宿にて
所持金も、ティアジャールさんのお陰である程度余ってくれたので、宿はすんなりと取れた。
もしスッカラカンだった場合、ギルド本部から、借金の形になってたかと思うと気が滅入る。流石に傷は癒えたとはいえ、初陣のアメルを、お金の為に、危険な目に合わせるわけにはいかない。
もう、なんか全部ランクスのせいだ。今度、文句の一つでも言ってやろうと思いながら、部屋から出る。
部屋は二つ取り、ライムはアメルの護衛に付いてもらった。何かあったとしても、ライムがいれば恐らく大丈夫だ。
俺が下へ降りると、席を取っていてくれたアメルとライムが手を上げてくれた。
「カイルさん、こっちです」
「こっちこっちー!」
ライムは普通に喋っている。が、他の客に驚く様子はない。ジェシカさんの一件で、冒険者の間では、『ジェシカさんを驚かせたスライム』として認識されている様だ。それでも視線は感じるが、話し掛けては来ないし、大丈夫そうだ。
俺は、対面の席について話し始める。
「お待たせ」
「おなかへったよー!」
「そうだな、皆で食べれるもの何か頼もうか」
すみません、と店員に注文を入れる。注文を終えた後に、アメルがおずおずと口を開いた。
「あの、お部屋まで取ってもらって……宿泊代が倍に」
「あぁ、それはティアジャールさんがお金を余してくれたからね。勿論、段々苦しくなっていくから、アメルにも頑張ってもらわなきゃだけど」
「それは、勿論です!」
アメルが勢い良く返答をしてくれると同時に、お待たせしました-と、店員が料理を運んできてくれる。ここは味も良いが、注文してからすぐ持ってきてくれる為、客から好評だ。繁盛しているのも頷ける。
「熱いので、お気をつけ下さーい」
置かれた料理を、まじまじと見つめるアメル。野菜を色々と入れて、甘辛な調味料で炒めた料理。野菜炒めというやつだ。
俺は取り皿に、アメルの分を入れて差し出した。
「はい、冷めない内に。量は食べれるだけでいいよ、最終的にはライムが全部食べるから」
「ぼくは、おおぐいだ!」
「皿は食べるなよ?」
アメルは、俺達の会話に微笑みながら、いただきますと言って野菜炒めを口へ運ぶ。口の中へ入れた瞬間に、眼を見開いていた。
「どう? ここの野菜炒めは、ご飯が進むんだ」
「とっても、美味しいです……!」
そう言いながら、アメルの眼には、うっすらと涙が浮かんでいた。
無理もない。あの環境で、温かい料理が出てきたのかも疑問だ。
俺から聞くことはないが、話をしてくれる時は、何かしてあげれたらと思う。
「これからも、皆で食事を食べよう」
「はい……お願いします」
涙を流しながら、野菜炒めを頬張るアメル。美味しいですと言うアメルに苦笑しつつ、俺も自分とライムの取り皿に、野菜炒めを盛る。
「よし、俺達も食うぞ!」
「おー!」
ライムは時折、自分のがあるのに、俺の皿へ腕を伸ばしてつまみ食いをした。それを見て笑うアメル。
その後、俺達はお腹一杯になるまで、談笑しながら美味しい料理を頂いた。




