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アメルの気持ち

「アメルです……よろしく、お願いします」


「カイルです……よろしく」


 畏まった挨拶から始まったこの場。


 俺とアメルは、ギルド本部の奥にある個人面談室なる場所で、ジェシカさん立ち会いの元、話し合いの場を設けてもらった。


 合意書には、アメルのサインが書かれていた。つまり、俺はアメルの身元を引き受けた形になる。


 アメルは、そこまでした俺にどう接して良いのか分からない様子で、目を泳がせている。


「ほらほら。そんなんじゃ、これから先大変よ?」


 ジェシカさんは、俺達の様子を見て苦笑する。そして、話が進むように促してくれた。


「二人が今後、どうしていきたいかを話し合う場でしょう? まず、カイル君から話してみましょうか」


「はい。……俺は、これからも冒険者を続けます。アメルには、合意書に書いてあったと思うけど、衣食住の心配はさせない。約束するよ」


 合意書にあった条件とは、本人の衣食住の安定。それと、自由意思の尊重だ。


 本人が、この関係を解消したいと言った時、身元引受けの立場は抹消される。俺自身からは、それは出来ない。


 せめて、アメルが職を見つけたり、安住の地を定める時までは、一緒にいることが出来れば良いなというのが俺の考えだ。


 アメルにはしばらくの間、俺が依頼をこなしている内に、先に宿を取ってもらったりするのが、メインの動きになると思う。あわよくば、料理が出来るなら手料理を作ってくれると嬉しいな、なんて妄想もした。


 だが、アメルは予想外の事を口にした。


「私も……冒険者に、なりたいです」


「「えっ」」


 アメルの発言に、思わず俺とジェシカさんは同時に声を出してしまっていた。


 慌ててジェシカさんが、やんわりと止めに入る。


「ち、ちょっとアメルちゃん。冒険者って格好いいと思うかも知れないけど、とても危険な仕事なのよ?」


「それは……分かってる、つもりです。でも、自分だけ、何もしないのは嫌で……出来るなら、カイルさんのお役に立ちたいです」


 と、言ってくれた。その声は控えめながらも、アメルの表情は真剣そのものだった。


 ジェシカさんは、困った顔で俺を見てきた。彼女の決意は固そうだ。だが、そうですかと応援するには、判断に困っている様だ。


 俺は、アメルにある事を提案してみることにした。


「そう思ってくれる気持ちは嬉しい。でも、自由になった君を、わざわざ危険な所に連れていくのは気が進まない」


「……」


 アメルは俯いて、何も答えない。俺からの正論には言い返しにくいんだろうな。


「それに、アメルの職業は【農民】なんだろう? 冒険者になるには、余りにも危険だよ」


「それはっ、でもっ! それでも……!」


 アメルは、目に大粒の涙を溜めながらも、必死に自分の意思を伝えようとする。試した訳じゃないが、決意が強いことを改めて確認出来た俺は、話を進める。


「だから、条件を出す」


「……え?」


「アメルの【職業】を変える。それで、冒険に向いている職業なら一緒に行動しよう。……ここが妥協案なんだけど、どうかな?」


 アメルは、居住いを正し真っ直ぐに俺を見る。そして、覚悟の決まった声で答えた。


「それで、大丈夫です。お願いします!」


「よし。じゃあ、行こうか。ジェシカさん、ありがとうございます」


 俺達が立ち上がり、ジェシカさんへ声を掛けると、展開の早さについていけないといった様子で、俺へ問いかけてきた。


「カイル君、職業を変える……ってことは、あそこへ行くの?」


「はい。預けてあった報酬金の処理をお願いします。あそこはお金が掛かるので」


 苦笑する俺に、分かったわと返事をし、慌ただしく室内を後にするジェシカさん。アメルは困惑の表情で、俺に聞いてきた。


「あの、これからどこかへ、行くんですか? それに、お金がいるって……」


「そう。この世界で唯一、他人の職業を変えることが出来る、アホみたいなスキルの持ち主の所へね。」


 そう笑って話す俺に、アメルは不思議そうに首をかしげた。

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