白昼夢
私、赤谷咲は特に生まれつき可愛くなかった。
スタイルも良くない。
そんな私に人生に転機が訪れたんだ。
「んっ….....」
目が覚めたら、白い空間にいた。
少し目が霞む。
「赤谷咲、お主が願うことをなんでも叶えてやる。タダでというわけではないがな。」
突然そんな声が降ってきた。
目を向けると、背が高く肌が白く、スタイルが良くて、羽もあり優雅に白いドレスを身に纏った女の人がいた。
まるで天使のような、女の私でも見惚れてしまいそうなくらい綺麗な女性が立っていた。
「きれい..って誰ですか!?っていうかここ、どこ??」
思わず本音を呟いてしまったが、咲は正気に戻り質問をする。
あたりを不思議そうに見渡す咲に彼女は言う。
「お主、叶えたいことがあるのだろう。その願いを叶えてやるって言ってるんだ。せっかくの機会を逃すでない。」
「ちょっと待ってください。本当にここ、どこですか。怖いので、早く家に帰してください!」
「全く何回言わせるんだ。お前の願いを叶えてやる。その代わり、一つ仕事をしてほしい。」
この天使みたいな人は、私の質問に答える気はさらさらないらしい。
見た目に反して話し方が硬く、話の内容も通じない。
諦めて私はその人の質問の期待に答えることにした。
「仕事ってなんですか?よければ具体的に教えてくれませんか?」
とりあえず話を流せるように軽い聞き方をする。
そう問うと、天使みたいな人は一息で話し始めた。
「君には異世界平行線の世界で情報収集をしてほしい。君を吸血鬼にして、人外が存在する世界線に送り、そこで君には他の種族の情報を集めてきてほしい。中には闇組織や警察などに紛れ込んでいる者もいる。そいつらの情報収集もだ。もちろん、世界平行線を移動しているだけなので、いつか死もやってくる。そのフォローとして最強の力を与え、出来るだけ安全に任務にむかってもらう。お主が願いを叶えるのであるのであれば、この任務に当たってもらう。願いはお主が願うならば現実に戻っても引き継がれることとする。しばらく違う世界線に送るが、現実に戻す時は、来た時と同じ時刻の現実に返すと約束しよう。」
...仕事を引き受けることは前提なのか、きめ細かく話された。
もはや、やらないと言う選択肢は用意されていないように感じる。
「なんでも叶えてくれるんですか?何個までいいんですか?」
「ああ。何個でもいいぞ。現実世界に戻るまでに言ったことは全て叶えてやる。任務の途中で死んでしまったら、全てなくなるがな。」
どうせ断ったところで元の世界に帰れなさそうだし、せっかくだったらやってやる。
可愛くなって、現実世界で幸せになってやる。
モテるんだっ!!
「その取引、引き受けます。まず、吸血鬼になるんですよね。では、血は普段必要ない吸血鬼の体にしてください。それからスタイルを良くしてください。全体的に痩せ体質にしてふくらはぎ、太もも、ウエストを細くして、..あ、顔も小さくっ!胸も大きくして...。それから_」
そうして、欲張りな私によって、私が頼んだ内容が書かれた契約書が作られた。
契約書の内容
⒈吸血鬼の力を与える。ただし主に血を必要としない体にすること。
⒉スタイルを良くする。誰からみても綺麗にみられる体つきにする。具体的には痩せ型、透明感ある白い肌。豊富な胸。
⒊この任務を遂行し、終えるまで戻ってこないこと。例え殺されたとしても、自己責任。
「君は容姿を重視したいんだね」
若干呆れたような声で天女は問うが、そんなことは今の咲にはどうでも良かった。
私は目を尖らせてこの内容の契約書に印を押した。
「とりあえずこれでいいんだな?現実世界に帰るまでだったら追加もできる。」
天女は私に問う。
「はい!」
これで早く任務を終わらせて現実世界で幸せになってやる。
いろんな人から愛されるんだ。
「では今日からお主はあの世界線では”メノウ“と名乗るように。現実世界の名前は言わないほうがいいぞ。任務が終わった後、現実世界まで追いかけてきて殺される可能性もある。」
「?!」
こ、殺される...!しかも任務が終わってからも狙われる可能性もあるってこと?!
「ちょっと、それは聞いてない!!今後の人生も保証してよ!」
「それは願い事に追加できないな。わしは他にも仕事があるから無理だ。それでは、幸運を願っているぞ。」
あたりが霧で霞む。前が見えなくなる。
「ま、待っ_」
その時、私の視界は暗くなり、意識は突然遠のいた。