ダンジョンへ向けて
ギルド本部。ジェシカさんは、口をパクパクさせていた。
「あ、貴方達、もう依頼をこなしてきたの?」
「はい、なんとか」
昼食後、依頼を受けようと思いギルドにやってきた。そこで、ジェシカさんが融通をきかしてくれて、主に討伐だが、Eランクの依頼をまとめて渡してくれた。恵まれているなぁと思う。
渡してくれたのは三件。
一つ。アルミラージ討伐。これは、この時期常に出てる依頼なので優先的にこなした。
二つ。街道に現れた、狼の群れを討伐。そして、何でもいいからドロップアイテムの納品。これが三つ目。
二件まで、個人の依頼。三件目は、ギルドからの定期依頼だ。
「これ、依頼主に立ち会ってもらって、頂いてきたサインです」
ジェシカさんに、サインの入った書類を渡す。ジェシカさんは、その書類にゆっくりと目を通す。
「……確かに受け取ったわ。貴方達が不正をしないことは分かってたけど、あまりにも早くて驚いちゃった」
時刻は夕方に差し掛かる前。討伐所要時間は、移動も含めて、大体四時間程度になる。正直、移動の方が掛かった位だ。
ぼくが走ろうか、とライムが提案してくれたが、やんわり断った。あれは非常時用だ、速すぎる。
「それと、ドロップアイテムで。アルミラージの角です」
「あ、ギルドの定期依頼のやつね、どれどれ……これ、多くない? 幾つあるの?」
「十七本あります……」
「これ、メインで討伐したのは?」
「ライムです……」
「納得、せざるを得ないわね……」
ジェシカさんは、ライムが見せる実力に呆れるしかない様子だった。
まず、狼達の討伐はアメルが活躍してくれた。
街道を使う商人や、都市の人々が困っていた狼の群れ。街道で対峙した時には四頭が馬車を、主に食料を乗せた荷台目掛けて襲いかかっていた。
アメルが予め装填していたクロスボウを発射、一回り大きかった狼の胴へ直撃させる。
直撃を喰らった狼が悶絶した所で、異変に気付いた他の狼達が、標的を俺達、特にアメルヘ目掛けて走ってくる。
アメルは、速やかに二発目を装填し、そして発射する。恐らく子供だったろう、小さい狼の眼に直撃する。
俺は残った二頭から、アメルを守るように前へ出る。
「従魔融合」
飛び掛かってくる狼二頭を、一体ずつ確実に仕留めた。動きだけで言えば、アルミラージの方が余程速い。
馬車を扱っていた商人も、遠目から戦いを見ていた様で、お礼を言われ、その後一緒に依頼主の元へ行き、立ち会って報告してくれた。
俺達の事を話す時、大分興奮していて、依頼主はちょっと引いていた。
続いてアルミラージの方は、依頼者が困惑しており、なんなら、最初は怒っていた。
「う、嘘をつけ! こんなに早く討伐出来るわけないだろう! 適当な仕事をしおって……サインなんかせんぞ!」
その勢いも、依頼主と一緒に、俺達が訓練していた草原に着くまでだった。
草原に、アルミラージの姿はない。正確に言えば、亡骸はあちこちにある。この光景を見た依頼主は、怒ることはなく、困惑した様子だった。
「た、確かに……あれほどいたアルミラージが、一体も見当たらん。だ、だがどうやったのだ?」
「俺のテイムしている従魔が、してくれました」
「たくさんいたから、かぞえるのやめたー」
「そ、そうか。ちゃんと依頼を、こなしてくれていたんだな……」
すまない、と依頼主は謝罪をしてくれた。この光景を見せるまで、納得してもらえるとは俺も思ってなかった。
依頼の詳しい内容は、アルミラージ討伐。ドロップした角、五本を確認と引き換えに、達成とするというもの。五本以上は、追加で報酬をお渡ししますとも記されていた。
モンスターからのアイテムドロップ率、大小はあれど平均三十パーセント程度。つまり、三体で一回ドロップすれば良い方、な計算だ。
それを俺達が、依頼書と十七本もの角を持参して現れた訳だから、早すぎる、そんなはずがないと疑われた。当然だ。
結果として、しっかりと納得してもらえたようで、記載金額から三倍近くの報酬金を頂いた。
閑話休題。
「それにしたって、E級の冒険者が出来る、依頼達成の早さじゃないわよ?」
「それは、正直俺も思ってます」
ジェシカさんが言うのも、もっともだ。
E級の冒険者なら、一つの依頼につき一日を費やしてもおかしくない。
仲間が増えたのもそうだけど、一番はライムの存在だろう。
アルミラージを追いかけ回しているライムは、とても楽しそうだった。
「ともあれ、依頼全ての達成は評価に繋がるわ。ありがとう、都市も私達も助かっています」
お辞儀をしてくるジェシカさんに、俺は戸惑いながら話を進めた。
「いえ、頭を上げてください。こちらが望んでやっていることですから。それで、ジェシカさん。近々、ダンジョンへ行ってみたいんですが……許可って下りますか?」
「そうね……単身では難しかったかもしれないけど、今は頼もしい仲間もいるものね。いいわ、許可します」
「ありがとうございます!」
「探索後は、ギルドに報告がいるからね?」
「はい」
「それで? いつ行く予定なの?」
「早ければ明日、遅くても今週中には。上層で、経験を積みたいと思ってます」
「分かったわ」
ジェシカさんが、ペンを持ち紙に走らせる。渡された用紙には、ダンジョン探索許可書の文字。期限と共に記されていた。
「ちゃんと……戻ってくるのよ?」
ジェシカさんは、不安そうにしていた。俺は、心配させないように笑って頷いた。
その後、ダンジョンの地図を買い忘れた事に気付き、慌ててギルドへ戻ると、ジェシカさんは困ったように溜め息をついた。




