少女のいる村へ
「駄目」
守秘義務があるもの。と、断られてしまった。
そう言われてはどうしようもない。ギルドも信用あってこそだから、おいそれと話せないのは承知の上だったが、やはり悔しさもある。
俺の顔を見ていたジェシカさんは、唇に指を押し当て考え込む。やがて一枚の紙に、そういえば、と走り書きをする。書き終えた紙を、俺に渡してこう言った。
「これは、個人的なお願いなんだけど……この近くの村へ、最近行けてなくてね。近況が知りたいの。カイル君さえ良ければ、頼んでもいいかな?」
「ジェシカさん、これって……」
「報酬は出来合いね、どう?」
「……やります!」
内緒ね、とジェシカさんは可愛らしくウィンクをした。
翌日。俺達は、セバンタートを出発していた。街道を歩いて、一時間位だろうか。目的の村へ到着する。
俺が住んでいた村は、ほとんどの家で家畜を飼っており、畜産業が栄えていた覚えがある。家にも鶏がいた。
ここは、村と比べて畑が多くあり、果物や野菜に力を入れている様だ。美味しそうに実っており、収穫時期を促すように、大きく育っている。
ジェシカさんは口には出さなかったが、恐らく彼女は、この村にいる。
村の様子をメモに取りつつ、周囲を見渡す。
十軒にいかない程の家が、まばらに建っており、昼前もあってか、作業してる人も少ない。彼女の姿も見当たらなかった。
作業をしていた村人へ、話を聞いてみるが、見掛けていないねぇと、言われるばかりで進展がない。
一旦、村の入り口まで戻り、立ち止まっていた所に後ろから声が掛かった。
「おや、ここに人が来るのは珍しいと思いましたが、昨日の冒険者様ではありませんか」
振り返ると、昨日の男がいた。やはり、この村で間違いないみたいだ。
男は、改めてお辞儀をしてきた。
「昨日は、本当に助かりました。ところで、今日はここで何を?」
「ギルド本部から、ここの近況を視察して欲しいと頼まれまして」
そうでしたか、と男は頼んでもいないのに、近況を話してくれる。殆どお金関係の話だった。
メモを書き終えて、男に尋ねてみることにした。
「教えていただき、ありがとうございます。あの、ところで、彼女の方は大丈夫でしょうか? 足も怪我してましたし」
「お気遣いありがとうございます。今は治療をして、家でゆっくりと休んでいますよ」
「一度、会いたいんですが、お願いできますか?」
その言葉を聞くなり、男は眉間に皺を寄せて、早口で捲し立てるように言い放つ。
「娘は今療養中と申し上げたはずです。あの娘の両親は幼くして亡くなってしまい今は叔父である私が育てています。心情的にも不安定な時期ですので余計な波風を立てたくありません。あの娘が落ち着いたらギルドを通して連絡を差し上げますので今日はお引き取りください。」
男はそう言うと、近くの岩に座り、葉巻を加え、慣れた手付きで火をつける。
「……近況を伺った際に、不景気と聞きましたけど、随分高級そうな葉巻ですね?」
「まだ、いたのか? 私はここで休憩するので、どうかお引き取りを」
煙を空へと吐き出し、棘のある言い回しで、俺から目線を外す。
用事は終わっただろう、早く出ていけという事なんだろう。男に、その場から動く様子はない。俺達が村から去るまで、家には帰らないようだ。
男へ軽く会釈をし、村を後にする。村が完全に見えなくなったところで、ライムが話し掛けてきた。
「アメルにあわなくていいのー?」
「いや、これから会うんだ。でも、会うためにはライム、キミの力が必要だ」
「おー! まかせてー!」
「よし、じゃあ今から……かくれんぼをしてるアメルを探そう」
俺は、ニヤリと笑みを浮かべ、ライムにそう告げた。




