積年の恨み
「助けてくださって、ありがとうございました」
アメルが深々とお辞儀するのを、そんな畏まらなくていいよと、リョウさんは笑いながら告げる。
「いいのいいの。これも仕事の内だしね」
「リョウさんって、やっぱり【侍】だったんですね」
「カイル君。男は多くを語らないもんだ……その方が格好いいだろう?」
そんなことを言ってすぐに、まぁ【侍】なんだけどね。と、ドヤ顔をするリョウさんに、俺は気の抜けた声を出すことしか出来なかった。
--【侍】
刀の扱いに特化した職業であり、一番の特徴は、構えというスキル。その構えから、多彩な技へ派生することが出来るらしい。
構え中は、その場から動けなくなるのが欠点とも聞いてたが、リョウさんの技を見た時、本当に欠点かと疑問に思ってしまった。
「さて、カイル君。アメルちゃんも合格したことだし、依頼は達成したね」
「はい。リョウさんのお陰で、怪我なく終われました」
俺は、何もしてない完全な見物人だったけど。それでも、アメルが頑張ってくれた事と、リョウさんの凄さを見れたことは収穫だったな。
「そして、ここからは僕個人のお願いなんだけど。君の戦闘も見てみたいんだけど、どうかな?」
「俺の、ですか?」
「そう」
俺の戦闘を見たいというリョウさんは、さっきの楽しそうな雰囲気ではなく、真剣な表情でこちらを見ていた。
【従魔士】としての、俺の力量を見たいって感じだろうな。
「分かりました」
草原には、まだ何体かアルミラージが残っている。農民時代の恨みを晴らすにはうってつけだ。ついでに昇格試験の分も。
リョウさんが、アメルに付いてくれているから、心配なさそうだ。俺は、肩にいるライムに話し掛けた。
「ライム、移動は任せる。目標は、さっきのウサギ達だ」
「おっけー!」
「いくぞ、従魔融合!」
ライムが、俺の中へ溶けて混ざり合う感覚。俺は、腰から短刀と長刀、丁度中間くらいな刃渡りの剣を抜く。ティアジャールさんに作ってもらった剣で、手に馴染んでいる。今までの俺を支えてくれた、大事な武器だ。
(アイツからだー!)
ライムが、滑るように加速する。アルミラージ迄の距離は一気にゼロになり、驚いて、こちらを見上げるだけのアルミラージ。
この距離なら、外さない。農民時代とFランク依頼での思いを込める。
「積年の恨み!」
剣を振り切ると、その切っ先がアルミラージの胴を斬り、その個体は力無く倒れた。それを見ていた二体。一体はこちらに向かって突進、一体は逃走しようとする。
(にがさないよー!)
突進してきたアルミラージをするりと避けて、ライムは俺の身体を使ってどんどん加速する。
遂に逃走したアルミラージを追い越し、回り込んだ。慌てて軌道を変えようとするが、その前に一振り。耐久は低いようで、俺の攻撃でも当たれば致命傷の様だ。
振り返ると、再び俺へ向かってもう一体が、突進してきていた。軌道を変えることなく、猪突猛進。まるで猪のようだ。
「……これなら、俺一人でも対処出来たんだけどなぁ」
アルミラージの角が、眼の前に来た瞬間、俺は身体を斜めに構え、闘牛士のように突進を避ける。そのまま、隙だらけの胴に剣を振り下ろす。
アルミラージは、振り返ることなくそのまま地面に倒れ、再び動き出すことはなかった。
「これ程とはね……」
戦闘を見たリョウさんが、驚いた表情で呟いていた。




