訓練
草原には、先程と変わらず、草食の魔物と動物が点在していた。基本的に襲ってくることはないから、この辺りでやれば大丈夫だな。
近くに魔物達が居ないことを確認し、訓練を開始する。とはいえ、何からするか。
「そうだな……そしたらまず、分かっているスキルの確認をしていこうか」
「スキル、ですか?」
「うん。アメルは【射士】のスキル習得に、まだ時間が掛かると思うし、個人スキルを教えてくれないか?」
「……癒しの羽衣、というスキルです」
「癒し……ってことは、回復系のスキル?」
「はい」
回復持ちは、パーティーでは特に重宝される。高値で募集がかかるほどだ。理由は一つ、生存率が一気に上がるからだ。
「凄いな、回復系は当たりのスキルだね!」
「はい……」
アメルは複雑な表情をしている。恐らくだけど、このスキルのせいで、あんな環境を強いられていたことを推測できた。
スキルの詳細も聞きたかったが、俺はそこで一旦話を止めた。
「教えてくれてありがとう。悪用はしないから、安心してほしい」
「……っ! はい」
俺に言える、精一杯の台詞だった。
「さて。アメルが教えてくれたんだし、俺の番だな」
俺は、スキルを発動する。傍目には分からないが、高揚感と共に感情の昂りを感じ、一気に身体が軽くなっていく。スキル名は、ブースト。
「俺自身、良く分かってねぇが……多分、身体能力を全体的に底上げしてくれるスキル、って感じだ。端から見たら、発動したか分からないのは利点だな」
「え、あ」
「ん? どうした?」
「あの、えっと、喋り方が」
「あぁ、これな。スキルを発動すると、どう言うといいか……感覚的に、常に気持ちが昂ってる感じだ」
俺はスキルを解除する。途端に身体が重くなり、膝に手をついて息を切らしてしまう。使う度に思うけど、あからさまな欠点だよな。
俺が急に息を切らしたのを見て、アメルが戸惑いながら心配してくれる。
「だ、大丈夫ですか!?」
「おまけに……燃費が悪いんだ。ちょっと使っただけで……この有り様だよ」
割とすぐに治まることを伝えると、アメルもようやく安心してくれた様だ。
「俺のスキルは一応、切り札って事で」
「は、はい」
実際なるかは怪しいが。自分のスキルだ、信じるしかない。
「じゃあ、ぼくのばんだね!」
肩に乗っていたライムが、地面へ跳ね降りた。俺は、アメルに改めてライムの事を話した。
「アメルにざっくりと説明しておくと、ライムは普通のスライムと違って、強力なスキルを持ってる。中でも凄いのが、打撃斬撃無効と再生能力だね」
「え、そんな凄いスキルを!?」
「そう、普通の人じゃライムには勝てないんだよ……」
仲間になってくれているからこそ、こんなに頼もしいことはない。ライムを見ると、ふっふっふっと悪役のような声を出して、身体を揺らしていた。
「カイル、それだけじゃないんだよ!」
「ん? そうなのか?」
他にも隠れたスキルがあるのか。従魔融合をした時は、今言ったスキルと、魔術耐性弱化しかなかったはずなんだけど。
「みててね! へんっしん!」
ライムは形状変化した腕を出して、決めポーズを取った。何のポーズか全く分からなかったが、ライムの身体が光り、どんどんと姿を変えていく。
それは段々と、人型を模してきており、光が消える頃には、完全に一人の人物になっていた。というか、
「これ……俺じゃね?」
「へへーん! すごいでしょ!」
「カイルさんが……二人!?」
アメルが驚くのも無理はない。ライムの姿は、完全に俺と瓜二つだった。




