初めてのダンジョン
「忘れ物は無い、よな?」
「はい、こちらは大丈夫です」
アメルは準備万端だ。この日の為に、ギルドから支給されていた物と、ほぼ同じベルトを購入。装備してもらっている。
「カイル、ちずもったー?」
「持ったよ! 今度は忘れてない!」
二重確認は大事だからな。決して、俺が忘れやすいとかじゃない。
そんな会話を交わしながら、目的地へ到着した。
眼前にいる衛兵二人、その内の一人へギルドからの許可書を渡す。受け取った衛兵は、用紙をしっかりと確認する。
「【従魔士】カイル、【射士】アメル、ですね。確認しました。初めての様ですが、ダンジョンの説明は要りますか?」
「はい、お願いします」
「分かりました。ダンジョン内、中層の途中までは、ギルドが把握出来ています。順路も整備されていますし、順路上は明かりがあります。詳しくは、地図で確認をお願いします」
「はい」
「順路を外れると、明かりはなく、罠や行き止まり、モンスターの巣窟に、たどり着いてしまう可能性もあります。初めての場合は、順路通りが良いかと」
「分かりました」
「とはいえ、順路にも当然ですが、モンスターは出ます。上層は主にゴブリン、飛行系のキラーバットです」
そう言うと、衛兵は手にあった用紙を燃やしてしまった。手際の良い魔法の発動に、流石だなと感心した。
「不正防止のためです。ギルドへ報告をもって、ダンジョン探索は終了となります。お気をつけて」
「はい、ありがとうございます。じゃあ、行こうか」
「は、はい!」
「おー!」
俺達は、衛兵に会釈をしてダンジョンへ突入した。その様子が微笑ましかったのか、衛兵も笑いながら、こちらに手を振ってくれた。
ダンジョン内は、ギルドが明かりを灯してくれてはいたが、それでも薄暗かった。
洞窟の様な内部。とはいえ、パーティーが何組かいても、悠々と通れる広さはある。
俺達は、辺りを見渡しながら、ゆっくりと前進する。
「これが……ダンジョン」
「うん。何があっても責任は自分達にある。気を引き締めていこう。」
「はい」
「おー!」
俺が前衛、アメルが後衛だ。ライムはアメルに付いてもらい、どうしてもヤバい状況になったら、ライムと一緒に打開する予定だ。
「っと、ここで分かれ道か」
洞窟内で、二手に道が分かれていた。順路は右、明かりが続いている。
ここで、アメルがクロスボウを取り出し、警戒した様子を見せる。
「カイルさん! 左の方から何か来ます!」
「分かった!」
アメルが、装填しながら伝えてくれた。俺には何も見えないが、剣を抜いて警戒する。
すると間もなく、足音と鳴き声がして、音の主が現れた。
ゴブリンだ。その数四体。身長は子供と変わらない位だが、成体であり、各々武器を持っている。
「ありがとうアメル! やつらの武器は、毒が塗ってあることが多い! 気を付けてくれ!」
「はい!」
ライムがアメルの側にいることを確認して、俺はスキルを発動する。気持ちが昂り、全身に力が漲る。
「いくぞぉおおお!!」
猪突猛進。ゴブリン達は、俺の突進に戸惑いを見せた。その間に一体、剣を振り切って致命傷を与える。
近くにいたゴブリンが、俺に反撃をしようとする。が、そのゴブリンの肩に、アメルが撃った弾が命中する。
「ガァッ!?」
痛がっているゴブリンを、そのまま薙ぎ倒す。残り二体。
二体は、後ずさりながら、持っていた武器を俺目掛けて投げてきた。俺は、それを難なく叩き落とす。
「どうした? そんなもんかよ」
構えは解かず、俺がそう言うと、ゴブリン達は歯軋りをしながら、背を向けて暗がりへ走っていった。
深追いは……出来ないな。俺は、剣を収めてスキルを解除した。途端に身体が重くなり、肩で息をしてしまう。
「追わなくて、良かったんですか?」
アメルがこちらに来て、尋ねてくる。
「……あいつらは、見た目と違って賢いから、ね。初の戦闘で危なげなく勝てたんだ。それで十分だよ」
俺が言っていたことに、悔しそうにしていたことからも、言葉を理解していたようだ。アメルも頷いてくれた。
「それに、これも出たからね」
息を整えた俺が、地面から拾った水晶の欠片。アメルは、何処にそんなものがあったのかと、不思議そうにしている。
「それは、何ですか?」
「これは、魔石だよ。ダンジョンにいる魔物しか出さないから、俺も見るのは初めて。ギルドが高値で買い取ってくれるんだ」
何故ダンジョン内の魔物しか出さないのか、解明されていないが、冒険者の大事な稼ぎ所だ。
俺は、二体から出た魔石をポーチにしまう。
「さ、もうちょっと奥まで進もう」
「はい!」
「おー!」
まだまだ気力十分。俺達は、順路を奥に進んでいった。




