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初めての依頼

「これはレアケースだけど、事例はあるわ」


 翌日、ギルド本部にて。依頼を受けたいと、アメルが意気込んでくれたので、俺達はFランクの依頼を見に来ていた。その時、ジェシカさんに声を掛けてもらった。


「まず、アメルちゃんが後衛職であること。そして身体が万全ではないこと。初めての依頼であること。一人で依頼をこなすのは難しい。ので、例外としてE級である、カイル君の同行を許可します。」


 まずはこれからね、とジェシカさんは、アメルへF級の認定書を渡す。これでアメルも冒険者だ。


「あ、ありがとうございます」


「それからアメルちゃん。ティアジャールさんからこれを受け取っているわ。貴女、お気に入りになったみたいね?」


 アメルへ渡されたのは、クロスボウガンの弾、二十発。その内、三発は赤色になっていた。


「ティアジャールさんから伝言よ。『あの娘に弾は二十発もいらん。それでも、有事があって弾切れになったら困る。余すだろうから、二十発だけ渡せ』、とのことよ」


 ジェシカさんは、クロスボウの弾を随時ティアジャールさんが補充してくれるから、依頼前に寄ってくれれば渡せるわ、と伝えてくれた。


「こ、この赤いのは何ですか?」


「あぁ、これは有事の時専用みたい。それも、人には絶対使うなと厳命を受けたわ。特殊な弾みたいね」


「わ、分かりました」


 弾をしっかりと受けとるアメル。だが、次第にオロオロし始めていた。


 そういえば、靴と籠手までくれたのに、弾と、装備を収めるポーチ付きベルトをくれなかったなあの人。


 俺が思ったのと同時に、その様子を見て察してくれたジェシカさんが、奥から腰に巻くポーチ付きのベルトを持ってきてくれた。


「……今回は、ギルドから支給するわ。F級の冒険者を支援するのも、ギルドの役目ですからね。それはそうと、カイル君? 装備はちゃんと見てあげないとダメじゃない! クロスボウを片手に持って都市内を歩くとか、アメルちゃんを不審者にする気?」


 そういえばアメル、都市内は両手でしっかりとクロスボウを握ってたな。宿では椅子のところに置いてたし。皆からの視線は、いや、まさかな。


「……すみません」


 とはいえ俺の落ち度だ。ぐうの音も出ない俺に、全くもう、と言いながら、ジェシカさんはカウンターから出てきて、ベルトの巻き方をアメルに教えていく。


「こうして……こう。アメルちゃんは、右利きで良かったわね?」


「はい」


 教え終わったジェシカさんは、満足そうだ。アメルの腰には、ピッタリとベルトが巻かれており、右側にクロスボウを収めるホルダー。左側に弾入れ。後ろに、アイテムが入るポーチが付いていた。


 アメルも、自分の腰を振り返りながら確認している。なんだか楽しそうだ。


 カウンターへ戻ったジェシカさんは、それともう一つ、と言って俺達にこう告げた。


「二人のことを知っているから、無いことは分かってるんだけど、不正防止の為、ギルド職員を一人、同行させる決まりになっているの」


 俺が一人で依頼をこなし、アメルは見ているだけとならない様にって事か。


「そうなんですね。それは、ジェシカさんが一緒に来てくれるんですか?」


「残念だけど、私じゃないの。今回は本部から推薦があったみたいで、連絡したから段々来ると思うんだけど……」


 ジェシカさんがそう言っていると、カウンター奥の方から、お待たせ-とのんびりした声が響いた。


 その人は成人男性のようで、薄緑の長髪を後ろで縛っており、左耳にはピアスが沢山開いている。首もとにあるのは、砂煙を防ぐゴーグルの様な物があり、もっとも眼を引いたのはその格好と武器。


 情報しか知らないが、南の地方で一時期流行ったらしい、和服という名だったはず。に、身を包んでいる。落ち着いた色合いと聞いていたが、この人が着ているのは、奇抜な色が複雑に絡み合っており、本当に和服か怪しい。


 それと、右腰に装備している武器。ティアジャールさんが言っていたな。


 難しいが作り甲斐がある。本物は切れ味と耐久性が抜群だと。そう言って、本人が真似て作ったというそれも大概な切れ味だったが。


 その武器の名は、刀。長めの刀と、短めの刀。二本が鞘に収まっている。


「紹介するわ。今回貴方達に同行する職員よ。見えないだろうけど……」


「……それ、酷くなーい?」


「そう思われない様に、格好と言動を直しなさいよ……」


 溜め息をつくジェシカさんに、愉快そうに笑う男性は、こちらに向き直り、挨拶をする。


「どーも。リョウっていいます、よろしくね!」


 気合いの入ったウィンクをされて、俺達は、苦笑を返すことしか出来なかった。

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