ジェシカ
「心配だわ……」
私は思わず、呟いてしまった。
原因は、カイル君に他ならない。最近の彼が見せる驚異的な変化に対して、心配が尽きることはない。
ついこの間、カイル君は二年越しにようやく魔物をテイム出来た。それはとても喜ばしいことだ。彼を受付から見守って二年。それまでの彼は、なんというか……器用貧乏だった。
身体能力で言えば、【農民】よりは動けるが、戦士職には劣る。武器の扱いも満遍なくこなせている。だが、専門職にはどうしても劣ってしまう。魔法も扱える様だが、初期魔法だけみたい。それでも、魔法職でもない彼が、どれほどの努力をしたのか……魔法に多少の心得がある私には分かってしまった。
そもそも、【魔物使い】の上級職と思われている【従魔士】が、魔物を使役しないで前線で戦っているのがおかしいのよ、と思っていたけれど。魔物を使役するために、自身も何かしたいという彼の意思と聞いた時は、流石に強く言えなかった。
ーーそんな彼がテイムした従魔、スライムのライムちゃん。
希少種をテイムした事も勿論驚いたけど、そこからが凄かった。
私がお祝いにと、報酬の高い依頼を渡した。少女の捜索、その対象者であったアメルちゃんは訳ありだったけど、その当時、ギルドでは分からなかった。
叔父に連れ帰られる時も、嫌そうにしていたから何かある、と思っていたけどギルドからは確証も無しに動けない。
そこにカイル君が行きたいと言ってくれたから、様子を見にいってもらった。帰ってきて、報告を受けるだけかと思ってたらーーアメルちゃんも一緒に連れてきちゃうんだもの……。
聞けば地下で足枷をされており、おまけに地上へ出る扉も鍵が掛けられていたという。どうやって連れ出すことが出来たの? と聞いてみたら、
ーーほとんど、ライムがなんとかしてくれました。
この一言だった。自分は指示を出しただけだと。それでも素直に聞いてくれるんですよ、とカイル君は嬉しそうだったけど。
……ツッコミどころが多すぎてね、ツッコまなかったわよ。
そこからはもう、怒涛ね。Eランクの依頼なんか、融通を利かせて纏めて渡してみたら、その日の内に終わらせてくるって……どういうこと?
流石に、これでもかと結果を出されてしまっては、ダンジョン探索の許可をおろさないわけにはいかない、いかないんだけど。
「一気に行き過ぎてるのよね……」
カイル君は、意外とぬけた所がある。アメルちゃんのベルトといい、買い忘れて慌てて戻ってきた、ダンジョン内の地図だってそうだ。
彼の今までを知る身としてはやはり、強くなったとしても心配なものはしょうがないのだ。重大なミスをしないと良いんだけど……。
私は、堂々巡りをする思考を一旦頭の片隅に置く。結果はどうあれ、報告へ戻って来てくれると言った彼を待ちながら、今日も受付の事務作業に取り掛かった。




