試し打ち
ティアジャールさんに付いてきて、やってきた場所は店の裏側。
大きめな長方形の土地が、綺麗に整地されており、そこには、人間サイズの土人形が何体か置かれていた。
「嬢ちゃん、ちょっと来い。ここに立て」
手招きをしてくるティアジャールさんに、困惑した様子で俺を見てくるアメル。大丈夫と俺が頷いたのを見て、アメルは急いで、ティアジャールさんの元へ駆け寄った。
もうちょっと愛想がいいと、お客さんも増えると思うんだけどなぁ。
「嬢ちゃん、弦を引け」
ここだ、と武器の説明を始めるティアジャールさん。アメルも必死になって話を聞く。
弦が張り、固定された後、弾をセットする。カチッと小気味良い音で、射出台に収まる。
「これが射撃可能な状態だ。人には向けるな、いいか?」
「は、はい」
「よし、構えろ。狙いはあの人形だ」
ティアジャールさんが指差す方向には、土人形がいる。距離およそ十五メートル程度。クロスボウの射程も、大体そのくらいだったはずだ。
「後は引き金を引くだけだ。反動は無い、当てろ」
「……っ!」
アメルが引き金を引く。シュッとほぼ無音で射出された弾は、土人形の頭部へめり込んだ。
「ほら、見ろカイル。貫通すらしねぇ、これがオモチャじゃなくてなんだ」
ティアジャールさんは、めり込んだ所を指差して、呆れたように言う。
「いやいや、ギリギリの射程でこれは、ヤバい威力なのでは……」
「それにしても頭部に当てるとはな。嬢ちゃん、もう一回やってみろ」
「はい!」
アメルは、説明された手順で再度装填する。そして、もう一度放った弾は、またも頭部に直撃した。
「【射士】ってのは、すげぇな……」
感心するティアジャールさん。その後、試し打ちは終わりといった様子で、何も言わず店内へ戻っていく。俺達も後へ付いていった。
店内へ戻り、ティアジャールさんは椅子へ腰掛けて、こう告げた。
「力量はわかった。クロスボウは貸してやる、壊すなよ」
「え、貸してやるって……?」
「嬢ちゃんに合う武器、作っといてやる。その時返してくれ。作った武器の代金は貰う」
「わ、分かりました。ありがとうございます」
「それと、駆けっこ得意だろ。これやるよ」
そう言って、ティアジャールさんは、一足の靴と、一式の籠手を渡してきた。
「基本は援護だろうが、近接にならんとはいえん。それも着けておけ」
アメルが履いていた靴は、ギルドから支給されたものだ。日常生活に不備はないが、戦闘向きかと言われると、決してそんなことはない。
アメルが靴を履く。すると、測っていたかのように、足がピッタリと収まった。
「凄い……! 足に馴染みます」
「そうか……じゃ、またな」
ティアジャールさんは、満足そうに立ち上がると、手を上げて工房へ行ってしまった。
「あの、靴のお代--」
閉められた扉から反応は無い。その後、少しして、鉄を叩く音が聞こえ始めた。
「……こういう人なんだよ。いい人なんだけどね」
「……いい人なのは、分かりました」
苦笑する俺に、釣られて苦笑を返すアメル。それじゃあ行こうかと、ティアジャールさんに挨拶を投げ掛け、俺達は店を後にし、宿を取ることにした。




