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ダンジョンへ

「それで? どうだった?」


「合格も合格。アメルちゃん、狙った獲物は逃さないタイプだね」


「言い方よ」


 ギルド本部に戻ってきた俺達は、リョウさんからジェシカさんへ、報告をしてもらっていた。


「面白いものも見れたし、僕も満足かな」


 そう言うと、リョウさんは俺の方へ振り返り、ウィンクをしてきた。なんだ、怖いぞ。


「そんな訳だから、ジェシカちゃん後よろしく。二人ともまたね-」


「はい」


「あ、ありがとうございました!」


 手を振りながら、本部の奥へと消えていくリョウさん。それを見送りながら、ジェシカさんは呟く。


「実力は、あるんだけどねぇ」


 E級になったばかりの俺が言うのもなんだが、その通りだと思う。


 リョウさんが、構えの状態から見せてくれた技、一閃は、俺には見えなかった。斬撃を飛ばす類いの技だと思うんだけど、どれほど練度を上げれば、魔物だけ狙って仕留められる様になるのか、見当もつかない。


「ギルドの職員は、ジェシカさんもそうですけど、優秀な人ばかりですね」


「おだてても何も出ないわよ? それでも、ある程度何でも出来ないと、ギルドではやっていけないからね」


 褒められて嬉しくなったのか、鼻歌交じりで、紙にペンを走らせていくジェシカさん。


「これでよし、と。アメルちゃん、書状は後になるけど、貴女も今からE級の冒険者よ。おめでとう」


「ありがとうございます!」


 アメルは深々とお辞儀をする。


「とはいえ、冒険者としての能力はあっても、まだ駆け出しには違いないわ。カイル君と一緒に、決して無理はしないように」


「は、はい」


「それで、カイル君。まだ午後になったばかりだけど、これからどうするの?」


「そうですね。すぐにダンジョンへ行くのは危険ですし、場所だけ一緒に行ってこようかと」


「そうね、雰囲気を感じるだけでも、多少の心構えは出来るわね。初めはその位が良いわ」


 気をつけてね、とジェシカさんに見送られ、ギルドを後にした。


 目的地へ向かう最中で、今後の動きを話していく。


「今から行くのが、セバンタートのダンジョン。今日は、とりあえず外から見るだけだけにしよう」


「ダンジョン……」


「大丈夫。ダンジョンとは言っても、上層と中層はギルドの手が入ってるみたいだし、今の俺達のランクでは、上層しか行けないからさ」


 不安そうな表情のアメルに、なんともないことを伝える。


 ギルドが管理しているダンジョン。上層での怪我人はどうしても出てしまうが、死者はほぼゼロに近い。報告を受けてから、ギルド職員が助けに行くまでに迅速な対応が出来ている証拠だ。


「一番怖いのは、対処しきれない魔物の群れかな」


 魔物は、普段から二体以上の群れをなして、行動していることが殆どだ。ライムの様な希少種や、単体で動く魔物の方が稀。


 ダンジョンでは、戦闘が始まったら速やかに殲滅しなければならない。なぜなら、残っている魔物が魔物を呼び、それはいずれ大群となり、物量で押し切られてしまうこともあるからだ。


 不安を払拭するつもりが、逆に煽ってしまった様で、アメルは身体を強張らせていた。


「わ、私に対処出来るでしょうか?」


「ぼくがいるから、だいじょうぶ!」


 と、ライムなりにアメルを励ましてくれているようだ。


 俺はライムを撫でて、陣形の説明をした。


「俺、アメル、そしてライム。今はこのメンバーで、依頼だったりダンジョン攻略を、こなしていかなきゃならない。基本的には俺が前衛、アメルが後衛。ライムは、アメルと一緒に動いてもらう予定だよ」


「でも、そうしたらカイルさんの負担が……」


「無茶する気はないし、危ないと思ったら、すぐ撤退しよう。今は、経験を積んでいくのが一番良いと思う」


「わ、分かりました」


 話している内に、ダンジョンが見える場所へ到着する。


 冒険者パーティーと思われる人達が、ダンジョン前で、衛兵と話している様子だった。


 セバンタート都市外、外と言っても歩いて五分もしない所にダンジョンはある。入り口は洞窟のようになっており、衛兵が二人。いずれもギルド職員だろう。


「あれがダンジョンの入り口。衛兵に、ギルドから貰った紙を渡して入っていく感じだね」


 F級の冒険者は、その時点で衛兵に弾かれる形になるようだ。お互いの安全を保証するため、良いやり方だなと思う。


「大きい、ですね」


「パーティーが、何組入っても大丈夫みたいだからね。入ったことはないけど、中はもっと広いと思うよ」


 偉そうに説明しているが、俺自身もまだ入れていない。


 ダンジョンを眼の前にして、緊張と興奮が同居しているような、そんな感覚だった。


「何度か依頼をこなして、連携をみていこう。こなれてきたら、挑戦するってことで」


「分かりました」


 アメルにも、心の準備が必要だ。今まで農民だった子が、いきなりダンジョンに入れと言われたら、誰だって戸惑う。


「それじゃあ、これからどうしようか。まだ早いけど、明日に備えて宿を取ろうか? それとも、依頼を見にギルドに戻る?」


「あ、あの」


「どうした? アメル」


「いえ、あの……駄目だったら全然良いんですけど」


「うん?」


「依頼を受ける前、に、訓練、したいです。その、このパーティーで」


 ……訓練か。考えたことも無かったな。アメルの提案も一理ある。いきなり、実戦をしながら連携していこうというより、まず訓練してみて実戦に投入した方が、スムーズに出来るに決まってる。


「訓練、良いんじゃないかな。連携の話も、していた所だから丁度良いし」


「あ、ありがとうございます!」


 アメルは嬉しそうだ。あの男に、自分の意見は通らなかったんだろうなと、やるせない気持ちにもなってしまった。


 同時に、アメルが喜ぶことは可能な限り叶えてあげたいなと、改めて思った。


「じゃあ、ここでは難しいし、さっきの草原に行ってみようか」


「はい!」


 歩き出すアメルの足取りは、とても軽やかだった。

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