鍛冶士
商店街から少し外れた所に、その場所はある。看板等は無いが、中から金属を叩く甲高い音が、リズム良く聞こえていた。
俺達は、扉を開けて中に入る。が、店内には誰もいない。奥の扉から聞こえる音に向かって、大きめの声で話し掛けた。
「ティアジャールさーん! カイルです!」
反応は無い。
「えっと、これは無視されて、いるんですかね?」
叩いている音は続いており、一向に止む気配がないことに、アメルがおずおずと尋ねる。
「いや、これはティアジャールさんが集中してる時によくあることなんだ。とりあえず、店内を見ながら待ってようか」
「は、はい」
店内を見渡すと、壁やショーケースに、これでもかと武器が詰め込まれている。
ダガーや投げナイフ等の短刀から、ロングソードやレイピア、槍やハルバードみたいなのもある。
始めてみるであろう光景に、アメルは目を輝かせて眺めていた。
「わぁ……どれも凄いですね」
「全部一人で作ってるんだから凄いよね」
それから十分程経っただろうか。金音が止み、奥の扉から、ここの店主が出てきた。
「なんだ、来てたのか」
そう言うと、汗だくの店主は椅子へ腰掛け、コップに入っていた水を一気飲みする。
「相変わらず無用心だね、ティアジャールさん。盗まれたらどうするのさ」
「ここにあるのはガラクタだ、持っていかれても構わん。大事なのは、工房に全部置いてある」
まぁ、ギルドに通報するし、その分働かせるがなと呟く。
【鍛冶士】ティアジャールさん。
中央都市セバンタートの【鍛冶士】において、一、二を争う腕の持ち主。体格が良く職人気質であり、多くは語らないが、いい人である。
俺のいた村から【鍛冶士】と鑑定されたのが、ティアジャールさんだ。左目に眼帯をしており、伝えたことはないが、格好いいと思ってる。
ティアジャールさんが、ガラクタといっていた店内にある武器は、騎士団が好んで使っている得物であり、切れ味も耐久性も抜群だ。この大量にある武器を、全て把握しているのも凄いことだ。
「それで? 何か用事か?」
「実は、この子の装備が欲しくて」
紹介をしたアメルが、深々とお辞儀をする。ティアジャールさんはそれを見て微笑んだ。
「今時、珍しい礼儀の良い子だな。職は?」
「【射士】です。今日、変わったばかりになります」
「そうか。お嬢ちゃん、戦闘経験は」
「……ありません」
そうか、と素っ気ない返事を返し、ティアジャールさんは、店の奥にある工房へ戻っていく。その後、手に一丁の得物を持ってきた。
「そ、それは何ですか?」
「クロスボウだ。俺の暇潰しに作ったから小型だが、初めてならこれでいいだろ」
ほれ、とクロスボウを投げてくるティアジャールさん。アメルは慌てながらも、両手でしっかりと受け止めた。
確かに、アメルの両手から少しはみ出る位のサイズで、取り回しも良さそうだ。
「ティアジャールさん、これいくらになります?」
「こんなおもちゃで金取れねぇよ。付いてこい」
そう言って、店から出ていくティアジャールさん。
「お金は要らないって……良いんでしょうか」
「あの人は、一回言うと曲げない人だから。とりあえず付いていこう」
早く来いと、ティアジャールさんに急かされ、俺達は慌てて後を追いかけた。




