表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/73

転職の館.2

「さて、と」


 ランクスは、眼でどっか行けと俺を睨み付けてくる。


 俺が後ろに下がると、アメルを手招きして対面の椅子へ座らせる。


 仕事道具の眼鏡をかけ直し、机を挟んでランクスがアメルへ話し掛ける。


「ごめんね? 話し込んじゃって。私はランクスっていうよ。よろしくね」


「あ、アメルです。よろしくお願いします」


 にこやかに話し掛けてくるランクスに、アメルはどうしていいか分からない様子だ。


「アイツとは腐れ縁だから。ウチは、普段からおしとやかなんだよ?」


「おしとやかな人は、一人称がウチにはならんと思うぞ」


 そこ、黙ってろい! とランクスは指差ししてくる。言いたいことは山程あるが、話が進まないので、大人しく見守ることにした。


「大体こんな所に缶詰にされて、お客さんは殆ど年上だし、女子がくるのなんか稀なんだよ? 年頃の女の子に酷いと思わない?」


「は、はぁ」


「たまに外に出れたと思ったら、護衛もバッチリつけられてさ。行くとこも貴族の所とかだったりして、観光も出来やしない!」


「おーい、ランクス?」


「だから、同じ年代の子が来てくれて嬉しい訳よ! 分かる?」


 めっちゃ不満出てるけど。ギルドこれ、ランクスのガス抜きもしてやってくれ。


 後方で、控えているフルーラさんと眼があった。フルーラさんは微笑みながら、手で謝ってくれた。


 まぁ、フルーラさんが居るし大丈夫か。俺は謎の安心感を覚えていた。


 机では、マシンガントークを続けているランクスと、困惑しながらも、ちゃんと相槌を打っているアメルの姿があった。


「そんな訳だからさ! ……とと、話が逸れちゃったね。それじゃあ本題に入ろうか」


 そう言うと、ランクスは引き出しから書類を取り出した。


「じゃあ、アメルちゃん。ここにサインだけお願いね? 怪しい書類じゃないよ、ギルドからの正式なやつ」


 机に置かれた書類を真剣に読むアメル。俺も後ろから、何が書いてあるか確認しようとするが、嫌そうに俺を見ていたランクスが、先んじて内容を話してくれた。


「これはね、ざっくり言うと、どんな職業になっても文句は言わないでねっていうのと、返金は出来ませんっていうやつ。後、一人につき一回しかスキルが使えないから、変わったら元に戻せないけど、それでも良い? って内容が書いてあるよ」


「一人一回なのか」


「そーだよ。前に、お前みたいなレアな職業変えたら、ウチが消されるって言っただろ。取り返しきかないの」


 一人一回しか効果がないのは初耳だった。それでも、アメルの意思は変わらない様だ。真剣な表情で、スラスラとサインを書いていく。


 その様子を見て、ランクスは口角を上げた。


「これで、良いですか?」


「……アメルちゃん、貴女良いね! そこのとは大違いだ、勢いが良い!」


「おい」


「そこまで意志が固まってるなら、何も言わなくていいね。すぐに始めるけどいい?」


「は、はい! お願いします!」


「良い返事だ。おい、カイル。前払いだ、先に寄越せ」


「お前、俺の扱い酷くない?」


 手をクイクイと、俺へと向けるランクス。


「金の件とか、職業が変わった後とか、前は色々あったんだよ。今はこの形に落ち着いたの」


 はよ寄越せと催促をするランクス。渋々、十万の入った包みを机に置く。ランクスは、それを手に取り、後ろのフルーラさんに放り投げる。


 フルーラさんは、投げられた包みを見事にキャッチして、そこからお釣りの一万を取り出し、俺の元へ。丁寧に返してくれた。


「いつも、ランクス様と親しくしてくださり、ありがとうございます」


「いえ、フルーラさんも、お疲れ様です」


「いえいえ。ランクス様を見ているのは、楽しいのですよ?」


 では、と俺に一礼して、フルーラさんはランクスの後ろへと戻り姿勢を正す。


 よし、やるかっと、ランクスはストレッチをしながら、指を慣らしている。


 アメルは、後ろ姿でしか分からないが緊張してるんだと思う。今後の--それこそ人生を決める大一番だ。緊張しない方がおかしい。


 それに比べて、ランクスはいつも通りの調子で、事を進めていく。


「それじゃあ、いくよ?」


 アメルの身体が、一瞬強張った。


「……よろしく、お願いします!」


 ランクスは両手をアメルへかざし、スキル名を口にする。


「職転」


 目映い光がアメルを包み込む。しばらくすると、光は収まり、静寂が訪れる。


「よし、と。それじゃあ、確認するよ」


 ランクスが、アメルを見つめる。【鑑定士】のスキルだ。熟練度次第で、相手のステータスを丸裸に出来るらしいが、村の鑑定で、ランクスが職業を確認できることは知っている。


 職業とスキル、噛み合ってるよなぁ、と俺は改めて感心した。


「……うん、うん。珍しいのに変わったね」


「何に……なったんですか?」


 当事者のアメルも、自分の職業が何になったかは分からない様子だ。


「んーと、【射士】だね」


 聞きなれない職業に、アメルはピンときてない様子だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ