」


 ライムが構えを解き、擬態も解除する。


「マジかよ……!」


「何……あのスライム……」


アミカさんとハディットさんは、ライムがやった事を、信じられないといった様子で眺めていた。


「……む? 終わったか?」


 眼前の敵が居なくなり、狂戦士化が解けたベラートさんは、辺りを見渡して淡々と言った。

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