アメル
その後、少女は逃げることはなく、俯いていた。
少女を、近くにあったベンチに腰掛けてもらい、俺も、警戒され過ぎないよう離れて座る。
今の状況で、ないとは思うが再び逃げられたら困るので、座っている少女の側には、ライムに待機してもらっている。
「えっと、足は痛くない? 大丈夫?」
「……」
「迷子、になる様子じゃなさそうだけど、何かあった?」
「……」
少女は喋らない。先程とは違った意味で、埒があかない。どうしたら良いものかと、悩んでいる時に、ライムが少女の膝に飛び乗り話し掛けた。
「ぼくはライム! オマエはなんていうの?」
「……! 喋る、スライム?」
少女が、驚いた反応を見せる。余程必死だったんだろう。ライムが喋っていたことに、今気付いた様だ。
「そう! ぼく、はなせるの! オマエはなんていうのー?」
「……オマエ、じゃないよ。私は、アメルっていうの」
クスクスと、笑う少女。アメルは、ライムの言葉に気分を害した訳でもなく、嬉しそうに微笑んだ。
ライムも嬉しかったのか、彼女の膝の上で、楽しそうに跳ねている。
和やかな空気になってきたところで、俺は、改めて話し掛けた。
「アメル、って言ってたよね。俺はカイル。依頼があって、君を探していたんだ」
アメルは、半ば諦めた様子で下を向き、呟く。
「分かってます。私は、やっぱり自由にはなれないんだ……」
か細い声で語る、その言葉の真意は俺には分からなかったが、彼女の悲しそうにしている顔を、ただ、見つめることしか出来なかった。




