アルミラージ
「なるほど……ある程度の事情は聞いていたけど、大変だったね」
奇抜な格好とは違い、やはりギルド職員と言うべきなんだろうか。リョウさんは、俺達の話をしっかりと聞いてくれた。
「じゃあ、アメルちゃんもE級になったら、一緒にダンジョンに行くのかい?」
「はい、出来ることなら一緒に行動したいです」
えらいねぇ、とアメルを大袈裟にも見えるリアクションで褒めるリョウさん。
歩きながら話していた俺達は、目的地である草原に到着する。
「えっと、今日の依頼はなんだっけ……そうそう、アルミラージ三体以上の討伐だったね。本来は、ドロップアイテムの角が欲しいところなんだけど、僕が見てるから討伐だけで良いよ」
アルミラージ、一角獣とも呼ばれている。ウサギ型の魔物であり、農民の天敵だ。
何故か収穫時期になると数を増やし、畑は食い荒らす、酷い所は家畜も、頭の角で刺され殺されてしまうことだってある。
普通のウサギと比べて一回りも大きいくせに、ウサギより速く、農民ではとても捕まえられない。反撃をされたら、大怪我になってしまうこともある。
故に、農民を生業とする者から、害獣認定されている。俺も被害を喰らった一人として、ヤツの事は嫌いだ。
都市外に出てすぐにあるこの草原は、草食系の動物と魔物が混在している。お互いに草を食べており、警戒は感じられない。目的のアルミラージも目視できた。
「カイル君。アルミラージの討伐経験は?」
「昇格試験で受けたんですけど、動きが速くて駄目でした」
E級の冒険者、特に戦士系はアルミラージの討伐に苦労しているはずだ。攻撃してくれれば反撃の余地があるが、アイツら基本的に臆病で逃げ回るから、まず捕まえられない。
「そうなんだよね。気付かれないで仕留めるか、アルミラージよりも速く動くか。さて、彼女はどうかな?」
アメルはクロスボウを用意して、弾を装填している最中だった。
「アメル。アイツらは基本逃げ回るだけだから、攻撃に専念して良いよ。胴体を狙うと当てやすいと思う」
「分かりました」
緊張の混じった声で返事をするアメル。クロスボウの射程まで、まだ遠い。ゆっくりと歩きながら、アルミラージとの距離を詰めていく。
ピクッと、一体のアルミラージが耳を動かした。頭を動かしアメルを見つけると、脱兎の如く走り始めた。
「あ、バレちゃったねー」
と、呑気に言うリョウさん。
「……っ!」
アメルは、クロスボウを構え、アルミラージへ向ける。ジグザクに軌道を変えながら逃げるアルミラージ。
射出した弾は、お尻の部分に見事命中した。痛みで声を上げるアルミラージ。
「や、やった……!」
やりました! と笑顔でこちらに振り返るアメル。その様子を見ていた、近くのアルミラージ二体が、血相を変えてアメルへ突っ込んできた。
アルミラージは臆病だが、仲間意識は強い。仲間をやられたことに憤慨したみたいだ。
「アメル!」
アメルはまだ気付いていない。向かって突進してくるアルミラージを止めようと、前へ出ようとした時、横で刀に手を添え、構えを取っているリョウさんに気付いた。
「一閃」
キン、という高音だけが辺りに響いた。リョウさんは、構えの状態から動いていない。
だが、離れた所にいた、アメルへ突進してきた二体のアルミラージは、そのまま力無く倒れた。
アメルは、後ろの物音で振り返り、アルミラージが側で倒れているのを見て、自分が攻撃されそうになっていたことに気付く。
「アメルちゃん合格ー! だけど、その後の周辺確認は怠らないようにね?」
構えを解いたリョウさんは、愉快そうに笑っていた。




