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監視者

 ボカティオパレスより、通達が来た。名はカイル、従魔はスライム。


 僕は、頭をかきながら通達文を眺める。


「……ホントかぁー?」


 僕に来る通達は、対象者が善か悪か、見極める事が主になる。そして、悪だった場合、または悪に染まってしまった場合、速やかに処分すること。【監視者】は、僕の二つ名みたいなもんだ。


 今回通達が来たのは、最近E級になったばかりの冒険者だ。職業が【従魔士】という、珍しい職業であること以外、パッとしない。差出人の名は、その館の主からだった。


「……ギルドも、ランクスちゃんには甘いねぇ」


 僕には厳しいけど、と自嘲しながら支度を進める。


 なんでも今日、付き人が昇格試験を受けるから、同行しろとの事。


 支度を済ませ、ギルドへ到着する。件の人物達を発見し、声を掛ける。


「お待たせ-」


 --途端に、寒気がした。


 通達された人物の肩に乗っているスライム。報告にあった希少種だろう、こいつはヤバい。


「紹介するわ。今回貴方達に同行する職員よ。見えないだろうけど……」


「……それ、酷くなーい?」


 咄嗟に構えるところだった。ジェシカちゃんが紹介してくれた事で、平静を保つ。


 希少種とはいえ、所詮スライムだろうと思ってたことを懺悔したい。僕でも勝てるか怪しい魔物とは聞いてないぞ本部。


 どうやら、テイムをした当人の言うことは聞くようで、なるほど。これは通達がきてもおかしくないか。ランクスちゃんも、熟練の【鑑定士】だもんな。


 一緒に同行している間、報告とは別に、ある程度最近の事情も把握することが出来た。


「なるほど……ある程度の事情は聞いていたけど、大変だったね」


 本人の素行は、今のところ問題無さそうだ。二年も腐らずに、冒険者をしてきた所からも好感が持てる。


 後は、彼自身の能力を把握したい。


 依頼を達成した後に、無茶なお願いをしてしまった自覚はあるが、彼は何も聞かず、承諾してくれた。


「いくぞ、従魔融合!」


 スライムと、スキルで融合したカイル君を確認する。馬鹿かと思った。


(打撃、斬撃無効、おまけに再生能力だって!? 化物かよ!)


 僕の個人スキル、千里眼は、行ったことのある場所や、会ったことのある人物を、何処にいても、スキルを使って視ることが出来る。本人が眼の前にいれば、スキルの看破も可能だ。ポッと出の【鑑定士】より、精度は高いかも知れない。


 故に、付いた二つ名が【監視者】。僕は、この名前があまり好きじゃない。


(もうちょっと格好いい二つ名が良かったな。【慧眼の剣客】とか【お見通し侍】とかさ)


 従魔融合をしたカイル君は、スキルを複数持っている、厄介な魔物となんら変わりがなかった。


(魔術耐性弱化なんか、オマケみたいなもんだな。いざ、その時が来たとして、勝てるか本当に分かんないな。それに、本人も伸び代だろうし、これからどんどん研鑽していくだろう)


 そう思っている内に、カイル君は手早く、三体のアルミラージを倒してしまっていた。昇格試験では倒せなかった、と言われても、誰も信じない位には手際が良い。


「これ程とはね……」


 僕は、流石に驚きを隠せなかった。

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