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ギルドまで

 村を抜けて、街道を歩く。


 一階へと上がった時、家主である男は、酒を浴びるように飲んでいたようで、俺達が横を通り抜ける際も盛大なイビキをかいていた。机には数本の空瓶と、山盛りの食事や果物が、食い散らかされていた。


 アメルは、男を一度見ただけですぐ視線を外し、俺の後に付いてきた。


「それにしても、随分景気が良さそうだったな」


 あの生活は、農民ならお金に余裕がないと出来ない筈だ。


 横にいたアメルが、一瞬ビクッと反応した気がしたが、特に何を言うでもなく付いてきてくれる。


 アメルは、靴を履いていない。玄関で探したが、ここにはないと本人が首を振っていた。


 持っていたのは、逃げ出した時に履いていた一足だけだったようだ。


「よし、ここまで来ればいいか」


 俺は足を止めて、アメルへと向き直る。


「な、何ですか?」


 アメルは、どうしたらいいか分からない様子で、目を泳がせている。


「村の中で、目立つ訳にはいかないからね」


 俺はそう言って、ライムと従魔融合をした。アメルは、驚いた様子でこちらを見ている。


「……これが君を助けに行けた理由さ。【従魔士】のスキルなんだ」


「【従魔士】……」


 アメルは、噛み締めるように呟いた。そして、俺に深々と、お辞儀をしてきた。


「あ、あの……ありがとう、ございます。何とお礼を言ったらいいか」


「いいよいいよ、俺が勝手にやった事だから。それはそうとアメル、お願いがあるんだ」


「な、なんですか?」


「背中に、乗って欲しいんだ」


 アメルは何故と言った様子でこちらを見てきたが、やがて、察してくれた様子で、屈んだ俺に身体を預けてくれた。


「……お願いします」


 アメルの足は、治療されていなかった。そのせいだろう。初めて出会った時の様な、足の速さはなく、一歩一歩進む度に苦痛で顔をしかめていた程だ。


 男の様子を見た限り大丈夫と思うが、いつ起きるか分からない。それに街道とはいえ、魔物と出会わないでギルドまで行ける保証もない。


 そんな中、アメルを庇いながらの戦闘は危険と判断し、まだこっちの方が良いだろうと英断した。


 アメルをおぶさり立ち上がった俺に、うずうずとしているライムが聞いてくる。


(いってもいいー?)


「ま、まだ待ってくれ! アメルに説明しなきゃ危ないだろう」


 ライムは、早く行きたそうにしているが、アメルへ断りを入れないと彼女が危険だ。一人で喋り出した俺へ、後ろで困惑しているであろうアメルへ話し掛ける。


「ごめん、ライムが話し掛けてきててね」


「そう、だったんですね」


「俺にしか聞こえないのは難点だね……アメル、もう暗いから、街道とはいえ危険なんだ。早めにギルドの方へ行きたい」


「はい。だから私を、おぶってくれたんですよね」


「そう。ここから二人共、怖い思いをするかもしれないから、心の準備だけしておいて欲しい。あと、しっかり離れないようにしてくれると助かる」


「よく、分からないです、けど……信用します」


 お願いしますと、俺の首にしっかりと手を回してきた。


「よし、いいぞライム。目標はギルド本部、なるべく早くだ」


(オッケー!)


「あ、あのこれからどうす--」


 アメルの声は、途中で遮られた。おぶさっているアメルを抱えている手だけ、俺の意識を残し、ライムに身体の主導権を渡した。


 やっほーい! と、ライムは俺の身体を、滑るように走らせる。


 その動きは、どんどん加速していき、前で走っていた馬車を追い越すほど。次々と、景色が移り変わっていく。


「うわぁああああ!!」


「キャーーー-!!」


 疾走する俺達を照らすように、雲の合間から月が顔を覗かせていた。

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