冒険者ギルドにて
ギルドへ一緒に来て欲しいことを伝えると、少女は俯いたまま、黙って付いてきてくれた。
ライムからは、逃げられないと諦めたのか、それとも何か、他の要因があるのか。
ギルドへ着くと、大きな声で受付のジェシカさんへ詰め寄る、中年の男性が居た。
「娘はまだ見つかっていないんですか! 早くして……おぉ! アメルじゃないか!」
入り口にいた俺達を見つけると、探したんたぞと言いながら、こちらへ向かって歩いてきた。
彼女は男を見つけるなり、顔が青醒めて、酷く怯えており、俺の後ろへ身を隠すように移動する。俺の服を掴んでいる手が、小刻みに震えている。この反応は、流石におかしいんじゃないか……?
男は、ようやく俺に気がついた様子で、仰々しく話し掛けてくる。
「これはこれは……依頼を受けて下さった方ですかな? アメルを見つけて下さって、ありがとうございます。心配で心配で……ここで、待たせてもらっていました」
丁寧にお辞儀をしてくる男。恭しく頭を下げるその動作に、わざとらしさを覚えつつ、話をする。
「一応、報告義務があるので……少しお待ちください」
「それはそれは……お引き留めしました」
どうぞ、と道を開けてくれた男。横を通りすぎる時、一瞬アメルを睨み付けた様な気がした。
俺と彼女は受付へと向かい、疲弊した様子のジェシカさんと対面する。
ジェシカさんも疲れているだろうに、それでも、にこやかに対応してくれた。
「単独での依頼、お疲れ様! その子が依頼の子ね? 見つけるのは、苦労したでしょう?」
「住んでた村と違って、ここは広いですからね。ホントにたまたまでした。ジェシカさんも、大変だったみたいで……」
「そうなのよ……」
げんなりとした様子で、ジェシカさんが、小声で教えてくれた。
俺達が依頼を受けた後、またすぐに、男はやってきたそうだ。
そのままギルドに居続け、夕方になるにつれて娘はまだか、と受付であるジェシカさんに、苛つきをぶつけ始めた。ジェシカさんは、宥めることしか出来ず、そこに俺達が到着したという。
「あれ以上時間が経ってたら……って想像しただけでも、ちょっと嫌ね……」
そう言いながらも、ジェシカさんは依頼達成の処理を、紙に手早く書き走らせる。
「これでよし! と。報酬額が大きいから、本部で一旦預かっているわ。引き取りは、なるべく早くでお願いね?」
お疲れ様、と言われて受付を後に、入り口付近にいる男へと向かう。
男がこちらを確認し、醜悪な笑みをしている。少なくとも、俺にはそう見えた。
俺は彼女を連れていき、男へ話し掛ける。
「お待たせしました。報告は終わりましたので」
ギルドへ入ってからここまでずっと、服を掴んで離すことのなかった、震える彼女の手を、そっと引き剥がす。
「おぉ……アメル! 何と痛々しい姿に! さぁ、家へ帰ってゆっくりしよう!」
俺をどかす様に、彼女に抱きつく男。彼女は俯いて、されるがままだった。
その後、男は彼女の腕を強く引くようにして、ギルドから出ていった。
その時、彼女は俺の方を振り返り、声には出さないが、悲痛な表情と、口の動きで伝えてくる。
--助けて、と。
そう、言った気がした。
二人が居なくなり、ギルドにはいつもの雰囲気が戻る。アイツは何だったんだと、冒険者達も苛立ちを隠せない様子だ。
俺は、決心して受付へと向かう。一部始終を見ていたジェシカさんは、溜め息をついて呟いた。
「あの男、なーんか嫌な感じね。娘も嫌がってた様子だったし」
「あの、ジェシカさん。お願いがあるんですけど」
「何かな? 報酬金を持っていく? 処理に少し時間が掛かるから、出来れば明日に--」
ジェシカさんは、少し気まずそうに言う。
「いえ、そうじゃないんです」
「え?」
「あの男の住所、教えてもらえませんか」
俺の提案に、ジェシカさんも眼を見開いて、驚きを隠せない様子だった。




